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    こはく

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    こはく

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    一歳差shugurのサラリーマンパロ。
    主に👟くんの酒癖をめぐるお話。
    友情出演Luxiemで、🖋️くんだけお名前が出ています。
    楽しんでいただけると幸いです。

    #shugur

    愛しくて甘い、大切な彼「あはは、ふふ、」
    俺の肩できゃっきゃと声を上げているのは、他でもない、愛しい恋人だった。
    ただ、正直この状態の彼のことを俺はあまり好んでいない。
    「おいシュウ、担いでるだけなんだからあんまり暴れると落ちるぞ」
    呆れたような声色で注意を促すが、案の定酔っ払った恋人には何の効果もなさない。
    俺の肩の上で相も変わらず暴れている彼は、今日有給を使って休みを取り、一日友人4人と飲んでいたのだ。
    一週間前から嬉しそうな報告を受けていたのでよく覚えていた。
    彼ら5人は古くからの友人であったが、それぞれ仕事が忙しくてなかなか集まれないのだと以前から寂しそうに言っていたので、極力俺のいない場では禁止していた飲酒も今日ばかりは解禁せざるを得なかった。ただし、迎えに呼ぶことを前提に。
    これだけ聞くと、まるで俺の束縛が酷いように思われるかもしれないが、そもそも発端は彼の酒癖の悪さに起因する。
    俺が彼と初めて出会ったのも、飲み会の席であった。
    端的に言えば、彼は酒に酔うとまるで小さな子どものように、そこら中の人に甘えだすのだ。
    そして時折その矢印は、近くにいる人ひとりに向かうこともあり、初めて出会った日、彼の隣に座っていたのが俺だったのだ。
    彼は別部署の一個上の先輩であった。
    一際優秀なその頭脳と、飛び抜けて秀でた容姿で社内全体で有名であった彼の存在はもちろん認識していた。
    時々社内で見かけたり噂で聞く限りでは、それこそスマートで気が利き、よく頭の回る人、というイメージだったので、その初めて同席した飲みの席での彼にはそういった噂をあまり気に留めていなかった俺ですら同じ人物か疑うほどに驚いた。
    彼はまず、ホワイトな我が社のかなり早めな乾杯が終わるとすごいスピードでジョッキを呷った。
    特に周りの人と話す様子もなく、ただ楽しそうににこにこ笑って、つまみとビールを往復する。
    飲むのが好きなんだろうか、などと、俺は適当な歓談に興じながらも、その彼の姿に内心かなり驚いていた。
    そしてそれは、斜め前の他部署の上司との会話が一段落ついたときだった。
    突然、肩に自分のものではない重みを感じた。
    ばっと首をそちらに向けると、案の定と言おうか、それは彼の小さな頭だった。
    かと思えば、そのまま唸りながらぐりぐりと髪をこすりつけられる。
    以前の恋人にもされたことがないようなそのあざとい仕草に、俺は目を丸くした。
    一席跨いで隣りにいた、この醜態に慣れっこであろう彼の上司が苦笑しながら、「びっくりだろ?我らが営業部のエース、酒飲むとこうなっちゃうんだ」と言ったあたりで俺はもう考えることをやめた。
    それにしたってなんて綺麗な黒髪なんだ、といっそ関係のないことに振り切って思考を巡らせていると。
    「ふぁるがー、おーゔぃど」
    確実にうるさい室内に、決して大きくない音量で放たれたそれは、俺の鼓膜にはっきりと響いた。それも、甘い残り香を持った、ピアノのような音色で。
    突然放り込まれたそれにやや呆然としていると、
    彼の黒に濡れて大きく輝いた瞳がこちらを向いた。
    かちり、と視線が合わさり、
    心音が、異常に高鳴った。
    返事ができないばかりか、なぜ自分の名前を知っているのだろうという考えに辿り着くことすらできず、ただ息を呑んだ。
    そんな俺が見えているのか、いないのか。
    「んへへ」
    彼は純粋な子どもみたいな瞳をして、真っ赤な頬のまま笑った。
    たったそれだけ、それだけで。
    いい年をした大人は恋に落ちたのだ。
    これが、俺と彼の出会いだった。
    その後紆余曲折ありながら交際まで至ったものの、先に惚れたのは俺であり、しかもそれは酒に呑まれた彼であったのだから、つまり俺が彼の酒癖にどうこう言う権利は端から無いのである。
    だが、これもまたひと悶着あってからは、彼は俺との約束を守ってくれるようになった。
    「ファルガーになら、縛られてもいいよ」と、意図しているのかいないのか、色っぽい微笑みを浮かべられて言われて呆気なく白旗を上げたのは言うまでもない。
    4人の友人については俺もよく知っており、なんだかんだ信頼のできる人たちだということはわかっていたので、今日は好きに飲んできていいぞと、今朝朝食を食べながらそう告げた。
    彼はぱぁっと、四季折々の花が咲きそうな顔で笑って出掛けていったのだ。
    仕事から帰って、俺も少しだけ飲もうとカクテルを作り、脳裏には心配が鎮座しながら彼からの連絡を待っていたところ、それが実際に与えられたのは履歴の一番上にある彼の電話番号ではなく、友人のひとりの電話番号からであった。
    「あー、ファルガーくん?聞こえる?」
    そのスピーカーから聞こえたのは、4人の友人の中で唯一同じ会社で働いていて、俺の直属の上司であるアイク先輩の声だった。
    「聞こえます。シュウ先輩、どんな感じですか」
    食い気味に間髪入れずに問い掛けると、電話口からは苦笑が聞こえてきた。
    「一応僕も君の先輩なんだけどな」
    そう言って笑いつつもきちんと答えてくれる。
    アイク先輩は非常に気の回る人で、何より立場に関わらず社内にいるひとりひとりに敬意を払って接することから信頼を寄せられていた。
    俺もまた、彼のことを手放しに尊敬している。
    こんな無礼を働いても笑って受け流してくれる彼の人柄に、同期含め甘えてしまっているところはあるが。
    「シュウ、僕もなかなか付き合い長いけど、今までで一番の出来上がりかも。もう完全に潰れちゃってる」
    今は机に伏せながら寝言みたいにずっとファルガーの名前呼んでるよ、とくすくす笑うアイク先輩に「すぐ迎えに行きます」と伝えてすぐに通話を切った。
    近場だったので徒歩で向かう。酔い醒ましに丁度いい夜風が頬を洗った。
    すっかり暗くなってしまった商店街に明るく賑やかな光が見え、駆け寄って中に入ると店の奥の方によく知った顔が見えた。
    「ファル〜元気か〜?昇進したって聞いたぞ〜おめでとう〜」
    酔っ払った最年長に絡まれるのを、ひらりと躱す。
    「ファルガー、ありがとね」
    連絡をくれた上、礼まで寄越してくれるのはもちろんアイク先輩だった。
    「こちらこそ、連絡助かりました」
    今度こそ真っ直ぐに敬意を払って感謝を伝えつつ、机に伏せてむにゃむにゃと何か呟いている愛しい恋人をアイク先輩に支えてもらいながら背負った。
    「じゃあお疲れ様です」
    最敬礼並の深さで頭を下げると、4人ともが笑顔で手をひらひらと振ってくれた。
    こうして彼が愛されていることを実感すると、勝手に浮き上がるように嬉しくなる。
    高揚感そのまま、会計だけ済ませて店を出る。
    彼より少し高い身長に感謝しながら、そこまで苦を感じることもなく帰路を辿った。
    途中、耳に吐息をかけたりする彼の"お遊び"には大変困ったが。
    なんとか家についてドアを開けると、彼は自分から背中を降りた。
    かと思えば、肩に担いでほしいと駄々をこね始めた。
    大事な恋人にそんな乱雑な真似はしたくなかったのだが、駄々っ子のように喚く彼に根負けして2階の寝室まで運んでやることにした。
    慎重に階段を踏みしめる俺に対して、彼はずっと楽しそうに騒いでいて、まぁいいかという気にもなってきた。
    やっとの思いで寝室に辿り着き、俺が寝心地に拘って買ったダブルベットのシーツに彼を優しく降ろす。
    するときゃっきゃと騒ぎ立てていた彼が急に大人しくなった。
    どうしたのだろうと顔を見た瞬間、強引に抱き寄せられる。
    「シュウ、おい…」
    「ふーちゃん、」
    ふたりきりのときしか呼んでくれないそのあだ名で呼ばれると、心が擽ったく鳴った。
    「なんだ」
    顔はもう笑ってしまいながら問いかける。
    ベッドの上で、俺はいつだってこの人の言いなりだった。
    甘んじて受け入れるほどにべた惚れなのだから仕方がない 。
    「キスして」
    「仰せのままに」
    その桜色の唇に、啄むようなキスを落とした。
    彼の挑発するような強い眼差しに、背が僅かに震える。
    「ふーちゃん、愛してるよ、」
    先ほどとは違う、純度100%の優しい眼差しで言われ、少し泣きそうになった。
    やっぱりまだ、救いきれない不安がこの人にはバレているのだろうか。
    その慈しむように光った瞳に気持ちが溢れてキスをすると、彼からも3回のそれが返ってきた。
    「大丈夫だよ。僕はここにいる」
    微笑んだその顔が、再度抱きしめられた優しい腕が、愛しくてどうしようもなくて。
    「シャワーだけ、浴びてくるよ」
    「いいのに」
    唇を尖らせて不服そうな顔で両手をこちらに伸ばしながらも、決して無理に引き留めようとはしない。
    彼のこういうところも、堪らなく好きだ。
    その両手にもう一度だけハグをしてから、ファルガーは逸る気持ちを抑えてバスルームへ向かった。
    海のように深い闇が世界を覆って。
    彼が笑う、それだけで。
    残酷なほどにときめく夜が、すぐそこに。





    「げ、ファルガー全部払ってるんだけど」
    「ふむ、やはりいい男だな」
    「シュウを連れ回した挙げ句、お迎えに来てもらった身で申し訳ないな…明日改めて僕からお礼を言っておくよ」
    「結局こうなるなら、今度はファルガーも誘ったらどう?」
    「確かに、それいいかも」
    「名案だな」
    こうして次の飲み会の日程が驚くほどスムーズに決まるのは、また別のお話。
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