「……アーニャちゃん、ここしばらくずっとあんな感じよね。どうしちゃったのかしら?」
「……」
図書室の2階、中庭がよく見える窓から外に視線を落としているベッキーの言葉に、ダミアンは同じように外を見下ろしながら無言で返した。
2人の視線の先には、話題の主であるアーニャがベンチに1人座っていた。
10年生に進級して間もなく迎えた秋は、東国と西国が和平条約を締結して初めての秋でもある。済みきったこの青空の元で食べるランチもなかなか良さそうであるが、
「最近はランチを1人で食べたいとか言い出して、一緒に食べない事も増えたし」
以前から、ごくたまにだが「今日は1人で食べるね」と食堂で食べるのを避けていた節があった。しかし、ここひと月くらい前から、週に3回は1人で食べるようになったのを、ベッキーから聞かずともダミアンも気付いていた。
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