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    雨野(あまの)

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    雨野(あまの)

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    再び付き合ってないひふ幻のキスにまつわる話です。(前回のとは違う世界線です)独帝要素があり独歩、帝統が出てくるので苦手な方は自衛してください。

    #ひふ幻
    hifugen

    kissing you ふと目が覚めると三つの寝息が聞こえる。がーがーとうるさい寝息とたまにうなされるかのように出される寝息はテーブルの向こう側から。すぅすぅという安らかな寝息は俺のすぐ隣から。むくりと上体を起こしテーブルを見やるとそこは盛大に散らかっていた。寿司桶、酒の瓶、皿、箸、ティッシュ、コップ、湯呑みエトセトラ……。普段ならきちんと片付けをしてから眠りにつくのだが、昨日は祝いごとということもあり、羽目を外してそのまま眠ってしまったのを思い出す。

     俺の親友、観音坂独歩に恋人が出来たと報告されたときは本当に驚いた。何せ仕事、仕事で誰かと恋愛しているなんて一切感じさせなかったからだ。いや、もしかすると一二三の仕事中である夜中に相手と想いを通わせていたのかもしれない。
     そして、相手について尋ねたときにそれが男であることも、シブヤのギャンブラーであることも一二三を驚愕させることとなった。ラップバトルであれほど罵り合っていた二人がまさか恋人同士になるなんて。しかし、何はともはれおめでたいことだと一二三は自分のことのように喜んだ。

    「あ、じゃあさ!じゃあさ!お祝いにご馳走作ってやるよ〜!ギャンブラーくんも呼んでさ、飲み会しようぜ〜!」
    「あーそれなんだが……」
     急に歯切れが悪くなった独歩に首を傾げる。何か都合が良くないことでもあるのだろうか。スケジュールが合わせにくいとか?それとも二人が同居するこの部屋に入るのはギャンブラーが嫌がるとかいう話だろうか。暫し目を泳がせた独歩は一度だけため息を吐き出して口を開いた。
    「それが夢野先生もお祝いしてくれるみたいで……」
    「夢野……ああ、シブヤの時代錯誤くんね!」
    「こら、そんな言い方するとまたブチ切れられるぞ!」
     以前にFling Posseのメンバーである夢野幻太郎の服装を一二三が時代錯誤と指摘し、彼から激昂されてしまったという経緯がある。独歩もそのことについて言ってるのだろう。
    「あーれはマジ、ビビったね〜!あんな怒るとは思わないっしょ!」
    「いや、あれはお前が悪いだろ」
    「べっつに〜!悪気があって言ったわけじゃないし〜!んでんで、時代錯誤くんもお祝いしてくれるって?」
    「あ、ああ……それなんだが俺の携帯に直接、夢野先生から連絡がきてだな」
    「は?直接?」
     独歩が肯定の意味でゆっくりと首を縦に振る。
    「『うちの末っ子がお世話になっているようで〜。観音坂殿がよろしければぜひ拙宅でおもてなししたいと思っているんでありんす〜』って言われてな……」
    「げぇ〜!独歩ちん、それ品定めされるってことじゃね?」
    「やっぱそう思うよな……。夢野先生はお祝いだって言い張るんだけどな」
    「ひぇ〜!何なのあいつ。姑なん?」
    「それだけ帝統くんが大事にされてるってことなんだろうな……」
     はぁ〜と長いため息を吐いた独歩を見て口には出せなかったが、夢野幻太郎がギャンブラーを好きだって可能性もあるのではないかと考えた。つまり横恋慕して独歩を呼びつけた、と。風の噂で、ギャンブラーは定住する地がないため夢野幻太郎宅に入り浸っていると聞いたことがある。二人の間柄も友人同士と呼ぶには軽薄だろう。
     独歩も厄介な奴を恋敵にしてしまったな、と呑気に考えた。こうなることは目に見えていたはずなのに歯止めが効かないのは愛という渦に飲み込まれているせいか。自分はもう長いこと恋だの愛だのという感情に触れてないため、それほどに大きな愛を見出した独歩が少しだけ羨ましく感じた。
    「どうせこんなことになったのも俺のせい俺のせい……」とぶつぶつ呟く親友の姿を見てとある考えが頭をよぎる。
    「あんさ〜独歩ちん。そのお祝い、俺っちも一緒に行こうか〜?」
    「は、はあ?何でお前が?」
    「あっちが独歩ちんを品定めするって言うならこっちだってその権利あるっしょ?親友としてさ〜。顔合わせ?的な?」
    「か、顔合わせって。俺はお前の息子になった覚えはないぞ!」
    「みゃーみゃー!あっちがお祝いって称してんだったら人数は多い方が良いっしょ?」
     それにせっかくのおめでたい場なのに夢野幻太郎に臆してしまう独歩の様子が目に浮かぶ。それならば夢野幻太郎のストッパーとして一二三が参加した方が独歩もリラックスできるはずだ。独歩は暫し、ううん……と悩んでいたが総合的な損得を考えたのだろう「じゃあお前にも協力してもらおうかな……」と小さく答えた。

     という訳で奇跡的に四人のスケジュールもすり合わせることができて、夢野邸で宴を行なうこととなったのである。俺も参加することに対して、夢野幻太郎は予想外にも快諾したようだ。彼に連絡を取った独歩も「夢野先生、『お祝いは人数が多い方が良いですからね』ってあっさり言ってくれた……」と拍子抜けといった表情を浮かべていた。
     まあ、それもそうだろう。彼が〝お祝い〟と言っている以上、人数が増えることに対して断る理由も見つからないだろうから。

     というわけで手土産として数種類の手作り総菜とコンビニで購入した酒を持って独歩とともに夢野邸の戸を叩いたのである。

    「おや、まあこんなにたくさん。気を遣わせてしまい申し訳ありません」
     朗らかに告げた夢野幻太郎の隣には有栖川帝統。帝統は先に到着していたらしく二人揃って一二三と独歩を出迎えてくれた。これじゃあ本当に顔合わせみたいだな、と小さく笑った。
    「ひゃい!本日はお日柄もよくっっ!」
    「おいおい、いつも通りしろよ!何だよお日柄も良くってよぉ〜」
    「帝統の言う通りですよ。観音坂さん、肩の力を抜いてくださいな。ささ、狭いですが、どうぞお上がりください」
    「ふ、ふぁい!」
    「だから力抜けって〜!」
     賑やかしく恋人たちが家の中へ入っていく様子を見つめた。ああ、本当に二人は付き合っているんだな。微笑ましい、眩しい。二人が揃っているのを見たのは初めてだが、何一つ違和感なく受け入れることが出来た。パズルのピースとピースが上手くハマるような。まさにぴったり、と。
    「寂しいですか?」
     不意に問われた言葉に現実に引き戻された。夢野幻太郎は一二三が上がるのを待ってくれていたのか、こちらをじっと見つめていた。翡翠の瞳の奥に更に深い緑が孕んでいるように感じて、彼の洞察力の高さを表しているようだった。
    「寂しいってどうして?」
    「……貴方と観音坂さんは親友でしょう。帝統から取られたような心地がして寂しいのではないかな、と思いまして」
    「あはっ。何?心配してくれてんの?……そうだねぇ、寂しくないと言えば嘘になるけど、それよりも嬉しい気持ちの方が大きいのも事実かな!」
    「なるほど。寂しくて泣きそうになったらいつでも胸を貸しますよ」
    「マジ?サンキュー!」
    「なんて嘘ですよ。さ、上がりましょう」
     近くの森の木々がざわざわと騒ぎ立てる。
     強い風に煽られるようにして夢野邸へと足を踏み入れると、そこは知らない家のはずなのにどこか懐かしい匂いが漂っていて、不覚にも少し泣いてしまいそうな自分がいた。

     客間のテーブルの上にはご馳走と酒が所狭しと並べられた。初めは「何人分の飯だよ!」と笑っていた四人だったが、いざ酒盛りが始まるとみるみるうちに皿の上は空っぽになった。よく笑いよく喋った。陰気臭い顔をしていた独歩でさえも酒が入ったためか、はたまた恋人と一緒にいるためか、陽気に鼻歌まで歌っていた。
     何より夢野幻太郎もこの宴を満喫しており、〝独歩のことを品定めするつもりでは〟というのは杞憂だったようだ。一二三の作った総菜の美味しさに目を丸くしたり、帝統の話に笑い転げたり、かと思えば独歩の愚痴に対して真剣に向かい合ったり、夢野幻太郎は様々な表情を見せてくれた。今まで俺に向けられる表情といえば殺意のこもった表情か見下したような表情のみだったから、こんなにくるくると表情が変わる人物なのかと驚く。それと同時に彼の新たな一面を知ることが出来て、少しだけ親近感がわいた。
     飲み会は陽気に、和やかに終わった。

     三人の寝顔を眺めながら少しでも片付けておくかとも考えたが、物音で起こしてしまうと申し訳が立たないため、朝でも良いか、と時計を見つめる。時刻は午前二時。真夜中だ。日本家屋のためか自宅よりも肌寒い気がして、ぶるりと身震いをする。三人に何か掛け物を、と辺りを見回す。独歩は……本人のジャケットで良いか。ギャンブラーくんもモッズコートで。夢野幻太郎は……。
     夢野幻太郎の上着類は見当たらなかった。それどころかケット類もこの部屋にはない。寝室に行けばあるのだろうが、本人の許可なくそこに入るのは憚られる。
     少しだけ思案した後、仕方ない、と自身の戦闘服でもあるジャケットを夢野幻太郎の体へと掛ける。
     これでよし。二度寝するか、とも思ったが、妙に目が冴えてしまったので眠気が襲ってくるまでスマートフォンをぽちぽちと扱うことにした。子猫ちゃんたちへの返信は時間帯も考え、朝にすることにしよう。SNSを何となしに眺めるとブクロは兄弟でパーティーをしているらしい、微笑ましい様子に頬を緩めていると、夢野幻太郎が小さく唸って目を開けた。まだぼんやりとしか覚醒していないのか何度か眠たげな瞼を上下させ、辺りをキョロキョロと見回している。
    「ごめん。起こしちゃった?」と小声で問いかけると、一二三の方に焦点を合わせ、ふるふると首を横に振った。
    「……大丈夫です。それより今、何時ですか?」幻太郎の方も一二三に倣ってか、小声で尋ねてくる。
    「夜中の二時。まだ寝てても大丈夫だよ」
    「ええ、そうします。……あっ、これ」
     彼はそう言うと体に掛けてあるジャケットに目をやった。
    「あー、風邪引いちゃいけないから俺っちの」
    「すみません。ありがとうございます」
     幻太郎も目が冴えたのか、まだ目を閉じるつもりはないようなのでスマートフォンをスリープさせる。彼と向かい合わせになるように寝転がれば、この男のことが知りたくなり口を開く。
    「夕方にここに来たときさ、俺っちに『寂しくないのか?』って聞いてきたじゃん?そっちこそどうなん?ギャンブラーくん取られた感じで寂しくない?」
     彼は目をパチクリさせると「小生が、ですか?」と聞いてきた。
    「小生くん以外に誰がいんのよ」と笑えば「それもそうですね」と笑い返してくる。お酒も入っているからか、柔和な返事に心が躍る。
    「寂しい、のでしょうか。よく分かりません。末っ子が旅立ってせいせいするような……でもふとしたときに、ああ、今週は泊まりに来なかったな、なんて思っちゃうんですよね」
    「それを寂しいって言うんじゃね?」
    「そうなんですかねぇ」
     幻太郎は仰向けになると、思案するように天井をじっと見つめた。誰かが消したのか、居間の電気は消えており、この部屋の明かりといえば台所を照らしている電球の明かりのみだった。薄暗い中で見つめる彼の横顔はまるで人形のように美しい。絹のような髪も、ガラス玉のような瞳も、陶器のような肌も、花びらのように小さな唇も、全てぞっとするほどに美しい。

    「あんさ、一つ聞きたいんだけど、夢野センセはギャンブラーくんのこと好きだったん?」
    「あはは。それはないですねぇ」
    「あ、やっぱり?じゃあ今日のこれもただ純粋に二人を祝いたかっただけ?」
    「そうですよ。何ですか?小生が二人の邪魔をしようとしているのかと思いましたか?」
    「うん。まあ、ぶっちゃけるとね〜」
    「おや、本当に正直な御仁ですね」
    「最初はね。でも今日一緒に飲んでみて印象が変わったっていうか、本当に二人を祝いたいんだなってのは伝わったよん」
    「それは重畳」
     再び幻太郎が横にごろりと寝返りを打てば、目と目が合う。彼はにこりと笑って「こっちに来ませんか?」と問うてきた。
    「はっ、えっ。何で?」
    「何でって寒いでしょう。ほら、早く」
     目線でも早く、と促され渋々、彼が広げてくれたジャケットの中へと入る。
    「ふふ。狭いですね」
    「当たり前じゃん?一つのジャケットに成人男性二人だぜ〜?入んないって〜」
    「それもそうですね」
     二人でくすくすと笑えば吐息でさえ肌で感じる距離を改めて実感し、心臓が跳ねる。店に来る子猫ちゃんや独歩とも近い距離で接することはあるが、それとはちょっと違う。何が違うとは説明出来ないが、悪い気分でないことはたしかだ。
    「夢野センセって、恋人とかいんの?」
    「何ですか、急に」
    「ん〜。一応、確認として」
    「いませんよ。……そういう貴方はどうなんですか?一応、確認として」
     俺の口調を真似た彼が悪戯っぽく微笑む。
    「いないよ」
     ふたりの間に沈黙が流れる。がーがーとうるさい寝息とたまにうなされるかのように出される寝息はテーブルの向こう側から。向かいにいる彼は俺を見つめたまま、音もなく呼吸を繰り返す。彼の頬に手を伸ばすとシャツが擦れて音が立つ。それは何てことのない音のはずなのに、これから起きることを予感すると、何とも淫らな音に感じてしまうのは気のせいだろうか。指を滑らせ細い顎を掴むと、彼が瞼をゆるりと閉じて、それを合図にそっと唇と唇を重ね合わせた。
    「……お酒臭いですね」
    「それはお互い様っしょ〜!」
     互いの言葉で笑い合えば、それを抑え込むようにして再び口付けを交わす。触れては離れて、時には啄むように、時には貪るように、優しく、激しく、水音混じりの吐息を重ね合わせた。

     不意に「やっぱり働きまぁ〜す!」という叫び声が部屋に響き、ふたり揃って肩を跳ねさせる。恐る恐るテーブルの向こう側を確かめると声の主はすやすやと眠っており、どうやら寝言だったようだと安堵する。
    「寝言みたい」と囁くと「豪快でしたね」と感想が述べられる。的確な表現にくすくすと笑い合いそして再び口付けを交わした。それはどちらかが眠るまで続いた。あるいは、ふたり同時に眠ったのかもしれない。心地良い波に揺蕩うというのは、記憶さえも曖昧にさせるのだと、初めて知った。

     窓から差す光が顔を照らし目が覚める。二人分の寝息は夜中と変わらず轟いていた。隣にいたはずの幻太郎の姿はなく、ジャケットのみが一二三の肩に残されていた。片付けでもしているのだろうか、微かな物音が台所から聞こえる。一二三もテーブルにある食器類をまとめて台所へと向かった。
     夢野幻太郎は何かの鼻歌交じりに食器を洗っていた。唇での触れ合いを思い出し、高鳴る胸を押さえながら「おはよ」と声をかけた。弾かれるように振り返った彼は一瞬だけ目を丸くしたものの、すぐに涼しい顔をして「おはようございます」と返した。ドキドキしながらシンクに食器を持って行く。あれ、何だろ。何でこんなに緊張するんだろう。
    「夢野センセ、早いね。眠れた?」
    「ええ。大丈夫です、ぐっすり眠れましたよ」
     カチャカチャと食器が重なる音。ジャージャーと激しく奏でられる水音。それ以上会話が続くことはなく、居心地の悪さゆえ「俺っちも何かしようか?」と尋ねるが「大丈夫ですよ」と素気なく返される。てか、覚えてないわけ?夜中の出来事は。
    「夢野センセ、夜中のこと覚えてる?」と思ったことを口にすれば、顔を上げた幻太郎と目が合う。覚えている。これは確実に覚えている反応だ。

    「……覚えてないです」
    「嘘だよね。絶対覚えてるっしょ」
    「いえ、小生には何のことなのか分かりません」
     なかったことにしたいのか。たしかに酒の勢いでキスするなんて褒められた行動ではない。でも一緒に酒を飲むことによって彼の新たな一面を知り、惹かれていたのも事実だ。だからなかったことにするなんて……俺はもうこんなにも彼が気になって仕方がないのに。
     自身にとっては珍しいが彼の態度にほんのり苛立ちを覚え「キスのことなんだけど」と
    彼の手を握る。水は流しっぱなしで普段なら節水のためにすぐに蛇口を捻るだろう。だが、今はそれよりも彼と向き合いたかった。

     幻太郎がスッと目を細めれば纏う空気が変わったような気がして、ゾクゾクとした寒気が襲ってくる。美しい口が弧を描き、呪文のように言葉が紡がれた。
    「キス?はて、何のことでしょうか。小生はまったく覚えてないんですよ。貴方にはその記憶かあるんですね」
     彼の言葉にこくりと頷くと、細い指が唇に触れてくる。彼の指が冷たいのか、自身の唇が熱いのか、触れた部分が曖昧に、そして溶けるようにひとつになる。
    「では、思い出させてくださいよ。貴方のこの麗しの唇で」
     そう告げて朗らかに笑う彼は夜中に見た彼の姿だった。思わず、あはっと声を漏らして笑う。何だ、良かった。やっぱ覚えてんじゃん。

    「仕方ないなぁ〜!ちゃんと思い出してよ?」
    「さあ、それは貴方次第かもしれませんね」
     夜中のときと同様、彼の瞼がゆるりと閉じられると、唇を触れ合わせた。体温が融解する。触れては離れて、時には啄むように、時には貪るように、優しく、激しく、水音混じりの吐息を重ね合わせる。秘められたこの行為は眠っている二人が起きてくるまで続いた。


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    雨野(あまの)

    DONEひふ幻ドロライお題「逃避行」
    幻太郎と幻太郎に片思い中の一二三がとりとめのない話をする物語。甘くないです。暗めですがハッピーエンドだと思います。
    一二三が情けないので解釈違いが許せない方は自衛お願いします。
    また、実在する建物を参照にさせていただいていますが、細かい部分は異なるかと思います。あくまで創作内でのことであるとご了承いただければ幸いです。
    いつもリアクションありがとうございます!
    歌いながら回遊しよう「逃避行しませんか?」
     寝転がり雑誌を読む一二三にそう話しかけてきた人物はこの家の主である夢野幻太郎。いつの間にか書斎から出てきたらしい。音もなく現れる姿はさすがMCネームが〝Phantom〟なだけあるな、と妙なところで感心した。
     たっぷりと時間をかけた後で一二三は「……夢野センセ、締め切りは〜?」と問いかけた。小説家である彼のスケジュールなんて把握済みではあるが〝あえて〟質問してみる。
    「そうですねぇ、締め切りの変更の連絡もないのでこのままいけば明日の今頃、という感じですかね」
     飄々と述べられた言葉にため息ひとつ。ちらりと時計を見る。午後9時。明日の今頃、ということは夢野幻太郎に残された時間は24時間というわけだ。
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