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    東間の保管庫

    雑多に書いたものを置いています。

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    東間の保管庫

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    オンリーで配布した小話です。210で春っぽいものが書きたかったので、春っぽくしたつもりです。

    #ティーダ
    teader
    #フリオニール
    frioinyl
    #ディシディア
    dissidia.

    Giving upオープンテラスのあるカフェの横にある桜が満開になった。今年は少し寒くて、咲くのが遅かった桜だが、昨日からの暖かい陽気で一気に咲いた。そのテラス席で桜が一番近くに見える場所に開店早々から座っているティーダは、暖かい紅茶を飲みながらニコニコしている。
    桜は綺麗だし、いい天気だし、紅茶は美味しいし。
    嬉しい事ばかりで、つい頬が緩んでしまう。
    休みの日に、外で待ち合わせをして一緒に映画を見に行こうと誘われた時は本当に嬉しくて飛びついてしまった。顔を真っ赤にして目を丸くしていたのも可愛くて、ぐっとしがみついたら怒られてしまったが。
    待ち合わせた時間は昼前だったけれど、家にいても落ち着かないので集合場所近くのカフェでお茶でもしようと思って早めに家を出た。何かしていないとソワソワして仕方がない。これが初めてというわけではないけれど、好きな人と会う約束をしていると言う事だけで、気持ちまで春めいてしまう。ジェクトには物凄く渋い顔をされたけれど、そんな事はどうでもいい。
    「ちょっと早く来すぎたかな…」
    紅茶を飲んでいるうちに小腹がすいてきてしまって、ティーダはテーブルの上にあったメニュー表に手を伸ばした。軽くご飯を食べてから遊ぼうと約束していたので、ここで何かを食べてしまったら昼食があまり入らないかもしれない。
    「あ、おいしそう…」
    春の新作、と書かれたタルトに目が行ってしまった。そんなに大きくないし、タルトだからフルーツばかりだからそんなにお腹にも溜まらないだろうし、と思いながら写真のついたメニューに見入る。
    「ちょっと、見るだけっス」
    席を立って、店内のケースに並んでいるケーキを見に行く。ちょっと見るだけ、と言いつつ戻ってきたティーダはタルトが2つ乗った皿を持ってきていた。
    「自分の優柔不断さには涙が出るかも…」
    嘆いたふりをしながら、席に座ると嬉しそうに細いフォークを持つ。空腹と甘い物の誘惑には勝てなかったようだ。
    「おー、美味そう」
    グレープフルーツのタルトと、枇杷のゼリーを満足そうに見て、綺麗に飾られているタルトにフォークをさした。ぽろぽろするタルト生地に気をつけながら一口食べると、勝手に頬が緩む。ホワイトチョコのムースと酸っぱいグレープフルーツが美味しくて、幸せな気分になった。パクパクと食べてしまい、紅茶をすする。
    「美味い!」
    今度は枇杷のゼリーを、と手に持った所でカフェの下から呼ばれたような気がして、ひょいっと顔を出す。待ち合わせした相手が手を振っていて、ティーダも思わず手を振り返す。
    「そこにいたのか」
    「うん。そっちに行くからちょっと待ってて」
    「ああ、俺がそこに行くから」
    「うん」
    へにゃっと笑ってすとんと席に座り、テラスへ続くドアを見た。すぐにドアが開いて、ティーダは手を振る。
    「こっち!」
    「待ったか?」
    「俺が早く来たっス」
    「…そうみたいだな」
    ティーダの前に置かれたタルト生地のカスだけの皿と、今から食べますと主張しているゼリーに苦笑された。
    「う…っ!」
    「ここ、ランチもあるんだろう?俺も食べようかな」
    くすくす笑われて、顔を赤くしながらティーダは俯いた。子供のようだと笑われてしまったような気がして、恥ずかしくなる。
    メニューを見ながら、そんなティーダを見て「ほら、ティーダも昼飯食べるんだろう?」と一緒に見られるようにメニューを広げられて、ティーダは笑う。
    「うん。あ、俺、このプレートにしようかな」
    野菜多めのベーグルプレートを選んだティーダの頭をクシャリと撫でて、オーダーに行ってくるよと席を立った。
    店の中に行ってしまった後ろ姿を見ながら、撫でられた頭に手をやってテーブルに突っ伏した。呆れられたかもしれない、と思うと悲しいのと恥ずかしいのと一緒になって、気持ちが沈んでしまう。
    「ティーダ?」
    「うー…」
    「どうした?」
    「ちょっと、反省中っス…」
    「そうか。なら、このゼリーは俺が貰うぞ」
    「ええっ!」
    がばっと顔をあげたティーダを見る、いたずらに成功したような顔が近くにあって顔が一気に熱くなった。
    「一口、くれないか?」
    「…一口ならいいっスよ」
    スプーンを渡そうとすると、あーん、と口が開く
    「?」
    「だから、一口」
    「マジで?」
    「ああ」
    ますます熱くなる頬をどうしようと思いながら、薄いオレンジ色のゼリーをスプーンですくって、そっと口に運んだ。
    「うん。美味い」
    嬉しそうに笑う顔にほっとして、ティーダもゼリーを口に運ぶ。
    「美味いだろう?」
    「うん、おいし…」
    美味しそうに食べるティーダを見ながら、ぽつりと呟く。
    「間接キスだよな、それって」
    「…へ?」
    「今度はちゃんとキスしたいなぁ」
    「…!」
    今日はやけに余裕がある相手に、ティーダはこれ以上ないほど顔が赤くなった。
    「な、ティーダ」
    ニッコリ笑う相手に目を伏せて両手をあげる。
    「降参っス、フリオニール…」

    春の日の敗戦理由は、相手がフリオニールだから。
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