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    夢魅屋の終雪

    @hiduki_kasuga

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    夢魅屋の終雪です。推しのRがつくものを投稿してます

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    夢魅屋の終雪

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    クリスマスSS
    昨日は、おやすみしました。
    さて、曦澄のクリスマスはどうなる?

    #曦澄

    【曦澄】クリスマスまであと1日【腐向け】「曦臣さんが、俺を……好き?」

    キョトンとしながら、告白をしてきた相手を見た。
    どうして家族の前で?どうして、クリスマス一週間も前に?
    余計なことが頭を巡るけれど、どうして?なんで?という気持ちでいっぱいになってくる。

    「嘘だ!嘘だ!!!曦臣さんが、俺の事好きだなんて嘘だ!!」
    「藍家は、嘘を着くことを禁じられています。それに、私が晩吟に嘘を吐くと思うのかい?」

    先ほどまで服を掴んでいた人に、腕を伸ばして逃げようとする。
    誰に頼ればいい?母に?父に?使用人たちに?友人に?周りを見ながら、自分を助けてくれる人を探す。
    けれど、彼らをどこかで信じきれていない江晩吟は、涙を瞳にためる。

    「姉さん、姉さん、どこ!!」
    「晩吟?」

    ここにはいない姉を探す江晩吟に、その場にいた者たちは唖然とした。
    両親は特に呆然としてしまっており、その場から動けずにいた。
    「混乱してます」と、金珠と銀珠に挟まれていた友人が曦臣に告げる。
    藍曦臣は、混乱している江晩吟の両手を掴んで引き寄せた。抵抗するが、その拘束は外れない。

    「曦臣さんが、俺のこと好きなんて信じない。
    曦臣さんは、好きな人がいるんだろう?」
    「貴方以外に恋をしたことはありません」
    「嘘だ。だって、光瑶のこと阿瑶って呼んでるじゃないか。俺のことはずっと字なのにっ」
    「晩吟、それはあの子は弟のように思っているからです」
    「だったら、懐桑や忘機だってそうだろう。なのに、あいつだけ特別じゃないか。
    俺は、あいつほど可愛げなんてないし。色気もない。愛嬌もない。誰の期待にも応えられない。
    俺なんか、俺なんか!!!」

    誰も愛してくれない!!!と、言い切る前に、涙が溢れ出す。
    江家の跡取りとして、厳しく育てられた。
    父の腕は、義兄のものだった。天才の義兄に、父は愛情を注いだ。
    その義兄に勝てない江晩吟は、母の期待にいつも応えられない。
    いつか期待に応えられない江晩吟は、母に見捨てられる。
    それに、父の期待や興味をひこうとして今まで頑張ってきた。
    けれど、どんなに勉強を頑張っても二人は褒めてはくれなかった。
    愛情を注いでくれたのは、姉と義兄だった。
    だけど、それで満足出来たなら江晩吟の愛情を受け止める器は壊れていなかった。
    友人が側にいても、使用人としての線引きされていて孤独だった。

    それは、幼少期から続いてきたことだったのだ。

    けれど、他人の中で褒めてくれる人がいた。それが藍曦臣だった。
    出来なくても、出来る様になるまで頑張れば褒めてくれた。
    藍曦臣が小学校を卒業してからは、その記憶だけを頼りに頑張ってこれたのだ。

    高校に上がって、知った事がある。
    藍曦臣の周りには、誰かしらいた。そして、彼と1番親しい者がいた。
    それが、金光瑶だ。風俗の息子として、いじめられていたその人を藍曦臣が助けたという。
    自分だけに優しいわけじゃない事は、百も承知だった。
    彼は、姉の婚約者の異母弟だった為に、関わることが多かった。
    金光瑶は小柄で可愛らしい容姿をしていた。それでいて、性格は温厚だったし気が回る。
    気が回り過ぎて、何を考えているかわからないと警戒もしていた。
    それ以上に、藍曦臣が彼を『阿瑶』と呼んで可愛がっている事を知ってから、ずっと嫉妬していた。

    「俺が、先に貴方と知り合ったのに」
    「うん、そうだね」

    溢れる涙を両手を掴まれていた為に拭うこともできず、しゃくり上げながら泣き続ける。
    色んな人たちの前で泣くなんて事を恥出あるはずなのに、江晩吟は涙をこぼし続けた。

    「曦臣さんの事を追いかけて、大学も入ったんだ」
    「そうなの?」

    こくりとうなづきながら、本来晩吟の成績では通っている大学はランクが高かったのだ。
    けれど、藍啓仁に相談をして成績を上げていった。
    推薦枠をとれた時の喜びようを、藍啓仁は知っている。彼の努力を知っている。

    「一緒にくらそうって、言ってくれた時…嬉しかったのに」
    「うん」
    「光瑶との仲の良さを見せつけられてて」
    「うん」
    「諦めようとして彼女作ったのに、貴方が頭をチラついて上手くいかなくて」

    藍家に暮らしてからも合コンに行って告白されたから、応えた。
    けれど、いつも曦臣ならと考えてしまって、結局は振られていた。
    息子に恋人がいたことに両親は驚いていたし、友人は姉貴分二人に「知っていたな」と睨みつけられていた。

    「晩吟!いいえ、阿澄。どうしたら、私が貴方のことを好きだと信じてくれますか?
    貴方は、彼女を三人も作っていましたし、ヘテロだと思っていたんです。
    本当は、クリスマスに告白をして当たって砕けて砂にでも粉塵にでもなって、
    大学を卒業したのちは藍家当主としての仕事に没頭しようと思っていたんだよ」

    そこまで砕けろとは言ってないと、家政夫は大きくため息を吐く。
    藍曦臣は、江晩吟の手を口元まで寄せる。

    「ねぇ、阿澄。私の言葉を聞いて?私の心を信じて?
    貴方のことを、ずっと甘やかしたかった。でも、貴方はそれを必要としないと思っていたんだ。
    阿澄は、強いと勝手に勘違いしていた。こんなに泣くのを我慢していたのにね」

    藍曦臣が、目を細めて微笑む。

    「信じて、いいのか?」
    「もちろん」
    「頼っても?」
    「はい」
    「甘えても?」
    「大歓迎だよ」

    涙が溢れるのが止んで、だんだんと耳が赤くなっていく。
    藍曦臣は江晩吟の手を握ったまま、江夫妻に向き合った。

    「この藍渙、江澄のことを愛しております。子供の頃から、ずっと想い続けておりました。
    この気持ちには嘘偽りないことを誓います。
    ですから、交際をお許しください」


    ▼△▼△▼△▼△▼


    藍曦臣と江晩吟の告白に、江夫妻は倒れた。倒れて三日三晩、江楓眠だ。
    虞紫鳶は、日曜の夕方には復活しており「阿澄が幸せならそれでいいわ」と、突き放すように言った。
    しかし、その眼差しと江晩吟の頭を撫でる手は優しかった。
    月に一度は必ず帰ってきて、成績が落ちれば同居は解消されると約束をした。
    こうして、二人は大学を翌日から一緒に通うことができた。
    休憩時間には必ず一緒にいて、江晩吟の手には暇さえあれば編んでいるマフラーがあった。

    「ちょーん。阿澄〜。江澄〜」

    12月23日の講義が終わると、義兄の魏無羨が江晩吟を捕まえた。

    「最近、やたらと藍湛の兄貴と一緒にいるじゃん?お兄ちゃんが恋しいなら、俺が相手になるぞ〜」
    「鬱陶しい、離せ」

    肩に回された手を跳ね除けて、魏無羨から距離をとる。
    それは、義兄の恋人の嫉妬から逃れるためもあるが、義兄を守るためでもあった。
    江晩吟は、己の胸の前で腕を組んで魏無羨を見据える。

    「藍渙と一緒にいるのは、兄恋しさじゃない」
    「ん?藍…ホワン???」

    恋人になったのだから、名前で呼んでという藍曦臣の願いを江晩吟は口にする。

    「俺と藍渙は恋人同士になったんだよ」
    「は?!聞いてない!!!」
    「今言った」
    「お前、へテロだろ?!」
    「バイセクシャルだ。そもそも、藍渙以外に恋をしたことは…ない、けど…」

    元恋人には悪いことをしたと、眉を寄せて口ごもる。
    昔から江晩吟が、口にしていた理想は高かった。どこにいるんだよ、そんな女と笑って揶揄った記憶は新しい。
    しかし、藍曦臣ならばその理想そのままだったのだ。
    か弱くはないけれど…男だったけれど……。

    「なんで、相談してくれなかったの?!」
    「相談できると思うか?!自覚したのは高校の時だぞ!!」

    高校の時と言われて、魏無羨は押し黙った。
    魏無羨が引き起こした問題と言ってもいい程で、
    姉の婚約が一時期解消されてしまったり、江夫妻は意識不明の重体になった事故に遭ってしまった。
    江晩吟も肋骨を折って内臓の一部を移植手術するほどに、リンチされた事件だ。
    魏無羨自身も、その事が原因で高校を転校した。
    その転校先に、藍忘機が追いかけてきたりと色々あった高校時代。

    「出来ないよなぁ。江澄、高校生だったのに江家の会社必死に立て直しもしてたし支えてたもんなぁ」
    「俺のことじゃなくて、お前のことだ、ばか」
    「ばかっていうなよぉ。魏氏には戻ったけど、今でも阿澄のお兄ちゃんだぞ」

    ふんっと顔を背ける江澄は、顔から力を抜いて下を見た。

    「……お前が、羨ましかった」
    「へ?おじさんの事?あれは、親戚のおっさんが、甥を可愛がるようなもんだろ?
    親だっていうなら、虞夫人の方がそれらしかっただろう。怖いけど」
    「それだけじゃない」
    「なんだよー」
    「うるさい!近づくな!」

    魏無羨と藍忘機は駆け落ち同然の同棲ではあったけれど、最後は両親の許可を得ていた。
    ずっと支えてくれると言っていたくせに!と、1番最後まで駄々をこねたのは江晩吟だった。
    喚いても引き止めても、義兄は他の男と行ってしまった。
    江晩吟にとって、それが最後の一打となってしまったのだ。
    誰からも愛されないと、追い求めてはいけないのだと…。
    一年遅れて大学に入って、再会した時。恨めしく思って顔を背け続けた。
    話が出来始めたのは、江晩吟が藍家に居候を始めてからだったのだ。

    「江澄、クリスマスの予定あるのか?」
    「ある」
    「まじ?」
    「……藍渙と、デート」

    ポツッと呟くようにいうと、弾く前に両肩に手を置かれて力強く掴まれる。

    「いいか、江澄。ゴムは、でかいのにしておけ」
    「は?」


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    PROGRESS長編曦澄17
    兄上、頑丈(いったん終わり)
     江澄は目を剥いた。
     視線の先には牀榻に身を起こす、藍曦臣がいた。彼は背中を強打し、一昼夜寝たきりだったのに。
    「何をしている!」
     江澄は鋭い声を飛ばした。ずかずかと房室に入り、傍の小円卓に水差しを置いた。
    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
    「見ての通りだ。もう左腕も痛みはない」
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    PROGRESS恋綴3-5(旧続々長編曦澄)
    月はまだ出ない夜
     一度、二度、三度と、触れ合うたびに口付けは深くなった。
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     差し込まれた舌に、自分の舌をからませる。
     いつも翻弄されてばかりだが、今日はそれでは足りない。自然に体が動いていた。
     藍曦臣の腕に力がこもる。
     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
     全身で壁に押し付けられて動けない。
    「ら、藍渙」
    「江澄、あなたに触れたい」
     藍曦臣は返事を待たずに江澄の耳に唇をつけた。耳殻の溝にそって舌が這う。
     江澄が身をすくませても、衣を引っ張っても、彼はやめようとはしない。
     そのうちに舌は首筋を下りて、鎖骨に至る。
     江澄は「待ってくれ」の一言が言えずに歯を食いしばった。
     止めれば止まってくれるだろう。しかし、二度目だ。落胆させるに決まっている。しかし、止めなければ胸を開かれる。そうしたら傷が明らかになる。
     選べなかった。どちらにしても悪い結果にしかならない。
     ところが、藍曦臣は喉元に顔をうめたまま、そこで止まった。
    1437

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    PROGRESS恋綴3-2(旧続々長編曦澄)
    転んでもただでは起きない兄上
     その日は各々の牀榻で休んだ。
     締め切った帳子の向こう、衝立のさらに向こう側で藍曦臣は眠っている。
     暗闇の中で江澄は何度も寝返りを打った。
     いつかの夜も、藍曦臣が隣にいてくれればいいのに、と思った。せっかく同じ部屋に泊まっているのに、今晩も同じことを思う。
     けれど彼を拒否した身で、一緒に寝てくれと願うことはできなかった。
     もう、一時は経っただろうか。
     藍曦臣は眠っただろうか。
     江澄はそろりと帳子を引いた。
    「藍渙」
     小声で呼ぶが返事はない。この分なら大丈夫そうだ。
     牀榻を抜け出して、衝立を越え、藍曦臣の休んでいる牀榻の前に立つ。さすがに帳子を開けることはできずに、その場に座り込む。
     行儀は悪いが誰かが見ているわけではない。
     牀榻の支柱に頭を預けて耳をすませば、藍曦臣の気配を感じ取れた。
     明日別れれば、清談会が終わるまで会うことは叶わないだろう。藍宗主は多忙を極めるだろうし、そこまでとはいかずとも江宗主としての自分も、常よりは忙しくなる。
     江澄は己の肩を両手で抱きしめた。
     夏の夜だ。寒いわけではない。
     藍渙、と声を出さずに呼ぶ。抱きしめられた感触を思い出す。 3050