「ふむ……こんなものかな」
天上界の何処、田園にて。神力を適度に注ぎ、育ちきった作物を眺めながら、腰を下ろした。
金色の稲が揺れる様はさながら、高価な反物の様だ。これら全てを収穫したとして、一斗分といったところだろうか。
……此れが、大食らいの犬神に渡すや否や、一瞬で消える量だというのだから恐ろしい。
まあ、この程度の作物を実らせる事如き、どうということはないのだが。
──どうということは無い、か。この身がまだ地上に在った頃は苦戦していたであろうに。
ああ何時の間にか、天上神と相成った事に違和感を抱かなくなっていたらしい。いやはや、愉快なものだ。
そうくだらない事を思い巡らしていたところ、金色一色だった視界に青い物が映り込んできた。其れは時を経る度に此方へと近付いて来、人間大と成った所で留まった。
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