まぁたやってるよ。と凛子はファイルを整理しながらため息を着いた。
凛子の後ろでは、KKと暁人が一日に吸う煙草の本数で揉めている。
よくもまぁ、毎日毎日喧嘩できるもんだな、と思う。ちなみに昨日は、洗濯物の事で揉めていたが、無事に解決したのだろうか。
「だーかーらー!せめて一日1箱までに減らして!税金だって安くないんだから!」
「俺が稼いで払ってるんだからお前には関係ねえだろ!」
「誰が財布握ってると思ってるの!?そもそもお金の管理めんどくさくなって通帳ごと渡してきた癖に!」
「それとこれとは話が違えだろうが!」
…どうやら、お金の管理まで暁人にやらせてるらしい。確かこの間付き合ってなかったって言ってたはずだ。どうしてこうなった。
そういえば、麻里と絵梨佳もこの2人の距離感にうんざりしてると言っていたな。
2人曰く、相手の悪口を言ってるのかと思えば、ただの惚気だったそうだ。
甘すぎて砂吐くかと思った、と言う2人は、
顔を見合わせて大きくため息を吐く。
特に兄妹だから、暁人と過ごす時間が長い麻里は、一緒に買い物に行くたびに、暁人が
「ねぇ、これKK好きそうじゃない?」
「あ、あれKKに似てない?」
「ちょっと待って、あそこに売ってるのKKに買ってくから」
といったような感じで、直ぐにKKに似合いそうな物を探すらしい。
確かに、これにはうんざりするだろうなと、聞きながら思う。ちなみに私と絵梨佳もKKで経験したし、ウザかった。バツイチのいい歳した大人が何やってんだかとも思った。
そもそも、どうして付き合ってないのか知っているかと言うと、KKと暁人の距離感に疑問を持った麻里が、暁人に聞いたらしい。
付き合ってるのかと。すると、暁人はきょとんとした顔をすると、笑ってなんでオレとKKがと、笑ったそうだ。そして、麻里は言った。
「無自覚って怖い」
ほんとにな。と言って笑うしか無かった。
最初はあれやこれやとくっつけようとしてたけど、案外2人とも人の好意に鈍感なのだ。
エドが無理やりくっつけるのも野暮だろうと面倒くさがった為、それ以来くっつけようとするのを止めた。
お互いの距離は自分たちで決めさせる。いい大人なのだから、自分たちでどうにかするだろうと、全員が納得した。
今は2人が幸せならそれでいい。
「まぁ、精々現状を楽しみなよ」
そう、易々とお互いを許せる人は現れないのだから、いつかその大切さに気づけるその時まで、楽しく喧嘩してな。と凛子は整理し終わったファイルを閉じて、とりあえずうるさいと喝を入れに行くのだった。