Goddess「おおかた、偽装だ」
と、ヒュンケルがこともなげに言う。
「もしくは、科学だ。多孔質の瞳を埋め込まれている。雨をため込み、条件が揃えば水滴が漏れ出る」
今回の依頼は、涙を流す女神像の謎だ。
美しく整った街の中心にそびえる、異教の女神。
彼女の涙は凶兆であり、伝統を重んじる人々を恐怖に陥れていた。
「そんなわけだから。この樹脂でこっそり瞳をコーティングしてしまおう。彼女は二度と涙を流さない」
ヒュンケルは眉一つ動かさず、透明な液体を塗りつけている。
「それでいいのか」と、ラーハルト。
「伝承は伝承だ。迷信だとしても、意味はあるのではないか」
ヒュンケルは驚いたように、相棒を見下ろした。
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