七夕 7月になったばかりだというのに、日中の暑さはもはや異常だ。空調の効いた学内から外に出ると、尚更その温度差に嫌気が差す。だからといってずっと大学に居るわけにもいかない。今日はバイトは無いけれど、やるべき事は溜まっている。家に着いてからの段取りを考えながら、傾いて和らいだ日射しの中、家路を辿っていく。
夕方になってようやく、風が涼しく感じられてきた。首元を吹き抜ける微風が、ほんの少しの涼を運んでくれる。買い物客で賑わう商店街を通りかかると、店前に七夕の笹飾りがあるのが目に入った。風鈴の澄んだ音と共に風に葉を揺らして、道行く人々の目を引いている。折り紙で作られた様々な飾りと、いくつもの色とりどりの短冊がぶら下がっていた。そうか、今日は七夕だったな。もう何年もそういった行事とは無縁になっていたから、忘れていた。
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