楽しい結婚式の始まり、かな? これは夢だ。
深呼吸して開く三度目の瞼。
やはり変わらない光景。
首を回して辺りを伺うと、何度も正しい位置に頭を戻される。
「もう少しで終わりますから辛抱してください」
淡々と語りながら手際良くヘアセットを行うスタッフの表情は覗うことが出来ない。
それはそうだ。
この部屋には鏡が無い。しかも入っていきなり別々に引き剥がされたと思ったら上着を脱いで軽くメイクを施された。
着させられたのは白とグレーの色合いのタキシード。
勿論今まで着た経験は無く、何故か自身のサイズに丁度合うように仕立てたられた上着に袖を通すと、ほのかに漂う花の香りが鼻孔をくすぐる。
終わったら次はヘアセット。
ワックスを手のひらで十分に伸ばして前髪を持ち上げられると、てきぱきと手際よくオールバックが完成。
1808