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    @7_kankankan_100

    気の赴くままに書き物。今はエク霊、芹霊。(以前の分はヒプマイどひふです)
    正しい書き方はよく分かっていません。パッションだけです。
    書きかけ多数。

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    @7_kankankan_100

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    2月か3月頃に書いてたやつ。
    付き合いたて高校生どひふの夏休みステップアップ話。
    続きはイメージついてるけど手が止まってるので供養します。

    #どひふ
    servant

    「よっしゃ〜!夏休みだー!」

    終業式を終え、学校の門を一歩越えた一二三は高く突き抜ける夏空に向かって叫んだ。高校二年生、十七歳の夏休みは希望と期待とでぱんぱんに膨らんで弾けてしまいそうだった。独歩と一緒に予定も立てた。四十日じゃ足りないよ、と言う一二三と、四十日で十分だと言う独歩と、意見は相反するもののどちらもな夏休みを楽しみにしている事は間違いない。
    十七歳になった今年はついに音楽フェスにも初参戦する予定で、既に勝ち取ったチケットは無くさないように大切にそれぞれの家の壁に貼られていた。一二三と独歩は一年生の冬に、年末の繁忙期の短期バイトと年賀状の仕分けのバイトを掛け持ちしてこの夏のためにしっかり稼いでいた。チケットを手に入れてもまだ資金はある。それから、プールに海水浴に花火大会に夏祭り、その合間に宿題もやって、それからそれから。
    「独歩、こっち」
    自由の身になってぴょんぴょんと落ち着きなく歩く一二三を、独歩はどこか父親のように見守りながら下校していた。家はもうすぐそこで、勝手知ったる近所の公園の前を通りすぎようとしていたら一二三が木陰にしゃがみ込んで独歩を呼んだ。また蟻の行列でも見つけたんだろうか、十七歳になっても一二三のお子ちゃま具合はまだまだ健在だ。
    公園をぐるりと囲んだツツジの生け垣と、子供たちが登って遊ぶ背の低い木の間にできた陰から金色の髪がチラついる。
    「どうした、何かあるのか」
    独歩はそこに顔を出すと別に何もなかった。灼熱の太陽が降り注ぐ光と木々の葉が作る日陰のコントラストの中に、制服の真っ白なシャツをまとった一二三が座り込んでいるだけだ。と、ほんの瞬きの間考えてすぐに気付く。何もないのではなく、一二三があるのだ。
    気付いた独歩の表情を捉えた一二三は自分目の前をちょんと指差して独歩を誘導する。独歩はまるで花に誘われる蜜蜂のようにしゃがみ込んだ。一二三が目を閉じて、んっと唇を差し出す。
    さっきお子ちゃまだなんて思って悪かった、と心の中で謝りながら独歩は一二三に顔を寄せた。一二三だってもうこういう事も知っている十七歳なのだ。
    この三ヵ月、二人で覚えてきた恋人のやり取り。独歩は一二三の求めるものをあげたくて、自分も欲しくてこれで三十回目になるキスをした。一二三の唇からリップクリームのイチゴの甘酸っぱい匂いがする。さっき木陰に隠れてすぐに塗ったのだろう。夏なのにそんな物持ち歩いて可愛い奴。ラーメンに餃子を食べた後にキスをしたって構わないと独歩は言ったのに、それでも一二三は、なんかこっちのがいいじゃん、とはにかんだ。独歩は一二三がこんないじらしさを持っていたことを初めて知った。
    「夏休みさ、いっぱいちゅうしよーな」
    きらきら、きらきら、夏の太陽よりも眩しい笑顔で一二三は言った。

    独歩と一二三は三ヵ月前からお付き合いというものを始めた。相思相愛だった。
    初めてキスをしたのは二ヵ月前。
    一体どんな夏休みになってしまうのか独歩は想像もつかなくて胸がいっぱいになった。

    【夏休み一週間目】
    今日は独歩の家で宿題をする日だ。二人は遊ぶ日と宿題をする日を分けてメリハリをつける事にしている。そうすると遊ぶ日に心置きなくはしゃぐことができた。宿題がまだ残ってるなぁ……なんて憂鬱な気持ちを思い出していては楽しめないだろ、と勉強の予定を立ててくれたのは独歩だった。
    宿題をするのはみっちり数時間。それだけすれば合計七日ほどで全部終わる計算だ。もちろんダラダラしないで集中してこなすことが条件だけれど。

    「あれー、今日独歩だけ?」
    昼食を済ませてから独歩の家に着くと家の中はシンとしていた。小さい頃から何度となく来ているので一二三の体は自然と独歩の部屋へ向かった。
    「平日だろ。母さんは仕事だし弟は学童に行ってるよ」
    「そっか、平日か!夏休みだから曜日感覚分からなくてならね?」
    「分かる……朝起きて、今日が日曜か何曜日か考えるもんな。……休みが終わったら夏休みボケになりそうで怖い」
    「おいおい、休みは始まったばっかだぜー!今から終わった時のこと考えるなよ」
    一二三が独歩の背中をバシバシ叩くと、勢いよく振り返った独歩は痛いだろ!と文句を言うと思った。キッと睨む目線があって、そんなの怖くないと言わんばかりに一二三が躱す。はずだったのだが、どうしてだか独歩はそんな目はしていなかった。何か言いたげに眉根を寄せているけれどその真意は分からない。一二三は予想と自分の期待を込めてそっと目を伏せるとすぐに唇にちゅっと独歩からのキスがあった。
    「誰もいないからって廊下でするなんて独歩ってば大胆すぎじゃん〜」
    「……したかったんだからいいだろ」
    茶化したつもりだったが、照れながらも独歩は反発することなくぼそっとそう言った。
    あれ、おかしいな、独歩っていつもこんな感じだったっけ?
    学校ではすぐにうるさいとか、くっつくなだとか、いちいち叩くなだとか、一二三の行動に細かく文句を言うのに夏休みに入ってからはなんだか優しい。もちろん独歩はいつだって優しいけど、そういう事ではなくてなんと言ったらいいのだろうか、一二三は最適な言葉を見つけられなかった。

    独歩の部屋には普段は畳んであるが、一二三が来ると出す小さなテーブルがあって、勉強をする時はそれが一二三の席になった。
    二人は顔を合わせて勉強はしない。高校受験の時も一緒に勉強をしたのだが、やはり人の顔が視界に入っていると気が散ってしまう。それが大好きな相手なのだからなおさら声をかけたくなってしまうというものだった。なので、独歩は自分の勉強机へ、一二三はテーブルを指定席にする。
    それから二十分ごとにタイマーをセットして五分ほど進捗確認をし、また机に向かうというサイクルを作った。するとちょうどハマって勉強に取り組めたのでこの形がすっかりお決まりになっていた。二人で勉強をするのは見張り合いができて怠け防止にもなるのでちょうどいい。
    ただ、壁に向かっている独歩とは違って一二三は独歩の後ろ姿を見ることができる。時々、ノートから目を離しては独歩をこっそり盗み見ていた。独歩には髪をくしゃっと握りこむ癖があって、きっと難しい問題に当たっているのだろう。解けた後に手を離しても髪は握ったままの形で、一二三は休憩中にそれを直してやるのが好きだった。

    夕方近くになると今日の分の勉強はおしまい。
    一二三が帰るまでの時間は部屋でのんびり過ごすことにした。
    独歩がキッチンへお菓子取りに部屋を出ると一二三は腕を伸ばしてうーんと背伸びをする。長い時間床に座っていた体が解れていくのが気持ちいい。そのまま仰け反って背中にある独歩のベッドへと倒れ込むとふわりと消臭剤の匂いが舞った。一二三はっとして体を返して布団に顔を埋めると、消臭剤の合間の独歩の匂いを探す。
    まただ。
    少し前まで独歩の匂いしかしなかったのに、最近は消臭剤のフレッシュな匂いが邪魔をする。
    独歩の匂いが好きだったのに。
    ふんふんと嗅ぎ当てて、枕と布団の間にようやく独歩の匂いを見つけた。
    「うわ!お前何してるんだ!」
    戻ってきた独歩は布団に顔を埋める一二三を見て急いで引き離した。そしてそこにも消臭剤を振りかける。
    「だって独歩の匂い安心できて好きなんだもん」
    「それよく聞くけど全然分からん……」
    「分かんなくていいからスプレーかけるのやめてよ」
    「ひ、一二三だってイチゴのリップクリーム塗ってるだろっ」
    「あれはいい匂いがするから」
    「俺だって同じだよ」
    唇をツンと突き出した独歩はぶっきらぼうに持ってきたお菓子を一二三に押し付けて、その話はそれっきりになった。
    確かに、一二三は今までリップなんて保湿できればよかったけれど独歩とキスをする時に甘い香りがしたらいい雰囲気になると思って匂い付きを取るようになってしまった。
    シャンプーだって家族全員で使っていたのに、自分専用の物をうんと悩んで買った。シャボンの匂いからムスクに甘さを足したような大人っぽい香りになったのに独歩は気付いているだろうか。
    今まで気にならなかったことを気にするようになって、その度に独歩のことが好きだなと胸がきゅんとした。
    独歩が消臭剤を使うのもきっとそれと同じなんだろうと思ったらまあ許してやるか、という気になった。

    一二三がお菓子を食べながら漫画読む横で独歩は平静を装っているが、内心焦りまくっていた。一二三が部屋に来る日の前日は匂いが残るのを恐れてやらないように気をつけているのだが、昨夜は我慢できずにしてしまったのだ。オナニーを。
    夏休みに入ってからというもの、開放感からかキスをする回数がグンと増えた。さっきみたいに目が合えばキスをしている気がする。二ヶ月で三十回だったキスが、一週間で二十回だ。正直、体が反応しないわけがない。今まで唇が触れると世界で一番一二三がそばにいることを実感できて、ただただ幸せで胸がほんわりとしていたのに、昨日の夜はキスを思い出しただけで勃起してしまって抜かざるを得なかった。精液は独特の匂いがするので匂いが残っていては一二三に茶化されるかもしれないと思って必死に隠蔽工作をしたのだった。ちょうど汗臭いのも気にしていたので上手く誤魔化すことができてホッとした。
    ゆくゆくはそういうこともするだろうと思っているが、なにせ付き合い始めてまだ三ヶ月だ。そんなに焦らなくても、まずは関係を深めることが大事だ、と独歩はそう思ったところでハッとした。
    ── 俺たち……小一からお互いのこと知ってるよな。
    いやでも、それは友達としてで恋人となるとまた違うだろう。恋人というのは相手が一番大切で、一緒にいると心地良くて、別れ際は名残惜しくなる、そういうものではないだろうか。独歩は知識での恋人の有り方を思い浮かべ、自分たちがこれから踏むべきステップを考えるとまたしても心の中の自分が止めに入ってくる。
    ── 俺、一二三より優先したい奴なんていないな。一二三もほとんど俺といるよな。一二三の顔見るとホッとするし、ほとんど当てはまってないか?いやいや、でも別れ際はサッパリだな。またなって言って明日また顔を合わせるし。うんやっぱりちゃんと段階を踏んで……。

    「ねえねえ、独歩」
    「ん、どうした?」
    呼ばれて一二三の方を向くと、さっきまで静かに漫画を読んでいたはずなのに一二三はいつに間にか漫画を置いて四つん這いで独歩ににじり寄っていた。その距離はほとんど無く、振り向いた独歩は一二三の顔が間近にあってたじろいだ。
    「ま、漫画読んでたんじゃなかったのか?」
    そう聞くと一二三はふるふると首を横に振る。そして唇をきゅっと結んだかと思うともじもじして独歩の腕に手を掛けた。
    「読んでない……ずっと独歩のこと見てた。独歩だって漫画なんて読んでなかっただろ?なんか考え事してるなーって思ったらうんうん唸り出してさ。もしかしてって思ったんだよ」
    話しながら、一二三の手は独歩の腕を伝って上ってきて頰に辿りつく。ふざけて頬っぺたを引っ張ったりの接触はあるが、こんなにそっと触れる手付きなんて知らない独歩は驚いた。
    一二三とは小さい頃から遊んでいるから、お互い気恥ずかしさもあって猥談をしたことがない。昔はたびたび一緒にお風呂に入っていたが、それも修学旅行での大浴場でくらいになって、毛が生えてきたことくらいは知っている。一二三は体毛が薄くて足も手もほとんど生えていないしソコもささやかなものだった。それだけ知っているくらいで、他には一二三がいつ精通したのか、いつオナニーを始めてどんなふうにしているのか、全然知らない。
    だから一二三がこんな色めいた手つきを知っているなんてにわかには信じられないほどだった。一二三は一体何を知っているのだろうか。
    「もしかしてってなんだよ」
    「もしかして独歩もキスしたいって思ってくれてんのかなって」
    「キ、キス?あ、ああ……うん、そう……したいなって思ってた」
    エッチな事態になるかと思っていた独歩は、ちょっと呆気にとられて間の抜けた返事をしてしまったが、一二三はさほど気にしていないようだった。
    独歩は頰に添えられた一二三の手をその上から握って、ちゅっとキスをした。いつもみたいに触れるだけのスキンシップの一環のキスだ。胸がほわほわあったかくなって、離れたら目があって笑い合う、という流れのはずだった。しかし、なぜだかキスがなかなか終わらない。あったかいだけだった独歩の胸にポツッと熱のかけらが落ちた気がした瞬間だった。一二三が空いている方の手も反対の頰に添えて、唇を啄んできたのだ。
    吸われる感触に独歩は一気に背筋がゾクゾクとして、胸の中の熱のかけらが燃え上がった。かぁっと顔が熱くなって心臓がドクドクと脈打っている。
    何度も何度も啄んでくるので、独歩は頭までくらくらし始めて急いで一二三の肩を掴み腕いっぱいに突っ張って引き剥がした。
    「は、はあ、はっ……ひふ…なん……」
    一二三も耳まで顔を赤くさせて、瞳が熱で潤んでいた。
    「びっくりさせてごめんなどっぽ……我慢できなかった。ちゃんと言えばよかったな」
    ふにゃりと笑った一二三は、今まで見たことないくらい可愛くて、昔っからずっと可愛いって思ってたけど、今が一番可愛くって、コイツの可愛さは底なしか!と独歩は心の中で叫んでしまった。
    「我慢……してたのか、お前」
    一二三は首を傾げて、肩に突っ張っている独歩の腕に擦り寄った。冷房の効いた部屋にいるので独歩の腕はさらりとして気持ち良かった。
    「してた。夏休みが始まるちょっと前から、こんなちょんってしたキスじゃなくてもうちょっと、すごいのしてみたいって。俺っち、独歩のこともっと知りたい」
    いつものおどけた口調ではない自分の気持ちをしっかり伝えるような一二三のゆっくりな喋りに、独歩の鼓膜は一音一音で震えて、それはもう十二分に一二三の気持ちを受け止めた。
    「お、俺も!俺も……一二三のこと知りたい。と言うか、一二三って、その……え、エッチなこと考えたりするのか」
    「するに決まってんじゃん。独歩ってさぁ、俺っちのことけっこーガキんちょ扱いするよな。チビの頃からずっと遊んでるからしょーがないの分かるけどさ。んでも俺っちは独歩もきっとエッチなことたくさん考えてんじゃねーかなーって思ってたよ」
    「え!なんで⁉︎」
    「だって、俺っちたち考えること似てる時あるじゃん」
    それはそうだった。人見知りで引っ込み思案な独歩と、人懐っこくて積極的な一二三は正反対の性格をしているのに、時折心の中を読んだのかと思うほど同じことを考えている時がある。

    「まあこれは独歩もそう考えてくれてたらいいなっていう願望でもあるから……合ってる?」
    話しながら一二三はだんだんと顔をずらして、擦り寄っていただけの独歩の腕についに唇が辿り着いた。腕の内側のさらさらした肌に彼が軽くちゅうっと吸い付くと、独歩は何かが弾けたように一二三を搔き抱いた。
    もうこれ以上くっつけないというくらい強く抱きしめて、薄い夏服越しに一二三のあったかさが伝わってきた。
    「合ってる……いっぱいエッチな事考えてた」




    (ここから夏休み2週目3週目と進む予定だった)
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