無二の目覚め負の感情──それは人が誰しも抱いている感情の一つだ。怒り、悲しみ、不安や孤独。例を挙げればキリが無い其れらは、人々が多く集まれば集まるほど、少しずつ生まれ落ちていく。
それ自体は何ら可笑しな事ではなく、仕方のない事だ。
……しかし、一人が抱くソレが僅かなモノであったとしても、積り積もればやがては大きな畝り、所謂『穢れ』へと変貌する。そういった闇深い穢れほど其処に住まう生き物や土地に悪影響を与え、良からぬ存在を招くに至るのだ。
そんな、穢れた場を浄化する為にKKと暁人の両人は今宵も駆り出されていた。
何ら難しい事はない。いつも通り、穢れに招かれた化け物共を祓い退け、後は穢れの中心たる核を浄化すれば終わる……筈だった。枯木の様に枝々を上方へと伸ばす、黒き穢れの大木を探るKKの背後に、音も無くずうるりと湧き出したのはマレビトの中でも厄介な存在──裂紅鬼だった。
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