さよなら、俺の(1)土曜の昼下がり、母の洗い物のカチャカチャと鳴る音と、自分が読んでいる雑誌がめくれる音がする中、突然インターホンが鳴る。
「なにかしら?ちょっと出て」
「わかった」
どうせ宅配か、なにかの勧誘だろうとインターホンに、今出まーすと返事をして、玄関を開けた。するとそこには、いつもの宅配のおっさんや、勧誘のおばさんではなく、一見普通の青年が立っている。でも、俺は目を奪われた。
長いまつ毛に縁取られた瞳は曇りなく、そして優しげにこちらを見据え、綺麗に微笑んでいるが、どこか哀愁が漂っており、そして自分を見た時にその笑みが悲しげに、崩れそうになる。
そんな青年をただただ言葉なく見つめていると、彼が口を開く。
「えっと…ーーさんのお宅で間違いないでしょうか?」
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