オーザムでオーロラ見る話ごうごうと風が鳴る。
細い枝葉の針葉樹を引きちぎりそうな風と雪。
横殴りの雪が断熱のために小さく作られた窓の外を恐ろしい勢いで飛んでいく。
オーザム王国の北の森の奥から、恐ろしく、おぞましく背筋がぞっとするような声がする。
大戦から一年と少し。
魔王軍から受けた傷はまだ癒えたとは言えないが、少なくとも打ち壊され、燃やされた瓦礫の山がそのまま朽ちていくようなことにはなっていない。
パプニカのレオナ姫を旗頭に首脳陣が集まり、散り散りになっていた各国の識者や有力者を探し出し、一歩ずつ確実に戦火の爪痕はぬぐい取るよう国の立て直しが日々行われていた。
「異形の声?」
へき地の探索からパプニカへと帰国したヒュンケルを呼び止めたのは、変わらず三賢者として忙しくしているアポロだった。
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