Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    ちゃちゃ

    @X5tmy

    あんス腐壁打ち
    右🎰、右🐟️
    解釈<性癖

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 5

    ちゃちゃ

    ☆quiet follow

    「一度だけ、この男とキスをしたことがある。」から始まる、冬に本の形にしたいメル燐のプロット

    ##メル燐

    群青色の冬冬のある日、少し長めのオフを使って熱海に旅行へ行ったクレビ御一行。やけに早く目が覚めてしまったHiMERUが隣を見ると、隣の布団にいた筈の天城がいないことに気付く。どうせ自販機に酒でも買いに行っているのだろうとたいして気に留めなかったが、なかなか帰ってこないことがなんとなく気掛かりで、コートを羽織って外に出る。
     まだ薄暗い旅館の廊下を抜け、外に出る。吐く息が白くなる程の気温に、マフラーも巻いてくるのだったと後悔しつつも、澄んだ空気が気持ちがいいからと歩き出す。暗闇の中、淡く光るスマートフォンの明かりを頼りに進めば、旅館の裏手にある展望台で天城が海を見ていた。
     そんなところで何をしているのです?と声をかけるのも憚られる程、普段の天城とはかけはなれた静かな空気に、そういえばこの男は生まれながらの君主だったと思い出す。けれど、お前はアイドルだろうと声をかけることをHiMERUは選ぶ。
     HiMERUに気付いて振り向いた天城はいつも通りで、寒さに少し赤くなった鼻の頭をからかってくる。いくらメルメルでもそれじゃ寒いだろ!って笑いながら、自分の着けてたネックウォーマー渡してきたりして。本当にいつも通りの振る舞いは、先ほどまでの男は偽物なのでは?と勘繰ってしまう程。けれど、潜めた声と抑えたトーンに、この男から滲む育ちを感じて、確かにあれも天城燐音なのだと理解する。
    「こんな時間に起きているなんて、珍しいのです」
    「…まあ、慣れねえ枕じゃ眠れねぇっしょ」
     そんな会話をしながら聞けば、どうやら朝焼けを待っていたようだ。東に海が面したここなら朝焼けが綺麗に見える。静かな語り口調の男は、シュワシュワと砕ける波を眺めている。これ以上話すのも野暮。けれど、旅館に戻る気にもなれず、HiMERUも自販機で買ったココアを飲みながら朝焼けを待つ。
     黎明の中に、段々と射し込む赤。塗り変わっていく空の色に目を細める。水平線の向こうから太陽がもうすぐ顔を出す。眩しさに目を細めれば、隣の天城も同じだった。視線を感じて振り向いた男は、楽しそうに笑う。
     青い瞳に太陽が散って、硝子玉のようにキラキラと輝く。海と同じ色をした瞳に、少しだけ魔が差した。
     それはほんの一瞬、冷えた唇同士が触れただけ。熱も無ければ情緒も無い、ふれあいの一種。まるで時間が止まったように固まってしまった天城は、少しの間だけ泣きそうな顔をしたが、何も言わなかった。
     無言のままの二人を、朝日が照らしていく。海鳴りが耳を突く。騒ぎもしない心臓に、目の前の男にとってファーストキスはそれなりに大切なものだったことを思い出すも後の祭り。流石に謝った方がいいかと構えるも、天城は何事も無かったように「さみいから帰るか」と踵を返すだけ。
     その後の旅程も、拍子抜けしてしまうほど至っていつも通りの接し方をしてくる。この男は無かったことにしようとしている。それは理解できるが、どうしてか面白くはない。そんな感情を抱えつつ過ごす日々の中で、偶然にも二人のオフが重なる日がくる。
    新台打ちに行くか~と宣う男を引き留めて、HiMERUはこの感情の謎を解くために、一泊二日の小旅行を決行するのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator