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    はねた

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    はねた

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    hrakを無料配信でぼちぼち読みました。
    物間くんがすきです。

    #物間寧人
    thingsAreBetterThanPeople
    #hrak
    lava

    ぼくのひみつ 「物間くんのコスチュームってちょっと指揮者っぽいよね」
     寮の談話室で、夜で、一日実践と特訓と座学で疲れきってあとはもう寝るだけででもなんでだかみんな妙にテンションがあがったきりでって感じでA組とB組と十何人かごちゃごちゃ集まった、なかでだれだかわからないだれかがぽそりとそんなことを言った。だれだかわからないっていうのは顔となまえが一致しないとかじゃなくて具体的に人数が多すぎてうるさくてワーワーみんな好き放題しゃべってるなかのだれかってことで。
     ユニフォーム談義なのかとおもったらそんなことはなくて、だれそれの個性がどうのとか、だれそれの髪型がかわいいとかまねしたいとかなんだかそんなことがウワーと、あちこちからめまぐるしく洪水みたいに流れてくるから、だからだれに返事したらいいのかもわからないままハハハと僕はにこやかに笑う。紳士的に。つとめて紳士的に。指揮者ハハハ望むところだよかっこいいよねみんなのことまとめるってつまり翻ればみんながいないとだめってことなんだよね僕の個性も指揮者もひとりでは何もできないって意味ではおんなじっていうかいやコスチューム選びなんて自分でオッケー出してやってることではありますけどねとかなんてヒーローらしからぬかつ青少年の鬱屈そのものなことは口にはしないでとりあえず、ハハハと笑い続けてたらすれちがいざまにうるせえよと爆豪にののしられてオチが、ついたのでまあいろいろおもうところはあるもののそんな感じですまそうとしてたらなんでだか隣にいつのまにかいた緑谷が、だれだかが言った指揮者呼びを僕よりも丁寧に拾ってそうだねと言った。
    「指揮者、合ってるよね。物間くん全体俯瞰するの向いてるし」
     うんそうだそうそう、となんだかぶつぶつひとりでつぶやきながらポケットからノートまでとりだしてメモしながらまじめに語るから、いやそれきみが言うかなとちょっとカチンときてそれで僕は、笑った顔のまま緑谷に、どうだいすごいだろう賛美してもいいよ拍手喝采ブラヴォー!ってねところで知ってる?コンサートとかでブラヴォーっていうひとあれ素人が感極まって言うとかじゃなくてちゃんとプロの組織から派遣されたプロが発するブラヴォーらしいよ、とまくしたててまぎらせようとしたのに煙に巻こうとしたのに緑谷は、やっぱりまじめな顔でうんそうだねと言った。
    「物間くんの個性ってすごいよね。だって自分の個性がしんどいってひとにでも、周囲のだれにも個性を理解してもらえない受け入れてもらえないってひとりぼっちでつらくなってるひとにでも、物間くんならおんなじ個性を体験することができるし、苦しんでるひとに一番近くで寄りそってあげられる。……つらいひとから個性吸いあげるとか奪ってなくすとかそんなんじゃなくてさ。それに物間くんはいろんな個性を知ってるから、自分の個性がしんどいって袋小路に落ちちゃってるひとにもほらこっちにべつの道もあるよってさししめしてあげられるもんね。世界を俯瞰して見られてつまずいてるひとには手をさしのべて、ほんとに指揮者みたいだし、ひとのためになるっていうなら一番のヒーローだよね」
     僕本人がそばにいるのに僕のためとか僕に向けてじゃなくて緑谷は、ただ単純な事実を分析するようにたしかめるように延々と語りながらすごい勢いでノートにあれこれと書き留めていく。まわりでは、あーまたデクくんのメモ魔がはじまったとかほどほどになという笑い声がぱらばらと、それもやがては室内の喧騒にまぎれてしまう。
     ひとりでは何もできないとか、そういえば前にだれかにそんなことを言ったな心操だっけとか、そんなことをぼんやりとおもいだす。
     まあそもそも助ける相手がいなきゃヒーローは成立しないんだからひとりではだれだってヒーローなんてものにはなれないわけだけど、とか、いつもならちょっと反語的にやけくそ気味に負け惜しみ的に考えることを、きょうはちょっと明るめに前向きにとらえられなくもないかもしれないなとかそういうこともついでに、考えてそれから僕はハハハと笑ってまだまじめになにやら考察し続けている緑谷をながめる。
     さわってみてもきみは僕にとってスカだからきみの言うようにもしかしたら望むようには寄り添えないけど寄り添ってあげられないけど、まあそれもそれでありかもねぜんぶわかってもつまんないしねあと僕クレバーだから個性なくてもお見通しなところもあったりするしねどうだいさらに心強いだろうなんてそんなことを考えてる、ことはメモとられて言質とられたらいやだから秘密にしておくことにして。
    「……ハハハ」
     とっても紳士的な笑い声に、僕はぜんぶをまぎらせる。
     ファントムシーフの名に賭けて。
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