プリテンダー シーツのうえに片手を置けば、ベッドがキィと軋みを立てた。
明かりに慣れないらしい、のぞきこんださきの目は細められている。もとより険のある顔つきがそうするといっそうきつくなる。
剃り残しの眉を指で辿れば、眼差しが問うようにこちらを向いた。
夜も遅いというのに窓越しの景色は明るい。人工的につくりあげられた、とりどりの灯りが闇を滲ませる。
頬に手を添えれば、たがいの肌の色の違いがあきらかになる。自分にとってはあたりまえにすぎて何の思い入れもないそれを、髪を、目の色を、冴島はときおり妙に欲しがる。
指をシャツの裾にすべらせた。冴島は黙ってこちらの手つきを受け入れている。
電灯を消して待っていたのはそのためかと、察するほどにはもはやたがいの体に馴染んでいた。
おそらくは彼にとっての大一番が明日に迫っている。神経質な性分が、どこか縋るように見えてしまうのは彼の罪かそれとも自分のせいか、どちらにせよすることは変わらない。
陽のあたる国にいるというのにふしぎとしろいその首筋に口を寄せた。なめらかでうつくしいと、睦言にまぎらせても冴島はそれをけして認めない。
おかしなことだと、もはや何度めになったかもわからないため息をつきつつロミオは指をすすめる。
「たぶん君はなんでもいいんだろうな、あの国につながるものでなければ」
サッカーに没頭してなにもかも顧ず、ひとりになれば電灯を消して、あの国を、あの国につながる自分を憎むとひとめもはばからず言いふらして、そんなまるでこどものようにまっすぐな姿がどうにもひとを惹きつける。
「……まあ、僕のアドバンテージはそれだけだからな」
ひとりごちれば、冴島はなんだというように眉をひそめる。剣呑なようでいてどこか無邪気なそのさまにロミオはゆっくりと口づけた。