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    ru_za18

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    2/14 イベント限定公開作品。

    本丸バグで嗅覚が良くなってしまった加州。
    お出掛けから帰った審神者から、男の匂いがして嫉妬から自分の香りを移したくなったお話。

    ※加州視点

    #清さに
    withGreatFreshness
    #かしゅさに
    forYourInformation

    移り香を纏わせて「完全にバグですね」
    「バグ…ですか」
    「…すごく薬の匂いがするんだけど」
     主に連れられて来たのは、政府のある一室。そこには、薬品棚やファイル、ベッドなどが置かれていて、医務室といったところか。薬品の匂いが直接脳を刺激するようで、思わず鼻を覆った。
     ここに連れてこられたのも、いつからかこの嗅覚がとても良くなってしまったからだ。食べ物や花、なんなら人の判別や居場所まで当てられてしまうほどに。短刀達は、テレビで見た犬のようだと喜んでいたが、当事者の俺としては辛いことこの上ない。今日だって、ここに来るまでに乗った電車の中で嗅いだ香水が、あまり好きな匂いじゃなかったこともあって早く降りたかったし。自分の付けている香水や、主の香りを嗅いでどれだけ落ち着けたか。
    「いつ治るかは…」
    「この症例に関しては、自然治癒を待つしか…。特に薬もありませんので」
    「そう…ですか」
     少し落ち込んだ様子の主の手を取る。だって俺は、嗅覚以外特に変わりないんだし。主、俺は大丈夫だからねという思いも込めて。
     その後、帰り道も至るところで嗅ぐ匂いに、少し疲弊しながら本丸へと戻る。本丸でも、もちろん香水を付けるやつはいるけれど、知ってる香りしかしなくてとても安心した。
    「清光ー!どうだったの?」
    「…自然治癒しかないんだって」
    「ふーん。そっか」
    「何?興味なさそう」
    「興味ないわけじゃないけど、自然治癒なら治るの待つしか無いだろ?」
    「……まぁ、それもそーね」
     駆け寄ってきた安定に、診てもらった結果を伝える。そういうさっぱりとしたところ、こいつらしいというか何というか。そんな中、ふわりと香った匂いに振り返る。
    「主!もう戻る?」
    「あ、うん。政府からの書類が来てるみたいだから、行ってこなきゃ」
    「…そっか。連れて行ってくれて、ありがと」
    「ううん。お大事にね」
     今度こそ、離れていってしまった主と匂いが残念に思えてしまう。自分でも気付かない内に、表情に出ていたのかもしれない。隣にいた安定は、くすくすと笑うばかり。
    「……なんだよ」
    「お前、主のこと目で追いすぎ。それに、そんな置いていかれたような顔してちゃ、主も気遣っちゃうんじゃない?」
    「…わかってる」
     言い返したくもあったけれど、安定に言われたことはどうにもならない事実だ。だとしても、主を目で追ってしまうのは仕方ないだろう。主を見つけて追うこともあれば、無意識も幾らかあるのだから。それに、今は鼻も利く。石鹸と柔軟剤。それから…俺があげた椿油かな。あと、他のやつとは違う主の匂い。それが香る場所を辿れば、そこに主がいるのだから、どうしたって見つけてしまう。
     “恋は盲目”だなんて、主の持ってた雑誌に書いてあったけれど。周りが見えない上に、匂いでまで支配されては敵わない。それに自分自身、それほどまでに主に落ちるだなんて思ってなかったからさ。
    「あー…くそ、好き……」
    「普段可愛くしようとしてるのに、そんなに余裕ないんだ?」
    「うるさいな…!」
     今は、見てるだけでも良い。いつか、ちゃんと口に出して伝えられればそれで。そんな風に思っていたのに、その考えが甘かったことを知る。


    「ただいま」
    「主!おかえ…り……」
     ある日のこと。外から帰ってきた主を出迎えた。俺の嗅覚は未だ治ってなくて、ずっと鼻が利いたまま。今だって、主の匂いがしたから玄関まで迎えに来たのに。言葉に詰まったのは、予想外だったからだ。ねぇ、何で?何で知らない男の匂いが主からするわけ?
    「……主、こっち」
    「え?ちょっと…加州!」
     カッと頭に血が上る様な感覚に身を任せたまま、主の手を引いて向かったのは自室。無言のまま、廊下を歩く音だけが響き、後ろをなんとか付いてきている主を一瞥する。部屋へ到着すれば、先に主を部屋に入れ、後ろ手に障子を閉める。
    「ねぇ、加州。どういうこと?何が…」
    「主、今日誰と出掛けてたの?」
    「誰って、知り合いの審神者さんで…」
    「男。そうだよね?」
    「そうだよ…」
     何でもないように言う主。本当に、匂いが移るほどって何?それほど近くにいただろう男が気に入らないし、そこまで近付くのを許した主にも腹が立つ。一刻も早く、どうにかして主から香ってくる男の匂いを消したくて、俺の上着を上から羽織らせる。だけれど、そんなことで匂いが消えるわけもない。どんどんと消えない匂いに焦れてくる。
    「何で上着なんか…」
    「主、少し黙って」
     上着をぐいと引けば、それを羽織った主も為す術なくこちらへ引き寄せられ、そのまま噛みつくように口付ける。くぐもった声も、深く深く絡ませた舌も、俺だけのものにしたくて。苦しくなったのか、握りこぶしで俺の胸元を叩く。必死に抵抗しているのだろうけれど、その手を片手で抑えられてしまうところも可愛くて仕方ない。重なっていた唇を少し離せば、二人の間を伝う銀の糸にどこか満足して。だけど、目に涙を滲ませながら、ようやく息が出来たらしい主にもっと、もっとと求めては、主を抱き締めてまた口付ける。俺の上着から、俺自身から、主に匂いが移れば良いのに。そんなことを思いながら…。
    「っ……はぁ…なん、で…?かしゅ…」
    「…泣かせてごめんね、主」
     どれくらいの時間そうしていただろうか。抱き締めたまま、少し離れて主を見れば、息も絶え絶えにぽろぽろと瞳から溢れたのは涙。身勝手な行動をしたのはわかっている。でも、主が取られてしまったかもしれない。そう思うと、自分を抑えることが出来なかった。そっと優しく涙を拭えば、じっとこちらを見つめる主。きっと、理由が聞きたいのだろう。
    「…俺、主から他の男の匂いがするの……耐えられなかったんだ」
    「他…?」
    「そ。うちの刀剣男士じゃない男の匂い」
    「そんなに…匂ってた?」
     驚いたとでも言うのか、自らの腕や服をまじまじと見ている。そんなに自覚なかったわけ?
    「そりゃ、もうね。…そんなに男を近寄らせた主が、無防備すぎて腹が立ったくらい」
    「無防備…。それで、そんなに怒ってたの…?」
    「それで…?はぁー⁉怒るに決まってるでしょ⁉何言ってんの⁉俺、あんたのこと好きなのにさ!誰かに取られたと思ってすっごい焦ったし、本人は男の匂いさせてへらへらしてるし!そう思ったら、つい頭に血が上ってあぁいう……ん?主?」
     思わず、捲し立ててた言葉を止めた。何故かって?主が顔を覆って俯いてるから。
    「え?何、どうしたの?」
    「……加州、好きってさ…。私のこと……?」
    「…………あっ」
     真っ赤な顔で言ってくる主に、先程自分が言った言葉を反芻する。そして、言ってしまっていた言葉を思い出して、俺も顔に熱が集まるのを感じた。けど、それは事実で変わりのないことだから。
    「…っそうだよ!主が好きで好きで堪んないから…」
     首筋、手首へと唇を落とせば、触れるたびにぴくりと震える身体が小さくて可愛くて、愛おしい。
    「だから、俺だけの主でいてよ。他のやつの匂いなんか、させんな…」
     手を絡め、もう一度落とした口付けは、主もゆっくりと受け入れてくれて、とても甘美に思えた。そして部屋からは、俺と主の香りだけが満ちていた。


     主が頷いてくれて良かった。
     これで主は俺のもの、でしょ?
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    ru_za18

    DONE桑さに
    青空でのお題提出作品
    あることから本丸を逃げ出そうとした主と見つけた桑名のお話

    捏造設定あり
    暗めのお話
    エゴだとしても 物音一つしない、丑三つ刻。今日は生憎の曇りで、本来ならば見えたであろう満月も今は姿を隠している。
     そんな中を小さい鞄一つを抱えて、出来るだけ足音を立てないように廊下をゆっくりと歩く。部屋から出て少し進んだところに、『風通しのためだ』と開けてもらっていた雨戸が見える。そこに辿り着いては息を潜めて辺りを見渡し、誰もいないことを念入りに確認した。
     ――見つかるわけにはいかない。
     緊張感から息をすることすら忘れて、確認出来たと同時に人が通れる程だった雨戸から庭へと下りた。素足のまま下りたものだから、庭に転がる小石たちが『自分はここだ』と存在を主張してくる。痛みを伴うそれを無視しながら、歩く速度はどんどん早まっていき、前へ前へと足を出す。終にはとうとう走り出して、目指す先は本丸の門だ。春には桜の花弁を浮かべた池の横を通り、近くに向日葵が咲いていた畑を横切り、可愛い色だと埋めたチョコレートコスモスの花壇を越え、冬には雪の帽子を被っていた椿の垣根を抜ければ、辿り着いたのは目的地。しんと静まり返る中に佇むそれは、私の最後の覚悟を問うているように思えた。
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    夕月葵(または凌霄花)

    TRAINING小狐丸は自分の「ぬしさま」以外にはどこか冷たくて、自分の「ぬしさま」にはとてもとても甘くて優しいのです。小狐丸はとても冷たい。
     いや、正確には『こちら』にいる小狐丸ではなく、よその――まだ主を持たなかった小狐丸であるが。
     初めて逢った時こそ表面的には物腰柔らかで紳士的ではあったにせよ、触れるはおろか近付くことすら許さないような、審神者を見るあの冷めた瞳の中にあったのは――……


     あの日見たのは月夜に舞う美しき獣。月の光を受けて輝く白銀がとてもきれいで――、ふわりと長い髪をなびかせ舞い降りた彼は、そこに現れた溯行軍を素早い動きで一掃した。
     その場にいた動けぬ人の娘を助けたのか、それとも単に目の前にいたアレ等が邪魔であったのか――後者かもしれないなと審神者は思いながらも、今ではあの小狐丸が認めた者に対する瞳を見れば、それもまた揺らぐ。
    「いかがされましたか、ぬしさま?」
    「……っ」
     優しい瞳を向けるのは『わたしの小狐丸』であり、そこに愛しさと甘さを宿すのも、この小狐丸だけで。
     あの野生の獣がそれを向けるのは、自身の唯一だけだ。
     そう、宿るものの違いに審神者が気付いたのは、あの小狐丸と度々山で遭遇していたから。主を持たぬ狐と思えば、いつの間にやら気に入りの者を見つけていたのか。 1048