ふーふーちゃんより先に起きて、彼の寝顔を見つめる時間が大好きだ。夜の暗闇の中でだってもちろん彼は綺麗だけれど、カーテンを通して差し込む朝の柔らかい光に照らされる彼は、永遠にここに飾っておきたいくらいに美しいから。起きたらその瞳に俺を映して可愛らしい笑みを見せてくれることも知っているから実際そうはしないけれど。
ん、とわずかに身動ぎをして、彼がそっと目を開く。しかし眩しさにすぐ瞼を閉じ、手探りで俺の顔にてのひらを触れさせた。ふふっと笑い声を溢せばふーふーちゃんもこっそりと口角を上げる。
「おはよう、ふーふーちゃん」
「まだ、もうすこし」
「お寝坊さんだね。夜更かしし過ぎちゃった?」
「もしかしたらな」
目を瞑ったままのふーふーちゃんに顔を寄せ、ちゅっちゅっとキスをたくさん降らせた。おはようのキスは寝惚けた相手にするのが楽しくて好き。昨日の夜のとは比べ物にならない可愛いそれは少しくすぐったいらしく、ふーふーちゃんは笑って身を捩らせた。
「んは、ぅんっ、こら、もう、浮奇、起きるから」
「ええ? もう起きちゃうの?」
「起きるよ。ほら、一緒に朝ごはんを食べよう?」
「んー、……うん、そうだね。でもその前にふーふーちゃんからも」
んっと唇を尖らせればふーふーちゃんは俺を甘やかす優しいキスをしてくれる。嬉しくなってふーふーちゃんを抱きしめ、額をぐりぐりと擦り付けた。朝から大好きが溢れちゃうよ、ふーふーちゃんのせいだからね。
「浮奇、起きないのか?」
「もうちょっと、いちゃいちゃする?」
「……それは良い案だな。でも、ごめん浮奇」
「うん?」
「お腹が空いた」
「……ふ、っあはは! オーケー、じゃあ先に朝ごはん、それから一日中いちゃいちゃしよう」
「すまない……」
「いいよ、やってる時にふーふーちゃんのお腹鳴ったら笑っちゃいそうだもん」
布団を捲って、ふーふーちゃんのお腹に指の腹を這わせた。ふーふーちゃんがくすくす笑うと触れてるところから震えが伝わってくる。仕返しのように彼の手が俺のお腹に伸びてきて、俺はあまり触ってほしくないから避けようとしたのだけれど、肩を抱き寄せられてしまえば抵抗なんてできなかった。
ふーふーちゃんと一緒に眠る時だけは彼の習慣に合わせて何も着ないから、彼の手はすぐに俺の肌に触れる。俺はクーラーで冷えた彼の指先にピクっと身体が震わせた。気持ちいいなんて言ってないのに、ふーふーちゃんは嬉しそうに口角を上げる。
「んっ、ねえ……朝ごはんは……?」
「浮奇が仕掛けてきたんだろう?」
「触っただけだもん……」
「俺も、触っただけだよ」
「……えっち」
「お互い様だな」
ごろんと転がされ、ふーふーちゃんが俺の上に覆い被さる。いくら見たって慣れない色っぽい顔に心臓がキュンと鳴いて脳みそがとろけた。
「朝ごはんよりも先に浮奇が欲しいな」
「ん……俺も……」
「お腹が鳴ったら笑ってくれ」
「そんなの気づかないくらい俺のこと夢中にさせて?」
「……オーケー」
きっと朝ごはんには間に合わないから、二人でのんびりお昼ごはんの頃に起き上ろうよ。そしたらもう一度おはようのキスをしてもいい?