日付が変わる時に一緒にいたいというお願いをふーふーちゃんは二つ返事で受け入れてくれた。お風呂を済ませて夜ごはんを食べて、ふたつのスマホはリビングに置いたまま寝室へ引きこもる。だってせっかく二人でいられるんだもん、みんなからのお祝いの言葉はもちろん嬉しいけど、ふーふーちゃんから一番にたっぷりお祝いしてほしい。
「それで、何をする?」
「ん? もちろんめいっぱいイチャイチャするよね」
「……ま、そうなるよな。おいで浮奇」
「えへへ、やったあ」
俺は腕を広げてくれたふーふーちゃんに思いっきり抱きついて、すりすりと頬を寄せた。ふーふーちゃんはたぶんちょっとだけ呆れて、でも誕生日だからっていう大義があるから頭を撫でたりキスをしたり、いつもはなかなかしてくれない甘やかし方をしてくれて、俺はものすごくドキドキした。
二人きりだともちろん普通にキスしたりするけど、だいたいは俺がねだってふーふーちゃんは仕方ないなって感じでそれをくれる。彼が俺のことをちゃんと大好きだって知っているよ、ただおおっぴらにイチャイチャするのが苦手な人なんだ。分かってるからハグとキスをお願いして断られても拗ねて見せることができるんだけど、こんな真正面から甘やかされるのは、ちょっと、だいぶ、照れるかも。
「うう……ふーふーちゃん……」
「うん? ……ふ、おまえ、もうそんな真っ赤になってるのか?」
「だってふーふーちゃんがこんなに甘やかしてくれるの珍しいでしょ……うれしいぃ」
「あはは、オーケー、今日はサービスデーだ。他にしてほしいことは? 膝枕でもしてやろうか?」
「本当!?」
「……好きなのか?」
「わかんない、やったことないもん。ふーふーちゃんは?」
「ないよ、ないに決まってる。……やってみるか?」
「やる」
即答した俺に笑みを溢し、ふーふーちゃんは太ももをポンと叩いてみせた。すぐにそこに頭を乗せ、ふーふーちゃんのおなかに顔を埋める。ストイックな彼はきちんと体を鍛えているから太もももおなかも柔らかくはないのだけれど、好きな人が特別に自分だけを甘やかしてくれてるんだ、幸せに決まってる。
「感想は?」
「最高……」
「ふ、ふふ、それは良かった。俺よりおまえの膝枕のほうが寝心地は良さそうだけどな」
「俺のほうが太ってるって?」
「あはは、そうは言ってないよ。浮奇のほうが甘やかし上手だろ?」
「俺はふーふーちゃんに甘やかされるのだいすき」
「んー、……甘やかされるのだけ?」
「……なにそれ、かわいい。ふーふーちゃんのことが大好き」
大真面目に言ったらふーふーちゃんは目元を緩めて嬉しそうな顔で俺のことを見つめた。ああ、ここにいるとすぐにキスができないな……。
ふーふーちゃんの首に手を回して体を起こそうとしたら、気がついた彼が背中を丸めて顔を近づけてくれた。ちゅっと唇を重ねてすぐに離れ、ふーふーちゃんが俺を抱き上げてベッドに寝かせてくれる。もうすこし膝枕を楽しみたかったんだけど、熱のこもった瞳を見てしまったらそんなこと言えない。
「ねえ、まだ、もっと甘やかしてくれる?」
「いつだって甘やかしてるだろう?」
「ふふ、そうだね。だってふーふーちゃんは、俺のことだぁいすきだもんね?」
「ああ、その通り」
俺とふーふーちゃん、どっちの声のほうがとろけてるかな? 口に入れて甘さを比べてみたいくらい、糖度のつまった甘い声だったよ。