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    おもち

    気が向いた時に書いたり書かなかったり。更新少なめです。かぷごとにまとめてるだけのぷらいべったー→https://privatter.net/u/mckpog

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    おもち

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    suuki。学パロ、同い年設定。

    #suuki

    上下ともにジャージを着て、ジッパーを一番上まで上げて口元を埋め、袖を伸ばして手をジャージの中にしまいこんだって、冬の体育の授業は耐えられるものではない。女子は体育館でバスケなのに、なんで男子はグラウンドでサッカーなわけ? 男女差別って良くないと思うんだけど。友人とともにグラウンドの隅っこに座って授業が始まるまでの時間を耐えていれば、「あれ、浮奇だ」と俺の名前を呼ぶ声が聞こえて後ろを振り返った。
    「……あれ、スハだ……」
    「今日の体育浮奇のクラスと一緒だったんだねぇ」
    「……スハぁ」
    「うん? あはは、浮奇、すっごい寒そう。大丈夫?」
    「無理、寒くて死んじゃう。スハなんでそんな平気そうなの?」
    「私もちゃんと寒いけど、浮奇ほどではないかも」
    「スハ体温高いもんね……」
    「……そうだね?」
    そっか、今日の体育、スハのクラスと一緒なんだ。サッカーなんて全然興味ないけどサッカーをするスハはきっとかっこいいんだろうなぁ。サッカーだけじゃなくて、何をしててもかっこいいけど。
    クラスメイトに呼ばれたスハは「すぐ行くー!」と返事をして俺の前にしゃがみ込んだ。首を傾げれば視線を合わせたスハがにっこりと笑う。
    「浮奇がいるなら今日はすっごく頑張らないとだ。私のこと見ててね?」
    「……いつも見てるよ」
    「ん〜、へへ」
    スハは可愛らしく笑ってパッと立ち上がり、クラスメイトのところへ駆けて行ってしまった。残された俺が彼の後ろ姿から目を離せずにいれば、隣に座っていた友人が他の人に聞こえないような小さな声で「付き合ってんの?」と聞いてきて、俺はそれに「付き合ってないんだよ……」と囁きを返した。付き合ってないんだよ、どうしてだろうね。俺は彼が好きだけれど、彼の優しさが自分にだけ向けられた特別なものだと確信が持てずにいる。スハが俺のことを好きならいいのに。
    準備運動をのろのろとやる気のない動作で終わらせた後、クラスごとに分かれて試合をやることになり、俺と友人は真っ先に点数係に手を上げそれを勝ち取った。サッカーは点数の動きが少ないし、ただ点数板の下に座っていればいいだけだ。みんながビブスをつけてボール回しを始めたから先生に咎められないよう余ったボールをカゴに入れたり用具倉庫の中で時間を潰したりしながら待ち、試合が始まる頃に点数板のところに行きイタズラで九九:一にされていた点数をゼロに戻した。
    ホイッスルが鳴り試合が始まったけれど、思った通り点数の動きはほとんどない。先生を含めみんなゆるくお遊びモードだ。反則さえしなければ何をしても、くらいの雰囲気だったけれど、俺たちのクラスが一点を入れると相手チームにいたサッカー部員が一人で全員を抜いて一点を取り返し、それからはみんな真面目にボールを追いかけていた。グラウンドを縦横無尽に行ったり来たり。よくやるよなぁ、こんな寒いのに……。
    何回か点数を追加する以外、授業が始まってからほとんど動いていない俺は今すぐストーブの前に行きたいくらいに凍えていた。友人も風が吹くたびに「寒い寒い寒い」と呟いて震えている。一時間もこんな寒い中体育とか、学校はもっと生徒のこと考えるべきだと思うんだけど。
    半分が過ぎ、一度試合が中断される。水分補給とチームメンバーの入れ替えをするよう言われたけれど俺と友人は点数板の下から動かないし、クラスメイトたちもそれを理解しているから動きたい人たちだけでメンバーを入れ替えてくれた。前半試合に出ていたスハは交代するのかなと相手チームの方に顔を向ければ、ちょうどスハがこちら側に向かって駆けてきているところだった。後半は見学してるのかな? 犬のようにボールを追って走り回ってるスハ可愛くてかっこよかったからもっと見たかったんだけど。
    「浮奇〜」
    「? なぁに、スハ?」
    「これ預かってて! 走ってたら暑くなっちゃった」
    「わっ」
    スハは脱いだジャージを俺の肩にかけて羽織らせ、汗の滲む眩しい笑顔で俺に笑いかけた。一瞬、寒さを忘れて、俺は目を丸くしてスハを見つめる。
    「ちゃんと私のこと見ててくれた?」
    「……ん、見てた。あとちょっとでゴールできそうだったの、惜しかったね」
    「あはは、カッコ悪いところは見ないフリして〜!」
    「すっごくかっこよかったよ。ずっと、一番かっこいい」
    「……ほんと? じゃあ後半はもっと頑張るね。次はゴールするよ」
    「……俺のために?」
    「うん、浮奇のために」
    息を呑んだ俺の頭を撫でて、スハは逃げるように走って行ってしまった。さっきまで凍えそうなほど寒かったけれど、スハが貸してくれたジャージのおかげか、吐いた息は白いのに暖房が効いたみたいに暖かい。
    「……スハ、だっけ、あの人、エグいね」
    「……そうなんだよ……」
    「……がんばれー」
    「がんばる……」
    俺のためのゴールをスハが決めてくれたら、俺も勇気を出せるだろうか。
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    related works

    setsuen98

    DONE🌊🔮♀。大学生×社会人。
    過去あげた大学生×社会人のシリーズですが、これだけでも読めます。ですが良ければそちらも読んでみてください。
     先週のデートの際スハがそわそわとしながら手渡してくれた箱の中に収まっていたのは、うっかり指を引っ掛けでもしたら千切れてしまいそうなほど華奢なシルバーチョーカー。
    チャームも何も無いシンプルなデザインながら、フリルのような繊細な動きのあるチェーンはそれだけで上品に存在感を放ち、どんな服装にもマッチするセンスの良い品だが、箱を開けて真っ先に浮かんだ言葉は「誰と選んだの?」だった。ファッションやアクセサリーにそれほど興味がないスハが選ぶとしたら、シンプルなものだとしても何かしらの石やモチーフがついた無難とも言えるネックレスを選ぶはず。彼が一人で選ぶには、デザインが洗練されすぎていた。
     流石にスハのセンスじゃないでしょ、なんてそのまま問うなんてことはせず、オブラートに包んで包んで、それはもう遠回しに訊けば大学の友人達と出かけた際ショップについて来てもらいアドバイスをもらったのだと言うが、「その時に教えてもらったんだけど、チョーカーって“傍にいてほしい”って意味があるんだって」と伏し目がちに照れながら口にしたスハに、そのメンバーの中に女がいたことを確信して問おうとした矢先に続けられた「あと、彼氏がいますって印になるって聞いて……着けてくれる…?」と、私よりも背が高いにも関わらず器用に上目遣いで見つめてくる年下彼氏の可愛さにやられて、もういいか、という気になってしまいイチャイチャタイムに突入した、というのがその時のハイライト。
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    setsuen98

    DONE🌊🔮。芸能人×メイクさんパロ。
    まだ付き合ってない二人です。
     大きな鏡に写る自分の顔を見れば、あまりに不格好な表情に苦笑が溢れる。無意識に眉間に力が入り平素に比べ険しい目元に反して、口元はスタンプを押したようにわずかに口角が上がったまま。デビュー当時から、基本的にいつでも笑顔で、と口酸っぱく言われ続けた教えに忠実に従う自分の表情筋が今は恨めしい。
     デビューしてから駆け抜けてきたこの数年、自分なりに努力を積み重ねてきたおかげか、歌だけではなくテレビ出演や演技など、様々な仕事をもらえるようになった。有難いことに熱心に推してくれるファンもつき、かつて夢見た姿に少しずつではあるが近づけている。それなのにどうにも自分は欲深いようで、同じ事務所の後輩たちがデビューするなり順調すぎるほどのスピードでテレビやステージなど華々しい活躍を見せる度、劣等感と羨望が溢れどうしようもない気持ちに苛まれ、手のひらに爪が食い込むほどに握りしめそうになるのを堪えてすごい!と手を打ち鳴らす。そんな自分の姿が滑稽で醜くて、後輩たちに合わせる顔もなくなって、思考が自己嫌悪で埋め尽くされる。そんな気鬱が続く時がたまにあり、今まさにそんな気持ちを抱えながら雑誌撮影のためにメイクルームに入れば鏡に映るのはこの様。思わず項垂れ、少しでも胸中がすっきりしないかと大きく長く息を吐く。
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    途綺*

    DONE🐑🔮//綺羅星の微睡み

    甘やかされてふわふわしてぼんやり眠くなる話。※実際にある睡眠導入法を軽くアレンジしています。
    「ふーふーちゃんのばか」

    足を抱えて小さく丸まった浮奇の声は、深く潜り込んだベッドの中でくぐもって響いた。ファルガーがドッゴの夜の散歩から帰ってきた直後という、浮奇にとっては有り得ないほど早い時間にベッドへ入っているのは低気圧に負けて痛みを訴える頭のせいだった。

    外の雨が強くなるにつれて突き刺すような痛みが徐々に強くなってきたこめかみをさすりながら眉根を寄せていた浮奇は、見兼ねたファルガーに鎮痛薬を飲むよう促された。当然の対応だとは分かっていたが昼前から痛んでいた頭は疲れ切って正常な思考を保てず、浮奇は鎮痛薬を差し出すファルガーの手を拒否した。ふーふーちゃんが抱きしめてくれれば治るだとか、脳みそを取り出して壁に投げたいだとか、キスして甘やかしてよだとか。とにかく悪態をついた覚えはあるが何を口走ったのか記憶にない。ただ、話を受け流しつつ浮奇の手を引いてキッチンへと向かったファルガーが唐突に顎を掴んできて、優しく重なる唇に安心したのと同時にぬるい水と薬が口内へ流れ込んできたことで浮奇はようやく正気を取り戻した。
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