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    ラーヒュン ワンライ 「シャボン玉」 2023.09.11.

    #ラーヒュン
    rahun

     定期報告会のため、パプニカ城にふたつのパーティが帰還した。
     ポップ、マァム、メルル。
     ヒュンケル、ラーハルト、エイミ。
     集った六人には、まず湯が用意されるのが恒例だった。
    「メルル行きましょ!」
    「はい!」
     入浴を楽しみにしていた二人は、世話係の女性に案内されて行った。
    「私は、自分の部屋に浴室があるから。ゆっくりさせてもらうわね」
     エイミも一足先に居なくなった。
     残った男三人を、男性の案内人が促した。
    「では皆様はこちらへどうぞ」



     案内人は三人の先導をしていた。
     旅の疲れを癒やす風呂の提供をし始めた最初は、全員に別々の湯を沸かして待っていた。しかし今ではもう三室しか用意していない。いつも入浴の組み合わせは同じだったからだ。
     マァムとメルルは同じ湯を使う。エイミは自室に帰る。
     そしてポップは一人で入るが、ヒュンケルとラーハルトは一緒に入るのだ。
    「こちらです」
     本日の浴場への順路を手振りで示しながら導く。
     ちゃんとついてきてくれているか振り返って確認すると、緑の法衣の魔法使いはガシガシと後ろ頭を掻いていた。
    「なあ、おまえらの長風呂さあ……いつも中でナニやってんだよ。やっらしー」
     戦士たちは顔を見合わせてから、魔法使いを見下ろした。
    「下世話な奴だな」
    「知りたいのか?」
    「知りたくねえわ!」
     案内人は立ち止まって振り返り、笑顔を作った。
    「ポップ様はこちらです」
    「あ、ども」
    「ごゆっくりどうぞ」
     まず一人を目的地に届け、後の二人に会釈をする。
    「もう少々ご足労を願います」
     温かな風呂は、パプニカお抱えの魔法の心得のある使用人が沸かすものだ。王侯貴族のもてなしに使われる施設であり、この区画の間取りはゆったりと広い。
     礼儀作法の通りに行儀良く廊下を歩きながらも、案内人は先程の背後の会話が気になっていた。
     どちらかというと気さくなポップの方が誰かと仲良く風呂に入りそうなイメージなのに、どうしてこのおっかない二人が共に風呂を使っているのか。浴槽の係の者によると、この二人の入浴後は片付けが大変だと聞くが……。
    「お二人は、こちらになります」
    「ああ。ありがとう」
     示した入り口を、礼を言いながらヒュンケルが潜っていった。
     それに続くラーハルトはチラリと案内人に意味深な視線をくれた。
    「ご苦労。後はあまり近付かんでいてくれ。……風呂場は声が響くんでな」
    「あっ、ハイ。ごゆっくりドウゾ……」
     色気のある流し目をくれてから入っていった魔族の姿に、案内人は胸中で、ひえええ、と悲鳴を上げてそそくさとその場を去った。



     という前置きで人払いをしつつ。
     二人は風呂場で戯れていた。
     湯船にちゃぽんと石鹸を落として溶かして、バシャバシャと空気を混ぜ込むとたちまち泡だらけになるのだ。
    「わっぷ! 口に入った! 妙な味だっ」
     湯船に浸かったヒュンケルがぺっぺと苦そうに舌を出す。
    「こちらに水があるからすすげ」
    「すまん」
     さすがは貴族向けの施設である。なみなみと湯が張られた泳げそうな浴槽が二つ。その周囲は洗い場となっていて排水設備が整っている。石鹸も肌用と髪用がたっぷり用意されている。
     ラーハルトは、だらしなく仰のいて外に投げ出された銀髪に手を掛け、ガシガシとこすった。
    「髪もこれだけ汚れが溜まると泡が立たんな」
    「二回洗ってくれ」
    「後で交代しろよ」
    「わかってる」
     隣の浴槽から掬い上げた湯で、ざばーと額から後頭部まで流してやり、髪用の洗剤でもう一度泡立ててやる。
    「極楽だな……」
     大きな湯船。石鹸のある贅沢な湯けむり空間の、やさしく湿った香料の楽しさ。
    「出来た! 次はオレだ」
    「底が滑るから気をつけろよ」
    「オレが転けるわけなかろう」
     湯を出たヒュンケルと場所を入れ替わり、今度はラーハルトが洗われる。
     頭をしゃくしゃくと泡立てられながら、ラーハルトは浸かった湯の手触りを確かめた。
    「ヌルヌルだな。おまえ、どれだけ石鹸を入れたのだ?」
    「それは後のお楽しみだ。流すぞ、上を向け」
    「ん」
     桶の湯で、ラーハルトの髪がざっと何度か流された。
    「よし! では!」
    「やるか!」
     石鹸を溶かした浴槽にザブンとしゃがんだ二人は、その類い希なる身体能力の限りを尽くして湯船で暴れて泡を立てまくった。手足でザブザブと水面を乱す度に猛烈な勢いで泡が増えて盛り上がっていく。
    「ははっ! 前が見えん!」
    「今日はまた一段と泡立つな! 石鹸が変わったかっ」
     泡に阻まれて水面に手が届かないほどになると、ラーハルトは一抱えの泡をヒュンケル目がけて放り散らした。
    「わっ! 鼻に入った!」
    「そらそらっ」
    「くそっ、食らえ!」
     反撃に転じたヒュンケルは手の甲で掬い上げるようなスライス手刀で泡の山を切り飛ばし、でかい塊をラーハルトにぶつけた。
    「やるな!」
     泡が止む度に再び湯を掻き立てて、全裸の泡合戦は続く。こんな子供っぽい遊びをしているとバレるくらいなら、淫靡な大人の遊戯が行われていると勘違いされた方が幾分マシであった。
     あの二人いつも凄く長い時間、風呂場でお楽しみなんですよね。
     その噂は誤解だが、間違ってはいない。







    2023.09.11. 23:10~00:50 +10分 =通算110分  SKR













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