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    hikagenko

    @hikagenko

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    ひかげ

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    hikagenko

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    ■前回(https://poipiku.com/5557249/7639098.html)の続き
    ■ハウリングウルフマンはいいぞ

    勝手に「ハウリングウルフマンは、人間状態とハウリングウルフマン状態を自由に切り替えられる(満月のタイミングを除く)」という設定なので、風間くんは入浴時等濡れる場合は必ず人間状態です。耳に水入るのがイヤなので。

    #ド!
    do!
    #圭勇

    圭勇の書きたいとこだけ書いたやつ②とある村に、黒石勇人という少年が暮らしていました。
    彼はお裁縫の得意な祖母と共に暮らしており、歌を歌ったり、狩りをしたり、釣りをしたり、祖母の作った服を着て村を歩き回ったり、日々を自由に過ごしていました。
    そんなある日、いつものように村のはずれで歌を歌っていた黒石の前に、知らない少年が現れました。風間圭吾と名乗る少年は、黒石の歌を聞いて綺麗なその顔をふんわりと色づかせ、緑の美しい瞳をキラキラと輝かせていました。
    その日から風間は村に住み着き、黒石の近くで生活を共にしてきました。

    それから擦った揉んだもありつつ、黒石と風間は結婚するに至りました。村の中の教会で式を挙げ、村の皆に祝福され、ふたりは共に生きることを誓いあったのです。
    ふたりはその後、村に残った手付かずのまま放置されていた古い家を修繕し、ふたりの家にしました。

    これはそんな2人の、ある日のお話です。


    黒石はリビングの二人掛けのソファに、それはそれは無遠慮に寝そべっていました。お腹の上に五線譜だけ書かれた紙を乗せ、ソファからはみ出した長い足をたまにパタリ、パタリと動かしています。
    お風呂上がりの風間はそんな黒石に近づき、何も言わず、ソファの前に座り込みました。途端、黒石の片手が風間の頭の上に移動しました。風間の髪の毛がまだ濡れているのが気に入らなかったのか、小さな舌打ちの音がしました。しかし、黒石はそのまま風間の耳を撫で始めました。
    楽しそうに笑った風間は、黒石に背を向けたまま話しかけます。

    「勇人、俺の耳好きだな」
    「あ? 別に」
    「別に、なことないだろ」

    風間は、黒石が自分の耳や尻尾が好きなことを自覚していました。ハウリングウルフマンである風間は、耳や手、尻尾が特に人と異なる形をしています。元々は違うからこそ隠していた風間ですが、黒石がいつも触れたり、撫でたり、ジーッと見ていたりするのを見て、隠すのをすっかり止めてしまいました。そのくせ「別に好きじゃない」とウソをつく黒石を、風間は面白く思いました。が。

    「耳だけじゃねーだろ」

    不意打ちを食らって、風間は「…そうか」と黙ります。風間は、そういえば勇人がウソをついているところは見たことないな、と思いました。
    静かな部屋の中、黒石が風間の耳や頭を撫でる小さな音と、風間の喉の音だけが響きます。
    しばらくすると、開けたままの窓からふわりと風が入り込んできて、風間の鼻がピクッと動きました。風の中に雨の臭いが混じっていて、あぁ、明日は少し雨が降るんだ、と風間は思いました。
    黒石の手の動きがだんだん鈍くなっていくのを感じて、風間は「そうだ」と話しかけます。

    「今日沢村に肩車というのを教えてもらったんだ。勇人のことも出来るか、後で試させてくれ」

    元々人間の文化にあまり触れてこなかった風間には、知らないことがたくさんありました。
    人間と偽っていた頃は、なぜこれを知らないのか、と不思議そうな顔をされることも多かったのですが、あの手この手で誤魔化してきました。もう村では隠す必要がないので、風間はどんどんと新しい知識を身に付けていました。主に沢村千弦があれこれと話しかけるからです。

    「…あ?」

    黒石の声は、もう眠ってしまいそうでした。風間は後ろを向いて、黒石の顔を確認しました。目は半分閉じていて、黒石の綺麗な赤い瞳はほとんど見えません。

    「おい勇人、寝るならベッドに行ってくれ」
    「…お前…運べんだろ」
    「そりゃそうだけど」

    黒石は急にフッと笑いました。

    「肩車していいぜ」

    どうやら眠いなりに、風間の話はちゃんと聞いていたようです。
    風間がため息をつきながら「寝た相手を肩車は出来ないだろ」と答えると、黒石は口元を少しだけ上げたようでした。

    「なあ勇人、明日は雨が降りそうだ」
    「…」

    もう黒石は聞いていないらしく、胸が小さく上下するだけでした。風間は頭の上にのせられたままの黒石の手をそっと避けて、今度は風間が黒石の頭を撫でました。
    黒石はいつも、風間に触れられることを恐れません。力がとても強くて、人間とは違う生き物である風間を恐れることなく、当たり前のように受け入れていました。
    それが風間にはとても眩しくて、くすぐったくて、少し怖くて仕方がありませんでした。

    「…勇人」

    風間は爪を立てないように慎重に黒石とソファの間に手を差し込みました。ゆっくりと抱き上げ、寝室まで移動しました。
    ふたりが寝そべってもまだ余裕のある大きな大きなベッドに黒石を下し、風間は黒石の前髪をそっと撫であげ、額に優しくキスをしました。
    が、眠りを邪魔されたのが不愉快だったらしく、黒石は唸り声を上げて寝返りを打ってしまいました。

    「運ばせておいてそれはないだろ! おい勇人!」

    ふたりの家に、風間の怒号が響きました。
    そしてそれは割とよくあることなので、家の近い佐々木純哉は聞こえてきた怒号に、「また黒石くんが何かしたんだな…」と思うのでした。

    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

    数日後

    風「やあ片桐」
    片「こんにちは、風間さん…と、黒石さん」
    黒「おう」
    片「…なにを、してるんですか?」
    風「この前沢村に肩車というものを教えてもらったんだ。勇人でも出来るかと思って、試しているんだ」
    黒「たけーな」
    片「…余裕そうですね」
    風「なあ、片桐も試していいか?」
    片「え、俺ですか?」
    風「勇人より片桐の方が身長あるだろ? なあ」
    片「えーっと…」
    沢「じゃあじゃあ! ゆーくんが僕を肩車して、けーちゃんがボクを肩車したままのゆーくんを肩車するってどう?」
    片「わ、ちづ!」
    黒「やるぞ、圭吾」
    風「仕方ないな。勇人、おろすぞ」
    黒「おう」
    片「ま、待ってください! さすがにそれは危ないですよ!」
    黒「いけんだろ。圭吾頑丈だし」
    風「まず勇人は沢村を肩車できるのか?」
    黒「あ? 余裕だろ。おい白村、早く来い」
    沢「わーい! あ、ボクいっちゃんより大きくなっちゃうね! よい、しょ! ゆーくん、立って立って!」
    黒「おう」
    沢「わ~! やっぱりいっちゃんよりおっきい! あっ、ねえねえゆーくん! このままじゅんくんも呼ぼうよ! じゅんくんがボクを肩車して、じゅんくんをゆーくんが肩車して、ゆーくんをけーちゃんが肩車するの! そしたらボク、きっとお星さまにも手が届くよ~!」
    黒「あー? まあ、やってみっか」
    片「絶対危ないです!」
    沢「あ、ごめんねいっちゃん…いっちゃんのこと置いてけぼりにしちゃって…」
    風「片桐、俺はたぶん余裕だぞ」
    片「いや、風間さん以外がたぶん大問題なので…」
    沢「ん~っ、やっぱりダメダメ! いっちゃんの肩はボクの! ゆーくんもういいよ! おろして! ありがとう!」
    黒「おう」
    沢「で、いっちゃん! ボクのこと肩車して! で、じゅんくんのところに遊びに行こ!」
    片「え、うん」
    沢「よしっ、しゅっぱ~つ!」
    黒「…お前さ」
    風「え?」
    黒「どうでもいいことばっか覚えるよな」
    風「なっ、どうでもよくはないだろ! …いや、どうでもいいのか? なあ、肩車ってなんのためにすることだ?」
    黒「知らねーよ」

    平和な日々を過ごしている風間と黒石なのでした。
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