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    hikagenko

    @hikagenko

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    ひかげ

    サークル名:
    Hello,world!

    ジャンル:
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    イベント参加予定:
    24/06/01~02 景丹webオンリー
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    hikagenko

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    https://poipiku.com/5557249/7639098.html の没バージョン

    #ド!
    do!
    #圭勇

    没バージョン圭勇これまでのあらすじ!
    風間圭吾はハウリングウルフマン。
    自分の意思で体を人間のように偽ることができる。ただし、満月の夜だけは抗えず、本来の姿になる。
    そんな風間圭吾は、ふと訪れた村で黒石勇人に出会う。
    黒石勇人の音楽に惹かれて、そのまま村に居着くようになった風間圭吾。音楽に惹かれ、黒石勇人という人間に惹かれ、人を愛することを知る。
    しかし、ある満月の夜に、村にある結婚式場に黒石勇人がいることに気付いた風間圭吾。
    黒石勇人は真っ白のタキシードを身に纏い、その傍らにはウエディングドレスを纏う女性の姿が…。
    反射的に式場に乱入し、黒石勇人を連れ去る風間圭吾。
    己がハウリングウルフマンの姿とあることに、村では人間だと偽っていたことも、なにも気にせずに。
    どうする風間圭吾! どうなる黒石勇人!



    村を出て、森に入る。人間には出せないスピードで森の中を駆ける。肩に担がれた黒石勇人は、風間圭吾の尻尾を触りながら何かを言っている。慌てた風には聞こえないから、きっと見慣れない物に興味が湧いて触っているのだろう。
    黒石勇人が分からない。それは今に始まった話ではないけれども、全く、理解できない。風間は奥歯を強くかみしめる。
    適当なところで立ち止まり、黒石を地面に下ろす。殆ど投げ下ろした形だったため、白いタキシードが土埃で汚れるのが分かった。黒石が「おい!」と機嫌の悪そうな声を出した。構うもののか。構う理由などない。

    「結婚、するのか」

    風間の声は震えていた。
    眉間に皺を寄せていた黒石は目を丸くして、「耳もあんのか」と耳に触れようと手を伸ばしている。式場では背後から急に担いだから、正面からは見えなかったのだろう。
    話を聞いていないことにまたイラつき、風間は黒石の手を払う。

    「話をそらすな! 勇人、お前、俺の知らないところで、俺の知らない人間と一緒になろうとしてたのか」

    口にするとどうしようもなく怒りが湧いてくる。呼吸が浅くなり、喉の奥がギュッと詰まる。
    黒石の腕を掴む。

    「圭吾」
    「そんなの…許せるわけないだろ!」

    黒石の腕から何か音がした。黒石は眉をひそめる。

    「腕、はなせ。いてぇ」
    「行かせない、もう、勇人から離れない」

    手に力を込める。決して逃さないように。どこにも行かないように。
    そうだ、どこかに閉じ込めてしまえばいい。
    このままどこかに連れ去って、閉じ込めて、こんな服は取っ払って、それから。

    「知らなくねぇだろ。佐々木の姉ちゃん知ってんだろ」

    思いもよらないことを告げられて、手の力が少し抜ける。黒石が身をよじるので、また力を込める。
    思い返すと、確かにドレスを着ていたのは佐々木純哉の姉だ。佐々木直子。
    村の祭事をまとめる純哉の周りで、茶化したり手伝ったりしているのを見かけたことがある。カラカラとよく笑う女性で、言葉の癖が強くてたまに何を言っているか分からない。
    確かに、そうだ、知っている。でも。

    「だからなんだよ!」
    「やめろ、服破けんだろ」
    「なんで、なんであの人なんだよ!」

    黒石の左肩から、布の裂ける音がした。同時に黒石の口から声が漏れる。
    そうだ、こんな服、破り捨ててしまおう。そのまま左側の袖を引き千切り、千切った袖を放り投げる。黒石の目に明らかな怒りが宿る。

    「破くなっつってんだろうが!」
    「うるさい!」

    黒石は自由になった右手を振りかぶる。風間はそれを軽々と払い、そのまま黒石の体を地面に転がす。
    うつ伏せの姿勢になった黒石の背中に、素早く膝を乗せて動きを制する。白いタキシードは土に汚れ、あのとき見た美しさなどどこにも残していない。そうだ、これでいいんだ。
    目の前が歪む。
    黒石が低い声で「いい加減にしろよ」と唸る。

    「ばあちゃんがお前の分も作ってんだぞ、揃いのやつ」

    風間は両手をおさえようとしていた手を止めた。
    黒石の祖母も、もちろん知っている。黒石と一緒に住んでいて、ニコニコと笑う小柄な婦人だ。
    風間が家に行くたびに、よく来たね、と笑ってくれる。
    裁縫が得意で、小物から洋服まで作ると聞いていた。これが、その黒石の祖母の作った、服?
    言われた意味が分からなくて、風間はノロノロと立ち上がる。

    「…なん…でだよ、揃いって、新郎の服だろ、これ」
    「そういうことだよ」

    黒石はゆっくり起き上がろうとしたが、腕に力が入らなかったのか結局仰向けに転がった。

    「…じゃあ、なんで佐々木の…」
    「練習しとけって、佐々木がうるさくてよ。で、佐々木の姉ちゃんが練習付き合ってるやるって。ドレスはどっかから借りたんだとよ。着てみてぇからって。」
    「…勇人、お前、誰と結婚するつもりだったんだ?」

    黒石勇人はため息をついた。目の前がさらに歪んでいく。
    目を擦っていると、黒石が笑った音がした。

    「俺が言っていいのかよ」

    ーーー勘違い、だったのか。全て。
    タキシードの左腕は千切れ、右腕も外れかかっている。全体的に土で汚れ、見る影もない。
    剥き出しになった左腕は、爪が食い込んでいたらしく血が出ている。
    背中に手を回し、そっと体を起こさせる。

    「…勇人、ごめん、服、破けたし、腕、血が出てる…ごめん…」
    「俺も、驚かせて悪かった」
    「勇人、俺と、」

    風間の言葉を聞いて、黒石は楽しそうに笑った。



    「なぁ勇人、腕本当に大丈夫か? おぶるか?」
    「折れてんの腕なんだから関係ねーだろ」
    「折れてるのか?! じゃあ大丈夫じゃないだろ! 俺のせいだけど! 早く帰るぞ!」
    「なあ、お前尻尾柔らけえな」
    「肩に担がれて最初に言う言葉か?! お気に召してなによりだ!」

    満月が二人を静かに見下ろしている。



    (以下、余談メモ)
    風間くんがお婆ちゃんに服を破いてごめんなさい、勇人の腕を折ってごめんなさい、ってしにいったら、「驚かせたかったんだけど、怖がらせちゃったのね。ごめんなさい」「タキシード、しっぽが出るように直した方がいい?」って聞かれる。
    手伝えることは手伝うし、たまに泣いてる風間くんと、腕が折れていて手伝えないので歌っている黒石くん。
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    INFO・α×αの地獄のオメガバースです。
    ・幻太郎と自我の強い厄介モブ女ががっつり絡みますので、幻モブ♀が苦手な方はご注意ください。(幻からの恋愛感情はありません)
    ・全年齢レベルですが性行為を匂わせる描写が多々あります。
    ・ハピエンです。
    Strive Against the Fate(無配サンプル) 脈絡なくはじまった関係は、終わりもまた前触れなく訪れるのだろう。瞼をひらけば高く陽が昇っているように、睦み合う夜は知らず過ぎ去っていくのかもしれない。すこし日に焼けた厚い胸がしずかに上下するのを見つめるたび、そんなことを考える。
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     夜が更けるまでじっとりと熱く肌を重ねて、幾度も絶頂を迎えて、最後に俺のなかで果てたあと、帝統は溶け落ちるようにこてんと眠ってしまった。ピロートークに興じる間もなく寝息が聞こえて、つい笑ってしまったっけ。真っ暗な夜においていかれたような寂しさと、尽き果てるほど夢中で求められた充足感のなかで眠りに落ちたあの心地よさ。身体の芯まで沁み入るような満ち足りた時間に、いつまでも浸っていたくなるのは贅沢だろうか。
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