初詣「れおくん! ちょっと! いつまで待たせる気なの!?」
「えっ!? おれ、セナとなんか約束してたっけ? フィレンツェに帰るのは明日だろ?」
「いいから早く! 上着着て玄関口に来てよねぇ! 今すぐ!」
「えぇ? う、うん……?」
そろそろ正月ボケもしていられない昼下がりのことだ。共有ルームでのんびりと作曲をしていたら、突然セナの怒鳴り声がしたので、思わずペンを放り投げて飛び上がってしまったのだ。おかけで音楽は消えるし、目の前には般若の顔をしたセナが立っている。まずい状況なのは確かなんだろうけれど、なにがセナの逆鱗に触れているのか、皆目検討がつかない。
パタパタと廊下を勇み足で進み、コートを手に取って玄関口へ向かいながらしばらく考えていたものの、これといって思い当たる節がない。昨日はセナに会っていないし、お正月は軽く顔を合わせただけで、特に会話もしていなかったはずだ。
1810