赤に染めて
「これあげるよ」
この頃常となった長屋での茶会。茶会と言っても本当に茶を囲んで何でもない話に花を咲かせているだけなのだがこれがなかなかどうして心待ちにしている自分がいる。そんな和やかな時を過ごしていた折マスターから菓子を手渡すようにポンと渡されたそれは赤い輝石だった。
「これは?」
「いつものお礼。君宝石魔法使ってるしこの形状の方がいいかなって」
「褒美を貰うほど武勲を立てた覚えもないぞ」
「だからいつもありがとうの気持ちだってば」
困ったように笑みを浮かべる立香をさておき確かに自分の使用する魔術は宝石魔法と呼称されるものであるらしい。他の国の女神を初めそれに準ずる魔術を使う者は見かけただけでも一定数はいる。格段珍しくもないがある者の言葉を借りれば一番金の掛かる魔術との事。現代に於いては資産を食いつぶしてしまう程割に合わないものであるという。自分は単に師から教わったのがそれであっただけの話だったが何だかゾクリとしたのを覚えている。
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