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    kow_7726

    @kow_7726

    忘羨、曦澄に日々救われる。

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    kow_7726

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    下戸藍湛×バーテン魏嬰
    〜心の声編〜

    #忘羨
    WangXian

    ノンアルコール・モヒート!(8) それから数日。
     藍湛は店に来ず、俺は無意識の溜息が増えた。
    「シンデレラ君と、何かあった?」
     今は店内に女子大生一人。お気に入りのカクテルを飲みながら、お気に入りの席を立ち上がりカウンターに近付いてくる。
    「……いや、別に」
     スツールに腰掛けずカウンターに腕を付いて、わざとらしく大きな溜息を吐き出した。グラスを両手に持ちながら上目遣いに見上げられる。
    「わかりやす過ぎ。告白でもされた?」
     俺はたまたま飲んでた烏龍茶を吐き出しそうになった。変な所に入って物凄く噎せてしまう。
    「ちょっと、大丈夫?もしかして、マジ?」
     『んなわけあるか!』と心の中で叫ぶ。流石に接客中にそんな乱暴な言葉遣いは、お客様にしてはいけない。
    「そんな事、ある訳ない」
     自分で言って悲しくなる。そう、あるわけないのだ。あの反応、きっと俺にキスした事が気持ち悪く感じたに違いない。酔ったらキス魔になるんだろう。ただし相手が男だったから…
     下戸だと話していたのに酒を飲まされ、酒乱を暴かれ、気まずくて来なくなるのは当然の結末と言える。
     自業自得。酒など飲ませなければ、彼とまだ友達でいられたのかもしれないのに。
    「……ねぇ、ちょっと。自分で言って落ち込まないでよ」
     女子大生に呆れられる。彼女は意味深に唸ってから、再び大きな溜息を吐いてグラスを置く。
    「焦れったい…!ああもう!」
     突然叫び出した女子大生に驚き、レモンスライスを作っていた手が止まる。
    「あのさ、あんなわかりやすいアプローチで気付いてないとか言わないよね?」
     アプローチ…何の話だ。きょとんとする俺にがっくり項垂れる。項垂れたいのは俺だ。
    「お互いにあんな、熱烈な片想い光線出してて、本人達だけ気付かないとか。此処は高校の教室か!」
     怒鳴りながら乱暴にグラスを置き、俺に人差し指を突き付けてくる。剣幕が、怖い。俺はナイフを持ったまま半歩後退る。
    「……何の話してんだよ…」
     話してる言葉は日本語なのに、全く理解が追い付いてくれない。誰か、今時の女子大生の説明書って持ってないか。
    「わかった」
     何がわかったのだろう。びくびくとしながら珍しく少し酔った女子大生の据わった目を見つめる。
    「シンデレラ君、狙うわ」
     その発言に俺は、固まった。
    「シンデレラ君のスペックなら周りに超自慢できるし」
     何でそうなる…?この子が、藍湛と…?
    「駄目だ!」
     自分でもびっくりするくらい大きな声が出た。
     誤魔化すように、目線を泳がせてナイフを置く。彼女は驚く事はなく、何度目かわからない溜息を吐き出して告げた。
    「好きなら、きちんと伝えないと伝わらないよ」
     口を尖らせて泣きそうな声。俯いて、目を擦る。昨日、高校の頃からの彼氏と喧嘩したって言ってたもんな…きっと、自分に言い聞かせてるのだろう。
    「私、今から彼氏に電話する」
     突然の宣言。そう言って席に戻りスマホを操作して、電話をかけ始めた。別れるって昨日、騒いでた。別れて藍湛を狙うのかな。
     そう思ったら、鼻の奥がツンと痛んだ。
    「もしもし……うん……うん…」
     繋がった彼氏と話す彼女は、鼻を啜っていた。そして、泣きながら言葉を放つ。
    「好きじゃなかったら、こんなに悩まない!……バカ!大好きって意味なの!鈍感!」
     そして彼女は、少し話してスッキリしたように電話を切って振り返る。
    「私は、きちんと伝えた。マスターもシンデレラ君も…ちゃんと伝えないと伝わらないよ…」
     鼻を啜る彼女は、とても清々しく笑った。そして帰り支度を始める。
    「今からこっち来るって言うんだもん。此処は教えたくないし、私は行くね」
     支度を終えた女子大生は嵐のように、出ようとして振り返る。
    「マスターも、言葉にしないと伝わらないよ。隠れた心の声を聞いて、なんて都合のいい話は…現実になんて、ないんだから」
     そう言って笑った彼女の笑顔は、とても綺麗だった。
     彼女を扉まで見送り、鍵をかける。店の外の灯りを消して、彼女の使っていた席を片付けする。洗い物をして、一つ息を吐き出す。
    『言葉にしないと伝わらない』
     どうせ、嫌われたのだから。友達でいられないのなら、一度きちんと話をしたい。しなくては。
     バックヤードに向かい、スマホを手に取る。『藍湛』の文字だけで、心は締め付けられるように痛んだ。タップしてコールする。
     上手く行けば、繋がるだろう時間だ。数コール後、留守番電話への案内が流れて絶望した。自然と涙が浮かんでくる。
     情けない…こんな事で、泣くなんて……
     こんな事……違う、こんな事じゃない…藍湛だから、泣くんだ…
     深く息を吐き出して気持ちを落ち着かせていると、着信音が鳴り響いた。藍湛だ。心を落ち着けててから、通話ボタンを押した。
    「……もしもし」
     声は震えなかっただろうか。
    「…魏嬰…」
    「今から、店に…来てくれないか?話したい事がある」
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