太陽より早くテレビに映る美しい夕景。小さな島の一日の終わり。それを見て感激の言葉を呟くマーヴは、画面で輝く夕日に照らされている。
「この島では毎日こんな日の入りが見られるのか……羨ましいね」
太陽が沈む映像で紀行番組が終わった。太平洋に浮かぶ島国を巡る旅は、俺とマーヴを数年前の特別な景色へと誘う。
「俺たちが行った島は日の出が綺麗だったよね」
「ブラッドリー、あれは夕日だったよ」
二人はハネムーンを過ごした島を思い出していた。遮る物のない大海原。水平線へ沈む太陽が静かな夜を連れて来る。……いや、何か違う気がする。
「待って、あれは夕日じゃなくて朝日でしょ? 俺たちが見たのは日の出だよ」
夜の間に冷えた砂浜を踏みしめ、誰もいないビーチを二人で歩いた。ブランチの時間まで寝るつもりだった俺の肩を揺するマーヴの手の温度まで覚えている。
3020