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    adashi_No6

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    adashi_No6

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    ・アルファ大寿くん×元アルファ三ツ谷くんのオメガバースパロディ
    ・ヒートの時期の話
    ・色々捏造してます

    幸せのありか 仕事から帰って玄関のドアを開けた途端、むせ返るような甘い匂いがオレを襲った。オレ以外には感知できないとはいえ、気分としてはあまり外に漏らしたくはない。少し急いでドアを閉め鍵をかけ、靴を脱いで廊下へ上がった途端、寝室のドアがゆっくりと開いて頬を赤く染めた三ツ谷がふらりと出て来た。
    「三ツ谷、」
    「おかえり……大寿」
    「抑制剤は飲んだのか」
     オレの問いにこくりと頷いた三ツ谷からは、未だに強烈なフェロモンが出ている。帰る前にオレも抑制剤を飲んだのは良い判断だったと考えながら、ふらふらと身体を揺らしている三ツ谷を支えようと腕を伸ばした。その瞬間、今までぼんやりとしていた三ツ谷の目がギラリと光ってオレの腕を掴み、力強く引き倒される。
     ヒートを迎えたオメガは、大抵の場合は微熱を出したり発情したりとベッドから離れられない状態になることが多い。現に三ツ谷も微熱が出ているせいでいつもより体温が高い。だが、ヒート期につがいのアルファを廊下に転がすようなオメガはコイツくらいだろう。廊下に大の字に転がされ、着ているスーツを大人しく剥ぎ取られながら溜め息を零す。
    「おい……」
    「これはダメ、こっちも弱い……っは、ナメてんの?」
    「人の服を追い剥ぎしながらキレてんじゃねえ、欲しいなら口で言え」
     オレの呆れたような声も耳に入ってないらしい。ジャケットもワイシャツも脱がされ、「不合格」になった服は普段の三ツ谷ならば絶対にしないだろうがその辺に放り投げられていく。この時点でコイツの余裕の無さが見て取れるが、本能に支配された状態では仕方ないだろう。ワイシャツの下に着ていた肌着をオレから奪い取り、すんと匂いを嗅いだ三ツ谷の表情が突然ぱっと明るくなった。
    「合格!」
    「そうか、良かったな」
     嬉しそうに肌着を持ったままいそいそと寝室へ急ぐ三ツ谷の後を、脱がされた服を抱えたまま追いかける。一番濃いフェロモンが漂う室内はいつも通りオレのクローゼットが開かれ服が引き出された荒れた状態で、床には様々なものが散乱していた。その中心にあるベッドの上に乗り上がった三ツ谷は、散らばった服や毛布をなんとか「巣」にしようとしてもがいていたが、オレがスーツや荷物を片付けている間に諦めたらしい。気がつけば拗ねた顔で大の字になって寝転がっていた。
    「なんだ、諦めたのか」
    「どうせオレは巣作り下手ですよ……」
    「拗ねるな、今作ってやる」
     ベッドの真ん中でオレが買ってやったアザラシのぬいぐるみを抱きしめながら、三ツ谷が完全に拗ねた顔でごろりと寝転がる。その身体の上に衣類や毛布をかけてやりながら、ついでに軽く部屋の掃除をしていくことにした。
     ヒートに入ったオメガは自分が孕める環境だと判断すれば「巣」を作る。ここならば自分の子を産めると判断した証拠であるそれを、つがいであるアルファの気配が濃いところに作ることはオメガからアルファへの最上級の信頼の証だ。だが三ツ谷はそれを作るのがとにかく下手で、巣作りに必要ないだろうものまで持ち込んだり、今のように巣そのものを形成できないことが多い。この間のヒートには「大寿が好きだから」という理由で、ブランデーのボトルを巣に持ち込んでいて心底驚いたのは記憶に新しい。
    「飯は」
    「……食べたくない」
    「ブドウ買ってきたぞ、皮ごと食える」
    「…………食べる」
     食欲が落ちているだろうと予想し、帰りに果物を買い込んできたのは正解だったらしい。ぐずるようにして頷いた三ツ谷の頭を優しく撫でれば、不機嫌そうな唸り声が聞こえてきた。普段の三ツ谷からは想像がつかないが、この時期はひたすら情緒は不安定になるうえ、感情的になりやすくて疲れるといつだったかぼやいていたのを思い出した。
    「……ヒート、辛いか」
    「まあ……見ての通り」
    「…………」
    「そんな顔すんなって、後悔なんてしてないんだから」
     それまでぼんやりとしていた三ツ谷の声が、ハッキリと答えた。そもそも三ツ谷が「オメガらしくない」理由は至極簡単なことで、元々アルファだったコイツをオレがビッチングしてオメガに変えた。それだけのことだ。当然、同意の上でビッチングを行っているが、身体のつくりから変わっていく苦痛や違和感はとてつもなく大きなものだろう。
     元はなかったものを背負わせたという感覚は、つがいになって数年経った今でも消えない。
    「……は、すげえ顔」
    「ああ?」
    「叱られてしょぼくれたイヌみたいな顔してる」
    「……テメェ」
    「いいんだよ。……オレだって大寿のこと、誰にも渡したくなかったんだから」
     微熱のせいでほこほこと頬を赤くしたまま、ニッと三ツ谷が笑みを浮かべる。オレに気遣わせまいとしているその笑みを見るたびに、愛おしさと庇護欲が搔きたてられ堪らない気持ちにさせられる。
     巣ごと三ツ谷を抱きしめ、頬に口付けて「愛してる」と囁けば腕の中のつがいは心底幸せそうに笑った。


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