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    tooko1050

    透子
    @tooko1050
    兼さん最推し。(字書き/成人済/書くCPは兼さん右固定。本はCP無しもあり)
    むついず、hjkn他
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    tooko1050

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    これは女体化のがオイシイ気がしたので♀兼さんです
    毎度おなじみ特殊設定で書きかけ物。

    ##むついず
    ##女体化

    「龍宝華如」「わしがいつ! こがなこと望んだか」

     それはそれは情けないとしか言いようのない、落胆と悲嘆と僅かな怒りと…… あと何かよく解らない、とりあえず負の感情なんだろうなと思う声で目の前の男が叫んだ。

     生まれついてからというもの、それはそれは大切に大切に育てられて早…… 多分十年は過ぎたはずだが正確なところは解らない。とりあえず比喩でなく蝶よ花よと愛でられ、慈しまれて育ってきた。
     と思ったらそれは大きな間違いで、端っから「生贄」として大事にされていただけだった。

     やっぱりなー、世の中そんな美味い話があるわけねーんだよなあ。

     と実は結構世慣れて…… 『スレ』ていらっしゃる、見た目と今日までの扱われ方だけは間違いなくお姫様な兼定は思った。
     だって自分には「和泉守兼定」という立派な、まあその、女の子につけるにはちょっと大分勇まし過ぎるが、カッコイイ名前だってあるのだ。
     名付けた本人であるはずの父親が生まれる前に居なくなってしまったから、いずれこの手に抱く子が跡取りになる男の子であれ、と願ったのだと思えば男名だろうと何一つ構うことはない。会う事が叶わない父からの最初で最後の贈り物だと思えば嬉しさと誇らしさ以外の感情はない。
     やっとの思いで産んだ子を取り上げられてしまった母親だって、本物の姫様のように恭しく世話されるところを見たのが最後となればこれぞまさしく不幸中の幸いだ。
     とにかく、両親はこの子は幸せに暮らしていけると信じて息を止めたのだからそれで良い。

     色々あったが事実は一つ。
     何があったか傷を負い、やっとの思いで辿り着いたとある山奥の村で、瀕死の父は身重の母を村人に預け、村人は表面上善い顔をして母を引き受け死にゆく父の心残りを和らげた。
     母は子を産んでしばらくして父の後を追うことになったが、娘の未来は善き村人が善いようにしてくれると信じて目を閉じた。
     村に古くから伝わる因習があるなんて知りもしない余所者の二人だ、善い顔の裏に隠された思惑に気付かなかったことを恨む気持ちなんてサラサラ無い。むしろ恨み辛みのままに終わる事なく、心安くしてもらえて良かったと思う。
     村人にしたってそうだ。
     ただでさえ山深く谷深く、自然の恵みは豊かでもその分一度天が荒れれば一瞬で孤立無縁の僻地と化す不便な土地。ここでしか採れないという宝の石のために領主から命ぜられて麓へ移り住む事も叶わない、そんな訳ありの村だ。この険しい山で神仏に祈りながら生活する人々が、ちょっとばかり胡散臭い言い伝えや生贄なんてものを要求する存在を嘘っぱちだと棄て置けるわけがない。
     信心深いとかなんとか以前の問題だ。こういう悪い習慣をなくすことは酷く難しい。誰だって生贄なんて進んで選ぼうとは思わないが、もし習慣を無視した途端に酷いことが起こったらどうする。誰も責任が取れないし、取り返しもつかない。仮定のその先が判らない以上、先例に従った方がすべてにおいて「いくらかマシ」なのだ。
     他人の子一人、夢の中に閉じ込めて育てる苦労は相当なものだろう。ついでに口減らしの時でもないなら誰だって血を分けた自分の子より、他人の子が生贄になってくれた方が良いに決まっている。ましてや余所者の子で、何も知らない赤ん坊から上手く夢を見させて育てた。こんな「お誂え向き」があるか。多分無い。

     そんなわけで。
     お綺麗ですよ、と褒めそやす世話人に頷いて、旦那様が全て良きようにしてくださる、という「教え」に頷いて、本当のことを色々教えてくれた村のお社の宝物や古道具の付喪神達に別れを惜しまれながら、真っ白な花嫁衣装に身を包んだのが今朝のこと。

     厳重に目隠しをされた、こればかりは一目でどこか異様と解ってしまう輿で運ばれて、初めてのことに流石に少々息苦しくなったところで、ご無礼を、と言いながらもしっかり絹の布で目隠しされた。そして、ここでお迎えをお待ちください、と優しくも残酷で、それを知っているからこそ震える声が告げた。

     せめて夢を壊すまいと、ありがとう、と言えば、優しくしてくれた全てが嘘ではない証拠のように、村人達の声は罪悪感に更に震えた。それでも連れ帰ってはくれないらしいことも知っていたので、軽く手を振ってそれで終いだ。

     今自分がどこにいるのかも解らないまま、ひたすら待った。
     日が高くなって暖かくなって、昼寝したいと思うくらいの穏やかな時間が過ぎて…… それにしたって遅い。まさかここで婚礼衣装に身を包んだまま餓死するのが役目だったか? と流石に己の運命を呪いかけたところで漸く何かの気配がした。
     生贄話で儀式の中で殺さず、なにかに捧げる上にわざわざ「嫁にする」と指示されている場合、大抵は「喰われて」しまうということだ。そんなに簡単に本物の神様が出てくるわけがないし、多分神様より人間の寿命の方が短いとは言え、何度も嫁ばっかり欲しがるのも妙な話。きっと『そういうこと』になっているだけで、実際は狐だか山犬だか狼だか…… 何かそういう類で大型の獣が子供の柔らかい肉を喰らいにくるのだろうとは覚悟していた。

     出来ればあんまり苦しく無いといい。出来たら一撃で殺してくれるといい。そんなことを考えていた時だった。

    「なん…… どういて、こがぁなところに子供がおる……?」

     それはそれは不思議そうな、戸惑いを含んだ奇妙な言葉を操る男の声がした。

     誰かに声をかけられても喋ってはいけない。

     この手の話によくあるお約束ごとの一つとして言いつけられていたので、兼定は淑やかに座ったまま何も答えなかった。

    「そりゃ婚礼衣装じゃな。どこぞへ嫁入り…… いや待て、介添えさんはどうしたんじゃ。その格好じゃ村ん中歩くにも手伝いがいるじゃろ。随分とえい衣装じゃが、お供は居らんかの?」

     段々嫌な予感がしてきたらしい男の声に焦りが混じる。一度も聞いたことがない声と言葉、今日のことを知らない様子から考えて村の者ではない。近くに別の村があるかどうかは知らないが、あっても交流がない可能性は十分にある。状況から察して「捧げ物」の可能性に気がつく事ももちろんだ。

    「その、まさか、じゃが。まさか、」

     ついに男は言った。

    「こん山の、神さんに嫁入り、する…… ちゅうわけじゃないろうな!」

     残念。否定したかったみたいですが、それが正解です。

     黙ったまま答えない子供に、男も諦めたようだ。

    「神嫁御様、か……」

     はあああ、とそれはそれは盛大な溜息の後、不意に気配が近くなって、それから目隠しが外された。

     眩しい、と思って慌てて目を閉じた辺りで、舌打ちのような音が聞こえて驚く。この体に価値を見出すのは村人だけだ。今近くにいる男にとっての自分の価値は解らない。逃げた方が良いか、しかし先に言われた通りのこの格好、まだ目が慣れない上に、どこに据え置かれたかも判らない状態で逃げられる自信など皆無だ。確実に一人でここに現れた男の方が身軽だし、そもそも大人の男と子供じゃ勝負にならない。山の中だし。

    「安心し。こんまい子ぉ取って食いやせんよ。なんぞ妙にこの辺片付いとったからにゃあ。誰ぞ来たんじゃろうが、何の用じゃろ思うて様子見に来てみたんじゃが……」

     どういて子供をこがなとこに置き去りにするんじゃ、とある意味まともなことを呟いて、それからまた深い深い溜息の後で男が叫んだのだ。

     そして冒頭に戻る。

    (今、わしって言った?)

     しょぼしょぼしていた目が慣れてきたので改めて男のことをよく見てみる。
     ぴょこぴょこ縦横無尽ってこれかと思うくらい自由に跳ねた髪。その後ろの長いところを一つに結んで、俯いているから顔は分からないが、しっかりとした体格からして、みるからに健康そう。
     若い男だ。多分、村の成人前の若者よりほんのちょっと年上で、まだ夫婦になっていなくてもおかしくはない、くらいの。つまり今まさにお嫁さん募集中くらいの?
     綺麗な藍染の裁っ着け袴を見るに金には困っていないだろう。山では虫除けの意味もあって重宝される色だが、濃い色に染めるのは手がかかると村の婆様達がよく言っていた。手がかかるものは高価なのだとも。
     朝や夕にお天道様が山河を染め上げる色に似た橙の着物も上等に見えるし、それなりの身分の男なのではないか、と思わせるには十分だった。
     その出立ちが華美というより動きやすさ重視に見えたので、ここに何かないか見てこいと指示された若武者か従者なのだと思ったが、これはむしろ……
     何しろ兼定の先生は多岐にわたっていて、その分、子供らしくない知識も持ち合わせていたので。

    「……神様?」

     導き出されたその考えに禁を破って声を発すると、すっかり落ち込んで項垂れていた男が弾かれるように顔を上げた。

     見開かれた瞳は人に非る橙を混ぜた金色。けれど、不思議と恐ろしくはない。びっくり、とこちらを見つめるその表情は本当にただの若者然としていて、見慣れた村の者達と何も変わらない。

     神様がどんな姿をしているか誰も知らなかったが、守り神様として大切に思われていたことも知っている。道に迷って行方知れずの者を帰してくれたり、旱が続けば雨を、雨が続けばお天道様を呼んでくれる優しい神様だと親しまれていた。一方で生贄は風習として根付きすぎていて誰も異論を唱えられない空気だったが、「いつもあれだけ良くしてもらっている神様への稀な供物だから仕方がない」という諦念が底にあったように思う。これは付喪神達からの完全な受け売りだが。

    「天竜の村から参りました。此の度の捧げ物に御座います」
     教えられた通りの口上を述べて嫁様らしく、と意識しながら、膝の少し先へ綺麗に指を揃え、淑やかに見えるように首を垂れる。
     暫く無言の時間が流れて、それから困ったような声が頭上から降ってきた。
    「それは、神様に会うたら言いんさいちゅうて習うた挨拶じゃろうか」
     顔を上げないように注意しながら頷くと、再び溜息が聞こえた。何か間違っていたのか、と不安になる。
    「ほがなことせんでえいよ。まだほんの子供やないか、ほがぁなこと言わんでえい」
     突然直近から声が聞こえて、ふわりと体が浮きが上がった。
    「とは言うてもにゃあ、村に帰しちゃる言うたところで困るじゃろうなあ」
     下がり切った眉が視界の下にある。衣装で結構重くなっているはずの体が軽々と持ち上げられ、男を見下ろす形になっていた。高い、とまずそれが気になる。
     打ちひしがれるように小さく縮こまっていたから解らなかったが、この男…… 青年の姿の神様? は上背がある。初めて着る身動きしづらい衣装と、誰に抱えられた時より高い位置が合わさると少しだけ怖かった。無意識のうちに青年の肩の辺りの着物を握り込んでしまう。
    「お、いかんいかん、ちと怖かったかの。すまんのう。けんど、その格好じゃあ山歩きは無理じゃ。ちくと我慢しとおせ」
     にこりと笑うと、幾分低い位置に抱え直され、しっかりと背中に回された腕と丁度青年の胸や肩が支えてくれるので不安感は消失した。
    「どこに、」
     行くのか、聞こうとして口を利いて良いのか解らず慌てて紅を刷かれた唇を噤んだ。
    「ほうじゃのう、お嬢ちゃんあの村の子ぉやないし、下手に帰したら怒られてしまうじゃろ? ひとまずわしんくに行こか」
     日が暮れると一気に寒くなるから、と怖がらせないようにか笑顔を崩さないまま青年は言った。
     村の子ではない、と言われたことには内心驚いたが、相手は恐らく神様、人の身では量り知れないことが解って当然か、と考え直す。
     逆らう気など始めからなし、と頷けば、しっかり捕まっとれよ、とだけ言って想像より大分険しい山道を自分を抱えたまま何でもないように更に上の方へと登り始めた。

    (こんな辺鄙なとこだったんだ)

     今更恐ろしくなって両手でしっかり青年の着物に掴まれば、えい子じゃ、と朗らかな声に褒められた。
     下手をしたら輿ごと落ちていても不思議ではない、そんな狭くて急な崖も見える。ここまで自分を運んだ村人もかなり命懸けの道程だったのではないか。それは声も表情も固くなるはずだ。万一自分が逃げようなどと暴れでもしたら、御一行まるごと谷底へ道連れだったかもしれない。
     単に生贄を捧げに行くという気の重い儀式の所為ではなかったのだと今更思い知って背筋が凍った。見えない分体が振り回されるようで胸が悪くなるのも当然の悪路だった。今更ながら、供物にするためとはいえ無事に届けてもらえたことへの安堵と感謝にも似た気持ちが湧き起こる。
     崖から落ちて岩や輿に潰されて死ぬのは酷く苦しく恐ろしかっただろうし、獣に食われることもとりあえずなさそうだ。供物の割には扱いが良い。それはきっと死ぬのだと覚悟を決めていたとはいえ、今まさに死の恐怖をまざまざと突きつけられた子供にとっては十分過ぎるほどの幸運だった。



    「ほーい、お疲れさんじゃったのう! えい子にしててくれて助かったちや!」
     ひょいひょいと山道を歩いて、かなり登った。空気が薄い、という感覚を初めて味わった子供は途中から何やら息苦しくなった理由が分からずに困惑した。おかげで周囲を見回す余裕もなかったが、土の上や岩場の洞窟に放られるわけでもなく、きちんとした家屋の中だということは解った。
     玄関では草履を脱がせてくれたし、今も優しく下ろしてくれた目の前の青年は朗らかに笑っていて、それは間違いなく自分を安心させようとしてのことだと伝わってくる。
     今も褒めてくれるのは大泣きされたらどうしよう、という怯えの裏返しもあるだろう。村の大人達も子供の大泣きには手を焼いていたから、それくらいは想像できる。
     着物がいよいよ重くて、肩で息をしたら途端に青年はびくりと笑顔を硬直させた。
    「ど、どういた、なんぞ怖かったかの? それともどっか痛いか?」
     慌てて屈んで視線を合わせてくれる青年に大丈夫だと知らせたくて首を横に振ったらクラリときた。
    「お、おお ど、どうしたらええかの、わし、人の子のことはそれほど詳しゅうはないんじゃ……」
     多分顔色でも悪いんだろう。とりあえずこの窮屈でがっちり締め上げている着物を脱いで仕舞えばマシになると思って、でもそんなことを願って良いのか迷う。
     花嫁衣装は旦那様が解くものだ、と重々言い聞かせられてきたのだ。はしたないなんて気にする余裕はなくても、駄目だと言われたことを求める罪悪感はある。
    「お衣装、重い……」
     背に腹はかえられぬ、と怒られやしないか幾分小さな声で伝えれば、青年の眼はまたまんまるになった。
    「こりゃすまん! 気ぃの効かんこっちゃったのう」
     慌てて隣の部屋から幾らか物を持ってくると、さも申し訳なさそうに眉を下げた。ちくと失礼じゃ、と断った青年は真白な打掛を丁寧に外して衣紋掛けに預け、続いて複雑厳重見栄え良くと三拍子に結い上げられた飾り結びの帯を解いてくれた。肩にかかる重さと胴を締め上げる太い帯が無くなっただけで随分楽になる。はー、と長い吐息に、幾分ホッとした表情の青年と目が合った。
    「どうじゃろ、少しは楽かにゃあ? 髪も下ろしちゃるけんど、細いこと慣れんき、痛かったらすぐ言っとうせ」
     念入りに梳かれた後一部を高く結い上げ、櫛や簪で飾られた頭も重いことを解ってくれたのが嬉しくて小さく頷く。



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     ――というわけで、嫁入り(仮)した兼さんと旦那様(?)なむっちゃんの話です。
     本気で書きかけなのでこの先はまだ何もありません。
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