歌姫って誰のこと? 雨の降りしきる『エレジア』のコンサート会場の片隅で膝を抱えて時期に来る『終わり』に思いを馳せる。
「…私が新世界を創るんだ」
足元のカゴに詰めていたキノコに手を伸ばしてムシャムシャと口に入れては咀嚼して飲み込む。
ウタウタの実によって作られた心象世界では誰も彼もが歌に酔いしれ幸せそうに笑っていた。彼らを『新世界へ』誘うのが私の目的。
雨に濡れそぼった身体を抱き締めて空虚な笑みを浮かべる。膝に額を押し付けてただ『終わり』を待った。
その時だった、誰も居ないはずのエレジアに凛とした力強い声が響き渡った。
「アタシの歌を聞けっっ!!」
弾かれる様に顔を上げると断続的に振り続けている雨の空から巨大な鳥に乗った女性がこちらに近付いてくるのが見えた。
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