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    腐女/25↑/字書き/brmy:恋真・逢由/rnst:タキユー

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    (brmy/恋真)ビジカプの二人が、勇気を出して一歩先へ進む話。かっこいい真央くんはいません。

    誤字脱字あったすみません。

    #brmy腐
    #恋真

    cuddle with出逢った当初、綾戸恋のことを不思議な男だと思った。正確に何というのかは難しいけれど、『愛してほしいのに、自分からは人を愛さない』、ズル賢い男。人を愛せば、少なからず傷付くことも出てくるのが当たり前なのに、小さなかすり傷さえも恐れている怖がりな男。人から嫌われたくなくて、自然と器用に立ち回るのが上手くなってしまった寂しい男。恋自身、自分の心の奥底にある大切なものを分からずにいるような気がする。けれど、恋の中には確かに、誰にも触れさせない、鍵付きの小さな宝箱にでもしまってある“核”があるはずなのに。きっと死ぬまで、いや、死んでもなお、それを誰かに見せることは無いだろう。
    ――Aporiaの面々にも、そして僕にも。

    (んんっ……もう、朝?)
    恋の部屋に泊まった日は、大体僕の方が先に起きる。恋が先に起きていることはまず無い。
    昔流行った映画のリマスター版が昨日発売され、発売される少し前に『気になっている』と雑談の中で零した僕を、既に商品の予約を済ませていた恋が誘ってくれた。昨日は二人揃ってバー営業のホールとしてシフトが入っていて、そして二人揃って翌日はオフ。営業終了後にそのまま恋の家を訪れた。いつ来ても恋の部屋は綺麗で掃除が行き届いていて、明星の部屋のようにあれこれ詰まれている、なんて場所もない。生活感が感じられないのは、『依頼人との外泊』を了承している恋が、この部屋で過ごす時間が少ないからだろう。それ以外にも、恋には“一夜限りの女”がたくさんいるんだろうなと思う。恋はそういった話を何故か僕にはしたがらないから聞いたこと無いけれど。
    映画を観る前に交代でシャワーを浴び、恋はハイボール、僕はノンアルを飲みながら恋愛映画を静かに観ていて、それから……。
    (……いつ寝たんだっけ)
    寝起きのぼんやりとした頭でその後の行動を思い返す。恋の部屋に泊まる時、暗黙の了解で同じベッドで眠ることになっている。それは初めて泊まりに来た日からそうで、『自分がソファー、相手がベッド』の押し問答になった結果、恋が『なら一緒にベッドで寝よ』と切り出したのだ。今思え冗談だったのかもしれないが、その時の僕はどこか浮かれていて、自ら進んでベッドに潜り込んだ気がする。
    昨夜もそうだ。ベッドに入ってもなお、映画や小説のこと、代理の話で随分盛り上がって、そのまま糸が切れたようにそのまま二人共寝てしまったのだろう。
    (でも、楽しかった)
    恋と話すのは好きだ。話す速さも、トーンも、内容も、こちらが聞きやすくしてくれているから。
    (そんな恋に、女が惹かれるのは当たり前なんだよな)
    楽しかったから、まだ起きたくない。
    隣でまだ眠っている男を起こさぬよう、クイーンサイズのベッドの上でゆっくりと寝返りを打つと、きちんと糊のきいたシーツや掛け布団から清潔感のあるグリーン系の香りが仄かに薫った。
    既にこちら側を向きながら眠っていた恋は、いまだ規則正しい寝息を立て、瞼はしっかりと閉じていて、穏やかな表情で眠っている。そんな姿にほっと胸を撫で下ろした。
    眠っている時の恋は実年齢よりも少し幼く見える。瞼に掛かる前髪を払えば、いつも隠れている額が現れるからか、薄く唇が開いているからだろうか。どこか揺みたいな放っておけない無防備さもあって、そんな姿が少しだけ可愛いだなんて思う。
    (でも、ハマったら……元には戻れない)
    恋は甘えるのが上手だ。両手を広げて、いつでも飛び込んでおいで、と待ち構えているくせに、いざこちらが飛び込んでも抱き締めてもくれない。明星なら、これでもかというくらい、抱き締めて、抱き締めて、抱き締めて、明星の熱を心地好く感じるようになった頃に、急に突き放すんだろうなと思う。どっちにせよ、たちは悪い。
    本当は、“恋人代行”だってやる必要ないんじゃないかと思っている。“綾戸恋の恋人(仮)”なんて肩書きなんて僕には必要無いし、恋ならわざわざ実在する人間を使わずとも器用に立ち回れるんじゃないかなとも思う。その分、報酬は貰えるけれど、絶対に欲しいというわけじゃない。でも、『助けて』って言われたら、助けたくなる。言われなくても、助けてしまう。わざとらしく抱き締められれば、少し期待する。『真央じゃなきゃダメ』って。両手を広げたその中へ飛び込んでも、抱き締め返してもらえないと分かっていても。
    瞼、鼻筋、頬、唇。目の前にある整ったパーツを、触れるか触れないか曖昧な加減でゆっくりとなぞる。
    「僕は、いつまでお前の“恋人”でいたらいいの?」
    いつか恋は結婚するだろう。可愛い奥さんに可愛い子供、そんな幸せな家庭を築くはずだ。そうしたら、家庭を優先して、今の仕事だって辞めるだろう。Aporiaだけが僕らを繋いでいるのに、それが無くなってしまったら……僕は、その時何をしてる?
    柄にもなく女々しい感情がぐるぐると心を蝕む。――もう起きて、さっさと帰ろう。鬱々とした考えを振り切るように、勢いよく体を起こそうとしたその時。
    「……ずっとだよ」
    不意に隣から聞こえた声に、びくりと肩が跳ねる。そして、起こしかけていた体は隣の男によって、もう一度シーツへ沈められた。
    「……起きてたんだ」
    「真央が起きるちょっと前からね。それより、さっき言ったこと、何?」
    恋によってシーツに両手を縫い付けられ、押し倒されたまま告げられたその声は、怒っているのか、泣いているのか分からない、複雑そうな声色だった。
    「“俺の恋人”辞めたいなんて、マジで言ってんの?」
    「今は、そうじゃない。でも、いつかそんな日が来るかもって話で……、」
    「来ないよ、そんな日なんて」
    ――ずっと、一生無い。
    その自信はどこからくるのか見当もつかないが、恋ははっきりと強くそう言い放つ。いつもなら蜂蜜みたいに甘い瞳が、今は捕食者のごとくギラギラと鋭く僕を捉えていて、窓から差し込む温かな光は、覆いかぶさっている恋に遮られているせいで、僕の所まで届くことはない。この状況が怖い。怖くて、恋から目が離せない。
    「ぃ……やだ、」
    「……真央?」
    気付いたら、目尻から雫が伝っていた。伝った雫はぱたぱたと小さな音を立ててシーツに染みを作る。恋がこういうのを一番面倒だと思っていることも、困らせてしまうというのも頭では理解しているのに、滅多に流すことのない涙は止まることを知らない。一人で勝手に泣いている僕を見つめている表情はやっぱり困っていて、眉間に皺を寄せながら、ゆっくりと僕の上から身を引いた。
    「そんなに嫌? 俺の“恋人代行”続けるの」
    「ちがうっ、そうじゃ……ない」
    「愛想つかしちゃった?」
    「それも、ちがう」
    「じゃあ、何 ?」
    身を起こした僕に向かって、そっと伸びてきた手が頬に触れた後、目尻にまだ残っている雫を優しく拭う。そういうとこだよ、って言ってやりたいのに言葉が詰まって小さな嗚咽ばかりが漏れていった。
    「真央、」
    街が動きだしている外の音が微かに聞こえる寝室で、恋が徐に口を開く。重たくなっている瞼を持ち上げれば、恋はこちらに向かって腕を広げていた。
    つくづく酷いヤツだ。どうせ抱き締め返してくれないくせに、と思いながらも、恐る恐る腕を持ち上げる。すると、待ちきれなかったのか恋は僕の腕を掴み、少しだけ強引に引き寄せて胸の中に収めるとぎゅっと抱き締めた。
    予想もしていなかった恋の行動に心臓が激しく痛いくらいに鳴り、血液がぶわりと全身を一気に巡っていく。まるで子供をあやすようにぽんぽんと背中を優しく叩かれながら、どうしていいのか分からずに顔を埋めた皺の寄った白いTシャツからは、いつもの恋の匂いがして、しばらくすると心は落ち着いていった。
    「真央にはいつも助けられてばっかりだよね。報酬も出してるとはいえ、自分勝手に使ってばっかりでさ」
    耳元に寄せられた恋の声はいつもよりも穏やかで優しい。けれど、何かを決意したような清々しさもあるのは珍しいなと思った。
    「いつか真央に見放されるかもしれないって思ったら、怖くて、寂しくて。昔に戻れたらって思ったこともあったけど、そんなの尚更無理だった。だって真央と出逢ってなかったら、俺はもっと荒んでただろうし、ろくでなしだったと思うもん」
    そっと胸元から頭を離し、ひとつの物語でも聞かせているような口振りで語る恋を見上げる。そこにギラついた鋭さはもう無くて、また蜂蜜のようにとろけた瞳に僕を映す。
    「甘やかしてほしいのと優しくされたいってのは、色んな所で色んな人に言ってきたけど、真央の前ではもっと欲張りになっちゃうって知ってた? 本当は明星の部屋に一人で行ってほしくないし、揺ばっかり可愛がるし」
    ――真央は俺だけ見ててほしい。
    ――もっと俺のことを知ってほしい。
    ――俺に対して欲張ってほしい。
    『無理だと分かっているけど、真央がしてくれたら嬉しい』と、並べられた恋の“本音”は胸焼けしそうなほど甘くて重たい。けれど、恋はけらけらと笑った後、
    「この歳にもなってめちゃくちゃ嫉妬してるのよ、俺」
    僕を抱き締め直すとそう告げる。言葉こそ軽いけれど、弾むように、幸せそうに僕に言う恋が可愛くて、愛おしくて。細い体格のわりにがっしりとした背中に腕を回し、そっと抱き締め返すと、優しい唇が髪に落とされる。
    「愛してるよ、真央」
    その言葉は、そっと贈られた。傷付かないよう、傷付けないように恋が守ってきた“核”。今、僕だけがそれに触れることを許された。
    頭上で囁かれた告白にきゅうっと胸が締め付けられて、少し痛い。でも、嬉しくてまた泣きそうになってしまった。
    降ろしていた腰を上げて膝立ちになると、いつも僕を振り回すその口にキスを贈る。僕も、今伝えたい。
    ――愛してるよ。
    首に腕を回して抱き締めたら、恋は嬉しそうに抱き締め返してくれた。
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