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    azusa_n

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    azusa_n

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    1個前のモクルク未満の続きだけど単品で読める。
    鮭とば、おいしいよね。
    ニンジャジャンより構ってほしいモクマさんの話。エドルク親子概念もちょびっと。

    #モクルク

    愛しのどぶろくちゃんとつまみを抱えてリビングに来ると、ルークがテレビに魅入っていた。
    ニンジャジャンのアニメ版だ。小包とパッケージが置いてあるから、新しく買ったものだろう。

    『ふはははは、今日はこの団子を奪ってやるぞ』
    「ああ、そんな。団子入りの箱を足蹴にするなんて…?!」
    ソファーでぐっと手を握って成り行きを見守っている。
    隣に座ってみたけど、目立った反応はない。
    進入経路を考える時みたいに集中しているようだ。

    「やった! ニンジャジャンが来た!」
    画面の中のヒーローの一挙一動にハラハラしたり、喜んだりととても忙しい。
    それを肴に酒が進む。これはこれで面白いかもしれない。

    「な、…そんな……」
    ニンジャジャンの武器が折れてしまった。

    鮭とばスライスの皮を剥いて、ぽかんと口を開けてるところに入れてやる。
    無意識に受け入れてしまって、暫く咀嚼して、漸く思うところがあったのかこっちを見た。
    「ルーク、楽しそうだねぇ」
    「モクマさん、ありがとうございます。 …、ん。おいしいです、これ。」
    「はは、それは良かっ」
    「っ!ああ、ピーチクが! 稲籾を拾うみたいに折れた鎌の欠片を集めて…!!」

    食べながら返事をして、一瞬こっちに視線が向いたと思ったらまたテレビに意識を戻してしまった。残念。鮭とばの力じゃニンジャジャンには勝てないか。

    しばらくして、衝撃的な展開になったのか、ぽかんと口を開けた。更に鮭とばをもう一切れ口に入れてみる。

    もぐもぐと咀嚼するのを見るのは小動物に餌付けしている気分に近いかもしれない。ちょっと楽しくなってきた。

    画面の向こうでは強化された武器でワルザムライを倒したようだ。
    視線は画面に向けたまま、手だけテーブルで何かを探っている。たぶん、飲み物。鮭とばは塩辛くて乾燥してるもんだから喉が渇く。

    テーブルの上のコップはもう空になってた。代わりに半分くらい中身を入れたおちょこを渡してみた。
    ルークは意識半分はテレビに向けたまま、きゅーっと飲み干す。
    「いい飲みっぷりだねぇ」

    まばたき三回。けほ、と軽く咳き込んだ。
    「…なんですか、これ」
    「これ。喉渇いてそうだったからさ。」
    どぶろくの瓶を掲げてみせる。
    「お酒はむしろ渇くのでは」
    「でも合うでしょ、これと」

    額に指を当てて悩みだした。
    「とってもおいしかった気はするのですが、記憶が曖昧です。ごめんなさい…」
    うん、脳のリソースだいたいニンジャジャンに向かってたもんね。
    「それじゃ、おかわりいかが?」
    ちら、と時計やテレビに順に視線を向け、それからこっちに向き直った。
    「それじゃあ、少しだけ。」

    酒を注ぎながら耳に入るのは、仕事柄流石に覚えたエンディングテーマのサビ。
    視線を奪えたと思ったら、なるほど。本編終わったところだったか。

    ルークがリモコンを操作して映像を消したタイミングで酒と鮭とばを渡した。

    「これ、さっきのおいしいやつですね。塩気がすごいですけど、魚の旨味がぎゅって詰まってて、ずっと噛んでられます」

    「うんうん。『鮭とば』っちゅーの。そこで一回お酒いってみよっか」
    「………。 …え、すごい。更に旨味が増えました!魚の臭みだったのが美味しさになって……こんなの、もう、あまりにもうまーい!」
    「そうでしょそうでしょ」

    おちょこの中身をちびちびと、舐める程度ずつ飲みながら鮭とばの端を齧っている。

    「しかしルークさんや、何かわからんものなんでも口に入れちゃあかんよ」
    「……外でなら気をつけてますよ」
    「ほんとかなぁ。俺に気付いたのも随分時間かかったし」
    「…それは、ちょっとお恥ずかしい話ですが、モクマさんなら許してくれるかなって甘えもあったと言いますか」
    「ほう?」
    ルークの前では優しい先輩をやってるつもりはあるが、舐められるのはちっとばかり困るかな。
    「……なんか安心しちゃうんですよね、モクマさんといると。」
    照れたような、独り言のような呟きには嘘は感じられなかった。
    「えー、こんな危険な香りのするイイ男そういないのにぃ」
    「モクマさんは、包容力があるって言うやつですよ。モクマさんは素敵な男性です。」
    「んもう、調子いいんだから」
    おどけて頬をつついてみたら、まっすぐな口説き文句が返ってきた。

    「小さい頃に、父と食事中にテレビ見てて、口の中にナゲット入れられた事思い出しました。マスタード付けられてて、辛くて、びっくりして。」
    「そっか。親父さんお茶目なとこあったんだねぇ。」
    「…それで、暫くは気をつけてたんですけど、それからもたまにマスタード爆弾食らってたなぁって。」
    「はは、マスタード食わされるって分かってるなら食べなきゃいいのに」
    「だいたいはおいしいものくれたんですよ。たまーにからかわれただけで」

    「ほい、ルーク」
    手元を隠して口元に持って行く。鮭とばの匂いで口を開けたところで持ってたものを入れる。
    暫く咀嚼して、頭に疑問符を浮かべた。
    「……ん? んん?」
    その後も暫く頑張ってはいたものの、噛み切れる気配はない。
    そりゃそうだ。鮭とばの皮だもの。

    「ぷふ。お前さん、このタイミングで騙されんのは流石に人がよすぎるだろ。」
    「うう…。自分でも思います…。」
    しょんぼりして、ちょっと気恥ずかしそうで。

    「でもな、ルーク。
    こいつは生じゃ噛みきれんが、炙ると最高にうまい。」
    むしった鮭皮を摘まんでみせる。
    まだ口の中をもごもごさせていたルークが訝しそうにみていた。

    10分後。

    「お茶漬け、あまりにもうまーい!出汁でごはんがするする進むのに鮭とばの皮がパリッとして、磯の香りが広がって!」

    底に梅干しが入ってるのは内緒だ。
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