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    いなばリチウム

    @inaba_hondego

    小説メイン
    刀:主へし、主刀、刀さに♂
    mhyk:フィガ晶♂
    文アル:はるだざ、菊芥、司♂秋
    文スト:織太

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    いなばリチウム

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    12/18「またとない遺志に告ぐ」展示
    北時代のフィガロ信者魔法使いが石になる話。
    フィガロに自分の石食べて欲しい信者絶対いるよね、と友達と盛り上がったのが元
    モブ信者視点。CP要素なし。
    イベントお疲れ様でした!アフター用に全体公開にしました。

    石の話 嗚呼、偉大なる魔法使いフィガロ様。あの御方が我らの前に姿を見せなくなってもう何十年経つだろうか。噂によると一年に一度、限られた場所に限られた時間だけお姿をお見せになるということだったがあの御方の高貴なる御姿を見られるのはやはり限られた者達だけだった。魔力が乏しく、かと言って人には紛れられず、魔法使いとも慣れ合えず、ただただあの御方への憧れと崇拝だけでここ数年生き延びてきただけの自分にはそんな伝手があるわけもなく、けれども残った寿命もあと僅かというところで幸運なことにあの方が暮らすという南の村に辿り着くことができたのだった。
     かつてその強大な力を征服の為に振るった方がこんな辺鄙な村に、と疑問に感じたが、すぐに首を振って疑問ごと浅ましい思いを振り払った。あの御方の爪の先程の魔力しか持たない自分ごときがどうしてその行動を疑問に思うなどしたのだろう。あの御方の仰ることなされること全て、あの御方にしか理解できない意味や思いが込められているのは分かり切っているのに。余計なことを考えるとただでさえ残り少ない寿命を無駄にすり減らしてしまう。目的はただ一つ。あの御方の御傍にいられず、その尊き行いを人の噂でしか知ることのできない自分には贅沢すぎる目的であり、願いでもあった。あの御方の一部になりたい。こんな自分でも多少の魔力は残っているだろう。石になってしまうのは恐ろしいことだが、それよりも恐ろしいのは、他の見ず知らずの魔法使いの肥やしになってしまうことだった。どうせ糧になるのなら、フィガロ様の糧になりたい。目の前に魔法使いの石が転がっていたら、あの御方はどうするだろうか。どうか、どうか糧にして欲しい。その御手で石になった俺をつまみ上げ、眺め、なんと弱い魔法使いの死体だと嘲笑い、気紛れに唇を開けて下されば俺は、そこで初めて、


    《ポッシデオ》


     診療所の裏に転がっていた石は、呪文と同時に跡形もなく消え去った。
    「参ったなあ。最近多いんだよね」
     フィガロの足元には大小様々な形の石が転がっている。数日前に見回った時より明らかに増えているそれに溜息をついた。
    「敷石にもならないし、ねえ」
     急に話を振られて、レノは何とも言えない表情を浮かべている。裏庭に見かけない石がごろごろ転がっててさ、子供たちが躓いちゃったら大変でしょう、と言われて手伝いに来たが、石、が魔法使いの慣れの果てだとは聞いていない。冗談だよ、とフィガロは笑った。
    「石、を、集めれば良いんですよね」
    「そう、まとまったら俺の方で処理するから」
    「……」
    「何?」
    「いえ……」
     遠慮しているというより、どう聞くか言葉を整理しかねているような沈黙だった。フィガロは「ああ」とその問いを予想して答える。
    「食べないよ。どこの誰か分からない、得体の知れない石なんてさ」
    「……なるほど?」
     分かったような分からないような、それでもこくりと頷いて、レノは作業に戻る。
    「昔もこんなことがあったなあ……遊びに来たアーサーが、『きれいないしがおちてました』ってオズに見せちゃって、大変だったよ」
     レノが返事をしなくても、フィガロは懐かしいと笑いながら続ける。
    「『捨てろ』って怖い顔してさ、庭を吹き飛ばそうとするもんだからアーサーはびっくりして泣き出すし、何でか俺がスノウ様とホワイト様にめちゃくちゃ怒られるし。まあ確かに庭が魔法使いの死体だらけっていうのは、良くないよね」
    「死体だらけ……」
    「そうだろう?」
     レノが庭に散らばっている石を集め、フィガロが呪文を唱えて消す。それを繰り返して、庭はようやく煌めくものがなくなりつつあった。
    「全く、人の庭先で死なないで欲しいもんだよ。……これで最後かな?」
     くすんだ色のマナ石は、そうしてフィガロに触れられることなく、呪文と共に消え失せた。


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    いなばリチウム

    TRAININGhttps://poipiku.com/594323/10668650.html
    これの続き。騙されやすい審神者と近侍の長谷部の話。
    だまされやすい審神者の話2 疎遠になっても連絡をとりやすい、というタイプの人間がいる。

     それがいいことなのか、はたまたその逆であるなのかはさておき、長谷部の主がそうだった。学校を卒業し、現世を離れてから長いが、それでも時折同窓会やちょっとした食事会の誘いがあるという。ほとんどは審神者業の方が忙しく、都合がつかないことが多いけれど。今回はどうにか参加できそうだ、と長谷部に嬉しそうに話した。
     もちろん審神者一人で外出する許可は下りないので、長谷部が護衛として同行することになる。道すがら、審神者は饒舌に昔話をした。学生の頃は内気であまり友人がいなかったこと、大人しい自分に声をかけてくれたクラスメイトが数人いて、なんとなく共に行動するようになったこと。卒業する時に連絡先を交換したものの、忙しさもありお互いにあまり連絡はしていなかったこと。それでも年に一度は同窓会や、軽く食事でもしないかという誘いがあること。世話になっている上司を紹介したいと何度か打診され、気恥ずかしさはあったものの、紹介したいと思ってもらえることは嬉しかったこと。今回やっと予定が合い、旧友とその上司に会えること。
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