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    いなばリチウム

    @inaba_hondego

    小説メイン
    刀:主へし、主刀、刀さに♂
    mhyk:フィガ晶♂
    文アル:はるだざ、菊芥、司♂秋
    文スト:織太

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    いなばリチウム

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    https://twitter.com/mob__178/status/1529656567041097728?s=20&t=86U4h6B8jjQbrlXR57UpNA
    このへんのやつ消化
    まだデキてはいないけど主肥

    実質舌打ちもファンサみたいなものだよね それはもう、癖みたいなものだった。
     度々指摘されてはいたけれど、政府所属で先行調査員をやっていた頃も、この本丸にきてからも、苛立つとつい出てしまう癖。本丸に来てからはむしろ増えたくらいだ。この場所では、人斬りの刀である肥前にはどうにもやりにくいことばかりやらされている気がしてならない。

    「ちっ」

     またやっちまった、とはいつも思っていた。
     同室の刀の前であれば「おやおや」「まあた悪い癖が出ちゅう」とは言われるものの強く咎められることはない。初期刀兼近侍あたりだともう少しうるさく、「何だいその態度は」などと眉を顰められるが、それで終わりだ。多分、肥前の苛立ちを多少なりとも理解しているのと、この本丸の主である審神者の目がなければ、窘めこそすれ、矯正しようとまでは思わないのだろう。つまり、なんだかんだと肥前の癖は直ることなく、とうとう目の前にいる審神者に対しても出るようになってしまったわけだが。
     出てしまったものはしょうがない。咎められるかと思いきや、顔を上げると、ぱちぱちと瞬きする審神者と目が合った。
    「今、投げキッスした?」
    「は?」
     言葉の意味を理解するのに時間がかかった。審神者は頬をだらしなく緩ませてにやけている。
    「ファンサってやつ? 肥前もそういうのしてくれるんだね」
    「はあ?」
     二回目の怪訝な声が出て、頭がようやく言葉の意味を理解する。投げキッス。ファンサ。そういったものを得意とする本丸が存在すると聞いたことがある。
    「でもした瞬間見損ねたな。もう一回!」
    「しねえよ!」
     思わず言い返してから、そもそも、ともう一度声を張った。
    「なげきっすもふぁんさもしてねえ!」
     審神者は「またまたあ」とへらへら笑っていた。


     癖なので、すぐに直るものでもない。その上、審神者は肥前に向いていないことばかり頼んでくるのでつい舌打ちする機会も多いのだ。
    「ちっ」
     あ、と思うともう審神者のにやけ顔が視界に入って心底うんざりする。
    「投げキッスサンキュー」
     この審神者はポジティブなのか何なのか、もう幾度となく肥前の舌打ちを正面から食らっているはずなのに、その度笑顔を返してきた。肥前もその度に訂正する。
    「してねえよ」
     審神者は耳に入らなかったかのようににこにこしている。
    「ファンサうれしいなあ」
    「してねえんだって」
    「でもまた見逃したから、モーション付きでもう一回!」
    「してねえって言ってんだろ!」
     思わず強めに怒鳴ると、審神者は「ケチ」と拗ねた。


     そんなことが続き、部屋でつい「なんなんだあいつ」と愚痴ると、陸奥守は声をあげて笑った。
    「大俱利伽羅んことを思い出すのう」
    「ああ?」
    「おんしみたいに舌打ちして、主に『小鳥のさえずりが聞こえたな~』言われちょった。さすがの大俱利伽羅も、それからはいっくら気の進まんこと頼まれても、黙ってやり過ごしてたのう」
    「……ちっ」
    「おお、投げキッスじゃ」
    「やめろ……」
     散々審神者を怒鳴ってきた後なのでもう声を張る気力もない。
    「ふむ」
     黙り込んで長いこと手元を見ていたので聞いていないと思っていた南海が、手にしていた電子端末の画面をこちらに向けた。
    「投げキッスというのは、これのことかね」
    「……なんだこれ」
    「おお、らいぶ、っちゅうやつじゃな。篭手切に見してもろうたことがある」
    「そう、ふぁんさ、が何か僕も気になってね。詳しそうだったから尋ねたのだが、丁寧に参考映像まで貰ったよ」
     映し出された映像は、噂には聞いていた本丸のものだ。耳馴染みのない音楽に合わせて踊っていた一振りがこちら側、カメラに気付くと、器用に片目を瞑り、口元に手を当てると、「ちゅっ」というリップ音と共に指先をこちらに向けた。確かに、舌打ちに聞こえないこともないが。
    「……全然違うだろ」
     映像の中のその刀は楽しそうに歌い、踊り、カメラに向かって手を振ってまた笑う。よくやるよ、と思う反面、眩しくもある。そうなりたいとは思わないが、戦場以外に活躍の場所があり、それを心から楽しんでいるらしい刀剣男士達を、不思議な気持ちで眺めた。


     癖は直らないまま、今日も仕方なく審神者の部屋を訪れている。必要以上に顔を合わせたくはなかったが、台所でつまみ食いを見つかり、見逃される代わりに審神者の昼食を運ぶように頼まれてしまったのだった。渡された盆には握り飯が五つ載っている。多いな、と思うと同時に見透かされたように「二つまでなら君も食べていいよ」と言われたので、廊下を来る途中で既に一つ腹に納めた後だ。
    「おい、めしだってよ」
    「あー、ありがと。そこ置いといて……おっかしいな……ここにしまっといたのに……」
     審神者は食事を摂りに部屋から出る暇もないらしく、机には書類が散乱したままで、本人は本棚をひっかきまわしている。書類を適当に端へ寄せて盆を置く。審神者の視線がこちらに向いていなかったのもあって、肥前はふと、口元に手を当てた。指先を口元から、前へ。ちゅ、と舌を鳴らしてみる。意味があったわけではなかった。意識してやってみたところで、やはり自分がやるのでは舌打ち以外の何でもないだろう、と思う。
    (……馬鹿らしい)
     盆の上から二つ目の握り飯を取ると、あ、と口を開けたところで、いつの間にかこちらを凝視していた審神者と目が合う。
    「……んだよ。これはおれのだからな」
    「ち、ちがくて」
     審神者の声は震えていた。
    「いま、いま……ガチで投げキッスしたよね???」
    「は、はあ?」
     してない、と言おうとして、けれど実際してしまった後なので、とりあえず握り飯を齧り、口を動かして時間を稼ぐ。しかしその間に審神者は本棚から出しかけの資料やらファイルやらが落ちるのも構わず駆け寄ってきて、肥前の肩を掴んだ。
    「今の! マジの投げキッスじゃん!! えっ? なんで?」
    「ち、ちげえよ!」
    「嘘だー! 俺見たもん!! 今のは絶対投げキッスだもん!!!」
    「うるせえ!!!!……おい待てよ」
     手に力が入り、握り飯がひしゃげる。零れそうになった一角を齧り、もぐもぐと口を動かす間にも審神者は肥前の肩をしっかり掴んだままだ。
    「……舌打ちだって、分かってたってことかよ」
    「え?」
     途端に、やべ、みたいな顔をされて、露骨に目を逸らされる。
    「じゃあ、今まで、わざと……」
    「……だってさあ」
     じろりと睨むと、肩を竦めた審神者は肥前から手を離して言った。
    「肥前、舌打ちしたとき、しまった、って顔したじゃん?」
    「……」
    「俺は別に気にしてないのに、肥前が気にしてるのはなんか可哀想だなと思って、試しに投げキッスってことにしてみたんだけど」
    「してみるんじゃねえよ」
    「そしたら、言い返してきて、前より俺に構ってくれるようになったじゃん」
    「構ってるわけじゃ……」
     しかし、事実その通りだった。必要以上に関わりを持たないようにしていたのに、投げキッスだのファンサだのと言うからそれを逐一訂正する分、言葉を交わす回数は増えている。語気はどんどん弱まり、とりあえず手の中に残っていた握り飯を三口で片付けた。食べている間はしゃべらなくて済む。
    「俺は肥前と、もう少し仲良くなりたかっただけだよ」
    「……」
    「それにまあ、舌打ちも一部の業界ではご褒美みたいなもんだからさ。そういう意味じゃー―」
    「……」
     口の中のものを全て飲み込んでしまっても、返事をする気になれなかった。



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    いなばリチウム

    TRAININGhttps://poipiku.com/594323/10668650.html
    これの続き。騙されやすい審神者と近侍の長谷部の話。
    だまされやすい審神者の話2 疎遠になっても連絡をとりやすい、というタイプの人間がいる。

     それがいいことなのか、はたまたその逆であるなのかはさておき、長谷部の主がそうだった。学校を卒業し、現世を離れてから長いが、それでも時折同窓会やちょっとした食事会の誘いがあるという。ほとんどは審神者業の方が忙しく、都合がつかないことが多いけれど。今回はどうにか参加できそうだ、と長谷部に嬉しそうに話した。
     もちろん審神者一人で外出する許可は下りないので、長谷部が護衛として同行することになる。道すがら、審神者は饒舌に昔話をした。学生の頃は内気であまり友人がいなかったこと、大人しい自分に声をかけてくれたクラスメイトが数人いて、なんとなく共に行動するようになったこと。卒業する時に連絡先を交換したものの、忙しさもありお互いにあまり連絡はしていなかったこと。それでも年に一度は同窓会や、軽く食事でもしないかという誘いがあること。世話になっている上司を紹介したいと何度か打診され、気恥ずかしさはあったものの、紹介したいと思ってもらえることは嬉しかったこと。今回やっと予定が合い、旧友とその上司に会えること。
    1820

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    「はい、歳時記に記載がありましたので。もっとも、実際にこの目で見たことはありませんが」
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     さすがに刀剣男士にとってはなじみのない行事らしい。本丸でも特にその日を祝う習慣はないから、何をするかもよくは知らないだろう。
     これならば、あいにくの日取りを気にすることなくイレギュラーな仕事を頼めそうだ。
    「えぇとね、五月雨くん。実はその24日と25日なんだけど、ちょっと泊まりがけで政府に顔を出さないといけなくなってしまったんだ。近侍のあなたにも、いっしょに来てもらうことになるのだけど」
     なぜこんな日に本丸を離れる用事が入るのかとこんのすけに文句を言ってみたものの、12月も下旬となれば年越しも間近、月末と年末が重なって忙しくなるのはしょうがないと押し切られてしまった。
     この日程で出張が入って、しかも現地に同行してくれだなんて、人間の恋びとが相手なら申し訳なくてとても切り出せないところなのだが。
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     現代のイベント 1136

    Norskskogkatta

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    奥歯からぎり、と音がなって気づけばうさぎをひっ掴んで投げようとしていた。
    「こら! ものは大事に扱いなさい」
    「あんたは俺を蔑ろにするのにか!」
    あんたがそれを言うのかとそのまま問い詰めたかった。けれどこれ以上なにか不興をかって遠ざけられるのは嫌で唇を噛む。
    ぽかんと間抜けな表情をする主にやり場のない衝動が綿を握りしめさせた。
    俺が必要以上な会話を好まないのは主も知っているし無理に話そうと 1308

    Norskskogkatta

    PAST主般/さにはにゃ(男審神者×大般若)
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀

    主に可愛いと言わせたくてうさぎを買ってきたはんにゃさん
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    主に見せたのは最近巷で話題になっている俺たち刀剣男士をモチーフにしたうさぎのぬいぐるみだ。といっても髪色と同じ毛皮に戦装束の一部を身につけているだけだが、これがなかなか審神者の間で人気らしい。
    「うさぎか?」
    「そうそう、俺のモチーフなんだぜ」
    うちの主は流行に疎い男だ。知らないものを見るときの癖で眉間にシワを寄せている。やめなって言ってるんだがどうにも治らないし、自分でも自覚してるらく指摘するとむっつりと不機嫌になる。そこがこの男の可愛いところでもあるがそれを口にすると似合わんと言ってさらにシワが深くなるからあまり言わないようにはしてる。厳しい顔も好きだがね。
    そんな主だから普段から睦言めいたものはなかなか頂けなくて少しばかりつまらない。そこでちょっとこのうさぎを使って可愛いとか言わせてみようと思ったわけさ。
    主に手渡すと胴を両手で持ちながらしげしげと眺めている。耳を触ったり目元の装飾をいじったり。予想よりだいぶ興味を示してるなぁと見ているときだった。
    「ああ、可愛いな」
    主が力を抜くように息を吐く。
    あ、これは思ったより面白くないかもしれない。そ 874

    Norskskogkatta

    PAST主肥/さにひぜ(男審神者×肥前)
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀

    おじさん審神者がうさぎのぬいぐるみに向かって好きっていってるのを目撃した肥前
    とうとう買ってしまった。刀剣男士をイメージして作られているといううさぎのぬいぐるみの、恋仲と同じ濃茶色に鮮やかな赤色が入った毛並みのものが手の中にある。
    「ううん、この年で買うにはいささか可愛すぎるが……」
    どうして手にしたかというと、恋仲になってからきちんと好意を伝えることが気恥ずかしくておろそかになっていやしないか不安になったのだ。親子ほども年が離れて見える彼に好きだというのがどうしてもためらわれてしまって、それではいけないとその練習のために買った。
    「いつまでもうだうだしてても仕方ない」
    意を決してうさぎに向かって好きだよという傍から見れば恥ずかしい練習をしていると、がたんと背後で音がした。振り返ると目を見開いた肥前くんがいた。
    「……邪魔したな」
    「ま、待っておくれ!」
    肥前くんに見られてしまった。くるっと回れ右して去って行こうとする赤いパーカーの腕をとっさに掴んで引き寄せようとした。けれども彼の脚はその場に根が張ったようにピクリとも動かない。
    「なんだよ。人斬りの刀には飽きたんだろ。その畜生とよろしくやってれば良い」
    「うっ……いや、でもこれはちがうんだよ」
    「何が違うってん 1061

    Norskskogkatta

    PAST主こりゅ/さにこりゅ
    リクエスト企画で書いたもの
    小竜が気になり出す主とそれに気づく小竜
    夏から始まる


    燦々と輝く太陽が真上に陣取っているせいで首に巻いたタオルがすでにびっしょりと濡れている。襟足から汗がしたたる感覚にため息が出た。
    今は本丸の広い畑を今日の畑当番と一緒にいじっている。燭台切ことみっちゃんはお昼ご飯の支度があるから先に本丸にもどっていって、今はもう一振りと片付けに精を出しながらぼんやり考えていたことが口をついた。
    「小竜って畑仕事嫌がらないんだね」
    長船派のジャージに戦装束のときのように大きなマントを纏った姿に畑仕事を嫌がらない小竜に意外だなと思う。大抵の刀には自分たちの仕事じゃないと不評な畑仕事だけど小竜からは馬当番ほど文句らしき物を言われた記憶が無い。
    「いやいや、これで実は農家にあったこともあるんだよ?」
    これなんかよくできてると思うよ、と野菜を差し出される。まっかなトマトだ。つやつやして太陽の光を反射するくらい身がぱんぱんにはっている。一口囓るとじゅわっとしたたる果汁は酸味と甘さと、ちょっとの青臭さがあって我こそはトマトである!と言っていそうだ。
    「おいしい!」
    「だろうっ!」
    手の中の赤い実と同じくらい弾けた笑顔にとすっと胸に何かが刺さった気が 3868

    Norskskogkatta

    PAST主くり
    鍛刀下手な審神者が戦力増強のために二振り目の大倶利伽羅を顕現してからはじまる主をめぐる極と特の大倶利伽羅サンド
    大倶利伽羅さんどいっち?!


     どうもこんにちは!しがないいっぱしの審神者です!といっても霊力はよく言って中の下くらいで諸先輩方に追いつけるようにひたすら地道に頑張る毎日だ。こんな頼りがいのない自分だが自慢できることがひとつだけある。
     それは大倶利伽羅が恋びとだと言うこと!めっちゃ可愛い!
     最初はなれ合うつもりはないとか命令には及ばないとか言ってて何だこいつとっつきにくい!と思っていったのにいつしか目で追うようになっていた。
     観察していれば目つきは鋭い割に本丸内では穏やかな顔つきだし、内番とかは文句を言いながらもしっかり終わらせる。なにより伊達組と呼ばれる顔見知りの刀たちに構われまくっていることから根がとてもいい奴だってことはすぐわかった。第一印象が悪いだけで大分損しているんじゃないかな。
     好きだなって自覚してからはひたすら押した。押しまくって避けられるなんて失敗をしながらなんとか晴れて恋仲になれた。
    それからずいぶんたつけど日に日に可愛いという感情があふれてとまらない。
     そんな日々のなかで大倶利伽羅は修行に出てさらに強く格好良くなって帰ってきた。何より審神者であるオレに信 4684

    Norskskogkatta

    PASTさにちょも

    審神者の疲労具合を察知して膝枕してくれるちょもさん
    飄々としてい人を食ったような言動をする。この本丸の審神者は言ってしまえば善人とは言えない性格だった。
    「小鳥、少しいいか」
    「なに」
     端末から目を離さず返事をする審神者に仕方が無いと肩をすくめ、山鳥毛は強硬手段に出ることにした。
    「うお!?」
     抱き寄せ、畳の上に投げ出した太股の上に審神者の頭をのせる。ポカリと口を開けて間抜け面をさらす様に珍しさを感じ、少しの優越感に浸る。
    「顔色が悪い。少し休んだ方がいいと思うぞ」
    「……今まで誰にも気づかれなかったんだが」
     そうだろうなと知らずうちにため息が出た。
     山鳥毛がこの本丸にやってくるまで近侍は持ち回りでこなし、新入りが来れば教育期間として一定期間近侍を務める。だからこそほとんどのものが端末の取り扱いなどに不自由はしていないのだが、そのかわりに審神者の体調の変化に気づけるものは少ない。
    「長く見ていれば小鳥の疲労具合なども見抜けるようにはなるさ」 
     サングラスを外しささやくと、観念したように長く息を吐き出した審神者がぐりぐりと後頭部を太股に押しつける。こそばゆい思いをしながらも動かずに観察すると、審神者の眉間に皺が寄っている。
    「や 1357

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり

    おじさま審神者と猫耳尻尾が生えた大倶利伽羅のいちゃいちゃ
    猫の日にかいたもの
    大倶利伽羅が猫になった。
    完璧な猫ではなく、耳と尾だけを後付けしたような姿である。朝一番にその姿を見た審神者は不覚にも可愛らしいと思ってしまったのだった。

    一日も終わり、ようやっと二人の時間となった審神者の寝室。
    むっすりと感情をあらわにしているのが珍しい。苛立たしげにシーツをたたきつける濃い毛色の尾がさらに彼の不機嫌さを示しているが、どうにも異常事態だというのに微笑ましく思ってしまう。

    「……おい、いつまで笑ってる」
    「わらってないですよ」

    じろりと刺すような視線が飛んできて、あわてて体の前で手を振ってみるがどうだか、と吐き捨てられてそっぽを向かれてしまった。これは本格的に臍を曲げられてしまう前に対処をしなければならないな、と審神者は眉を下げた。
    といっても、不具合を報告した政府からは、毎年この日によくあるバグだからと真面目に取り合ってはもらえなかった。回答としては次の日になれば自然と治っているというなんとも根拠のないもので、不安になった審神者は手当たり次第に連絡の付く仲間達に聞いてみた。しかし彼ら、彼女らからの返事も政府からの回答と似たり寄ったりで心配するほどではないと言われ 2216