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    いなばリチウム

    @inaba_hondego

    小説メイン
    刀:主へし、主刀、刀さに♂
    mhyk:フィガ晶♂
    文アル:はるだざ、菊芥、司♂秋
    文スト:織太

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    いなばリチウム

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    情けない攻めはかわいいねお題ガチャより
    最高なので皆推しCPで是非
    https://odaibako.net/gacha/1462?share=tw
    >長谷部のことがずっと昔から大好きなので今が信じられなくなるも、そのたびに長谷部から熱いキスをかまされて”理解”する審神者
    >長谷部からどんなときでも何をしてても生まれ変わっても見つけると宣言されて抱いて……となる審神者(もちろん抱かれるのは長谷部)

    #主へし
    master

    情けない攻めの審神者×長谷部シリーズ②「……信じられないなあ」
     思わず零れた、それは独り言だった。けれど聞きつけた長谷部が顔を上げて、「何がですか?」と首を傾げたので、俺は他意なく、昔のことを思い出して、と話す。
    「きみが、俺のことを好きだってことが。……あっ、長谷部を信じてないとかそういう話じゃなくてね。この状況が、嬉しすぎて信じられないというか……」
     思い出せば赤面ものだけど、長谷部に好きだと伝えた時のことを思い出す。告白の目的は、付き合おうとかそういう感じではなく、俺は想いを告げることで長谷部を遠ざけようとしていた。主である俺が臣下である長谷部のことを好きになってしまったという告白で、引かれるとか蔑まれるとかは想定していても、まさか「俺もあなたのことが好きです」なんて言われた上に行動で示されるなんて夢にも思わなかったのだ。俺がきみを好きで、きみも俺のことを好きだなんて、すごくすごく、信じられないくらいの幸福だ。毎日目覚める度に、俺はめちゃくちゃ自分に都合の良い夢を見ていたのでは? もしくは妄想では? と考え込んでしまう。長谷部を信じていないということでは断じてない。言葉で伝えあって、唇を重ねて、何ならもっと先までしているのに、実感を上回る幸福量に、なんというか、完全にキャパオーバーになっているのだと思う。
     そんな風にしどろもどろに伝えると、(何せ両想いの相手と他愛ない話をすることにもまだ慣れてない)長谷部は唇を引き結んだまま黙っていたけど、後ろ手でそっと執務室の戸を閉めた。
    「? どうした? あ、寒かった? そういえば最近急に冷え込ん、ん!?」
     今日の気温は、なんて端末で確かめる前に伸びてきた手が俺の顎を掴み、ぐいと上向かせるものだから言葉尻は声にならない悲鳴になった。近い、長谷部の顔がとても近い! 藤色の瞳の中に自分の間抜け面が映り込んでいて恥ずかしい、でも、何が映っていても綺麗な瞳だ、好き。そう思っている間に柔らかな唇が重なった。やわらかい、あたたかい。何度しても、長谷部とキスしてる、と思うだけで顔も体もかっと熱くなり、何も考えられなくなる。触れ合った部分が熱い。
    「……っ、ふ」
     ちゅ、と音を立てて離れた唇は、すぐにまた重ねられる。何度も、何度も角度を変えて噛みつくように唇を食まれ、吸われて、喉がごくんと鳴った。
    「……あるじ」
     掠れた声で呼ばれ、腰の奥がぞくりと震える。
    「ま、まって、まて、長谷部、ってば、ん、んんっ」
     胸板を押してもびくともしなくて、ああ、いつもはわざと押し倒されてくれてるんだなあと実感する。息継ぎに開いた唇の隙間から舌を差し込まれ、絡み合い、たっぷり舐られてから、やっと解放された。気付けば俺も長谷部の首筋にしがみついていて、立ち上がれなくなった体はがっちりと抱き締められている。
    「これで、信じられますか?」
    「う、うん」
     息も絶え絶えで、涙すら滲む俺の目元を、指の腹でそっと拭った長谷部は満足げだった。
    「信じられないというのなら、何度でも、”理解”してもらえばいいだけの話です」
    「は、長谷部ってほんと……」
    「嫌ですか?」
    「嫌なわけない……」
     言わなくたって答えは分かってた、そんな顔で長谷部は笑っている。
    「好きです。愛してます、主。何度でも、いつでも、信じられないなんて、言えなくなるくらい、伝えますよ」
    「わ、分かった、もう十分だから、伝わったから」
    「本当に?」
     拗ねた口振りが可愛い、好き、と思うのに、伸びてきた手が耳をくにくにと弄ぶので声が裏返る。
    「信じられない、と……主がそう言う度に、行動で示してきたつもりですが……やはりもっと言葉でも伝えるべきでした」
     力が入らなくて、長谷部が本気で俺を逃さないように抱きしめているのが分かる。
    「あるじ」
     耳もしっかり捉えられて、低い声がいつもよりかは熱っぽく囁いてくる。吐息も耳たぶに掛かって、俺は「ひぃ」とか「あわわ」とか情けない鳴き声をあげるだけの生き物になっていた。
    「貴方のことが、ずっと好きです。以前から、今も、これからも、ずっと、ずーっと」
     声がダイレクトに響いて、意識が遠のきそうになるのに、触れあった体の熱さとか、その中でも特に熱く昂っている場所だとかのおかげでそうはならずに済んでいる。
    「この身が朽ちても、貴方が生まれ変わっても、ずっと、ですよ」
    「……っ」
     苦しいのは、強く抱き締められているからだけじゃない。長谷部を喪ったら、もしくは俺が長谷部を置いていくことになったら。それは何度も想像しては蓋をした、けれどどちらかは必ず訪れる未来だ。いつか訪れるだろう別れの日を思うだけで、つらくて、苦しい。けれど、
    「う、生まれ、変わったら、って、それ、俺もう審神者じゃないんじゃない?」
    「それでもです」
     どうにか吃りながら返した言葉にも即答されて、また少し泣きそうになる。苦しさが、上書きされる。これは、胸がいっぱい、ってやつだ。
    「生まれ変わっても、俺も貴方も違う姿だったとしても……絶対に、見つけます。見つけて、また貴方に好きだと伝えます。ふふ」
     微かな笑い声さえも、耳に反響して、俺の鼓動はどくんどくんとうるさいったらない。俺か、もしかしたら長谷部も、
    「覚悟してくださいね」
     やっと耳は解放されて、それでも間近で見た長谷部は恍惚としたような表情が艶っぽくて、くらくらするくらい、眩しい。
    「っ、なんかもう、長谷部になら、抱かれてもいい……」
    「主? 俺は真面目に言っているんですよ」
    「俺だって真面目だよ」
     実際、すぐに涙腺が崩壊するわ不安になるわ初夜は緊張しすぎて使い物にならなかったわの俺に比べれば、長谷部のなんと頼もしく立派なことか。何度体を重ねても、俺が彼を抱いているのはそれこそ信じられない事実だ。いや思い出してみると本当に情けなくて死にたくなるな……
    「主」
    「な、んっ」
     またしおしおになってきた俺の顎は再び捉えられ、噛みつくような口づけをかまされる。
    「っは、もちろん……主がお望みでしたら、そのように。ですが」
    「ん、あ、待っ、ちょっと、あっ、やめ」
     先程から控えめに主張していた昂りが、長谷部の膝でぐりぐりと弄ばれる。もどかしい刺激は毒にしか思えないのに、腰が揺れて、膝に押し付けるように動いてしまう。今度こそ涙が滲んで、ぼやけた視界の中、長谷部がどんな顔をしているのかもう分からなくなった。ただ、興奮したように上擦った声が再び俺の耳に囁く。
    「そのお話は、また後で」
     あとは、されるがままだった。
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    いなばリチウム

    TRAININGhttps://poipiku.com/594323/10668650.html
    これの続き。騙されやすい審神者と近侍の長谷部の話。
    だまされやすい審神者の話2 疎遠になっても連絡をとりやすい、というタイプの人間がいる。

     それがいいことなのか、はたまたその逆であるなのかはさておき、長谷部の主がそうだった。学校を卒業し、現世を離れてから長いが、それでも時折同窓会やちょっとした食事会の誘いがあるという。ほとんどは審神者業の方が忙しく、都合がつかないことが多いけれど。今回はどうにか参加できそうだ、と長谷部に嬉しそうに話した。
     もちろん審神者一人で外出する許可は下りないので、長谷部が護衛として同行することになる。道すがら、審神者は饒舌に昔話をした。学生の頃は内気であまり友人がいなかったこと、大人しい自分に声をかけてくれたクラスメイトが数人いて、なんとなく共に行動するようになったこと。卒業する時に連絡先を交換したものの、忙しさもありお互いにあまり連絡はしていなかったこと。それでも年に一度は同窓会や、軽く食事でもしないかという誘いがあること。世話になっている上司を紹介したいと何度か打診され、気恥ずかしさはあったものの、紹介したいと思ってもらえることは嬉しかったこと。今回やっと予定が合い、旧友とその上司に会えること。
    1820

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    いなばリチウム

    MOURNING六年近く前(メモを見る限りだと2016年4月)に利き主へし小説企画で「初夜」をテーマに書いた話です。他にもいくつか初夜ネタを書いてたのでまとめてpixivに載せるつもりだったんですけど全然書ききれないので一旦ここに載せておきます!
    当時いつも書いてた主へしの作風とすこし雰囲気変えたので楽しかったし、性癖の一つでもあったので今読んでも好きな話です。
    CPではない二人の話です。長谷部が可哀想かも。
    夜な夜な(主へし R18) その日は朝から体がだるかった。
     目を覚ますと、頭は内側から叩かれているように錯覚するぐらい痛み、窓から差し込む朝日や鳥の囀りがひどく耳障りで、長谷部はそう感じてしまう思考と体の不調にただただ戸惑った。しかし、昨日はいつも通り出陣したはずだったし、今日もそれは変わりない。死ななければどうということはないが、あまりひどければ出陣に、ひいては主の戦績に支障が出る。長引くようであれば手入れ部屋へ入ることも検討しなければ、と考える。
     着替えてからだるい体を引きずって部屋を出ると、「長谷部、」と今まさに長谷部の部屋の戸に手を掛けようとしたらしく、手を中途半端に宙に浮かせて困ったように佇んでいる審神者がいた。無意識に背筋が伸びる。
    6533

    いなばリチウム

    DONE情けない攻めはかわいいねお題ガチャ
    https://odaibako.net/gacha/1462?share=tw
    これで出たお題ガチャは全部!微妙に消化しきれてない部分もあるけどお付き合いいただきありがとうございました!
    情けない攻めの審神者×長谷部シリーズ④・長谷部にハイキックで倒されるモブを見て自分も蹴られたくなる審神者
    ・暴漢に襲われかけた審神者と、その暴漢を正当防衛の範囲内で捻りあげ社会的死に追い込み審神者を救出する強くて怖い長谷部。


    【報道】
     
     政府施設内コンビニエンスストアで強盗 男を逮捕

     ×日、政府施設内コンビニエンスストアで店員に刃物を突き付け、現金を奪おうとしたとして無職の男が逮捕された。
     男は、施設に出入りを許可された運送会社の制服をネットオークションで購入し、施設内に侵入したと思われる。運送会社の管理の杜撰さ、政府施設のセキュリティの甘さが浮き彫りになった形だ。
     店内にはアルバイトの女性店員と審神者職男性がおり、この男性が容疑者を取り押さえたという。女性店員に怪我はなかった。この勇敢な男性は本誌の取材に対し「自分は何もしていない」「店員に怪我がなくてよかった」と答えた。なお、容疑者は取り押さえられた際に軽傷を負ったが、命に別状はないという―――
    4579

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    PAST主くり編/近侍のおしごと
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀
    主の部屋に茶色いうさぎが居座るようになった。
    「なんだこれは」
    「うさぎのぬいぐるみだって」
    「なんでここにある」
    「いや、大倶利伽羅のもあるっていうからつい買っちゃった」
    照れくさそうに頬をかく主はまたうさぎに視線を落とした。その視線が、表情が、それに向けられるのが腹立たしい。
    「やっぱ変かな」
    変とかそういう問題ではない。ここは審神者の部屋ではなく主の私室。俺以外はほとんど入ることのない部屋で、俺がいない時にもこいつは主のそばにいることになる。
    そして、俺の以内間に愛おしげな顔をただの綿がはいった動きもしない、しゃべれもしない相手に向けているのかと考えると腹の奥がごうごうと燃えさかる気分だった。
    奥歯からぎり、と音がなって気づけばうさぎをひっ掴んで投げようとしていた。
    「こら! ものは大事に扱いなさい」
    「あんたは俺を蔑ろにするのにか!」
    あんたがそれを言うのかとそのまま問い詰めたかった。けれどこれ以上なにか不興をかって遠ざけられるのは嫌で唇を噛む。
    ぽかんと間抜けな表情をする主にやり場のない衝動が綿を握りしめさせた。
    俺が必要以上な会話を好まないのは主も知っているし無理に話そうと 1308

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    PAST主くり編/支部連載シリーズのふたり
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    審神者視点で自己完結しようとする大倶利伽羅が可愛くて仕方ない話
    刺し違えんとばかりに本性と違わぬ鋭い視線で可愛らしいうさぎのぬいぐるみを睨みつけるのは側からみれば仇を目の前にした復讐者のようだと思った。
    ちょっとしたいたずら心でうさぎにキスするフリをすると一気に腹を立てた大倶利伽羅にむしりとられてしまった。
    「あんたは!」
    激昂してなにかを言いかけた大倶利伽羅はしかしそれ以上続けることはなく、押し黙ってしまう。
    それからじわ、と金色が滲んできて、嗚呼やっぱりと笑ってしまう。
    「なにがおかしい……いや、おかしいんだろうな、刀があんたが愛でようとしている物に突っかかるのは」
    またそうやって自己完結しようとする。
    手を引っ張って引き倒しても大倶利伽羅はまだうさぎを握りしめている。
    ゆらゆら揺れながら細く睨みつけてくる金色がたまらない。どれだけ俺のことが好きなんだと衝動のまま覆いかぶさって唇を押し付けても引きむすんだまま頑なだ。畳に押し付けた手でうさぎを掴んだままの大倶利伽羅の手首を引っ掻く。
    「ぅんっ! ん、んっ、ふ、ぅ…っ」
    小さく跳ねて力の抜けたところにうさぎと大倶利伽羅の手のひらの間に滑り込ませて指を絡めて握りしめる。
    それでもまだ唇は閉じたままだ 639

    Norskskogkatta

    PAST主くり
    鍛刀下手な審神者が戦力増強のために二振り目の大倶利伽羅を顕現してからはじまる主をめぐる極と特の大倶利伽羅サンド
    大倶利伽羅さんどいっち?!


     どうもこんにちは!しがないいっぱしの審神者です!といっても霊力はよく言って中の下くらいで諸先輩方に追いつけるようにひたすら地道に頑張る毎日だ。こんな頼りがいのない自分だが自慢できることがひとつだけある。
     それは大倶利伽羅が恋びとだと言うこと!めっちゃ可愛い!
     最初はなれ合うつもりはないとか命令には及ばないとか言ってて何だこいつとっつきにくい!と思っていったのにいつしか目で追うようになっていた。
     観察していれば目つきは鋭い割に本丸内では穏やかな顔つきだし、内番とかは文句を言いながらもしっかり終わらせる。なにより伊達組と呼ばれる顔見知りの刀たちに構われまくっていることから根がとてもいい奴だってことはすぐわかった。第一印象が悪いだけで大分損しているんじゃないかな。
     好きだなって自覚してからはひたすら押した。押しまくって避けられるなんて失敗をしながらなんとか晴れて恋仲になれた。
    それからずいぶんたつけど日に日に可愛いという感情があふれてとまらない。
     そんな日々のなかで大倶利伽羅は修行に出てさらに強く格好良くなって帰ってきた。何より審神者であるオレに信 4684

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    重陽の節句に菊酒を作る大倶利伽羅と、それがうれしくて酔い潰れる主
    前半は主視点、後半は大倶利伽羅視点です
    『あなたの健康を願います』

    隣で動く気配がして意識が浮上する。布団の中で体温を探すも見つからない。眠い目蓋を持ち上げると腕の中にいたはずの大倶利伽羅がいなくなっていた。
    「……起こしたか」
    「どうした、厠か……」
    「違う、あんたは寝てろ。まだ夜半を過ぎたばかりだ」
    目を擦りながら起き上がると大倶利伽羅は立ち上がって部屋を出て行こうとする。
    なんだか置いていかれるようで咄嗟に追いかけてしまった。大倶利伽羅からは胡乱な目で見られてしまったが水が飲みたいと誤魔化しておいた。
    ひたひたと廊下を進むと着いた先は厨だった。
    「なんだ、水飲みに来たのか」
    「それも違う」
    なら腹でも空いたのだろうか。他と比べると細く見えても戦うための身体をしているのでわりと食べるしなとぼんやりしているとどこから取り出したのかざるの上に黄色い花が山をなしていた。
    「どうしたんだそれ」
    「菊の花だ」
    それはわかる。こんな夜更けに厨で菊の花を用意することに疑問符を浮かべていると透明なガラス瓶を取り出してそこに洗った菊の花を詰めはじめた。さらに首を捻っていると日本酒を取り出し注いでいく。透明な瓶の中に黄色い花が浮かんで綺麗 3117

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    菊酒をのんで酔い潰れた後日、大倶利伽羅が好きだなぁと自覚しなおした審神者と日を改めて飲み直し、仲良し()するまで。
    月色、金色、蜂蜜色


    急に熱さが和らいで、秋らしい涼やかな風が吹く。
    空には満月が浮かんで明るい夜だ。
    今は大倶利伽羅とふたり、自室の縁側で並んで酒をちびちびとなめている。徳利は一本しか用意しなかった。
    「あまり飲みすぎるなよ」
    「わかってるよ、昨日は運ばせて悪かったって」
    「あんたひとりを運ぶのは何でもないし、謝られるいわれもない」
    「じゃあなんだよ……」
    「昨日は生殺しだったんでね」
    言葉終わりに煽った酒を吹き出すかと思った。大倶利伽羅は気を付けろなんて言いながら徳利の酒を注いでくる。それを奪い取って大倶利伽羅の空いた杯にも酒を満たす。
    「……だから今日誘ったんだ」
    「しってる」
    静かな返答に頭をかいた。顔が熱い。
    以前に忙しいからと大倶利伽羅が望むのを遮って喧嘩紛いのことをした。それから時間が取れるようになったらと約束もしたがなかなか忙しが緩まずに秋になってしまった。
    だいぶ待たせてしまったとは思う。俺だってその間なにも感じなかったわけじゃないが、無理くり休暇を捻じ込むのも身体目的みたいで躊躇われた。
    そして昨日の、重陽の節句にと大倶利伽羅が作ってくれた酒が嬉しくて酔い潰れてし 1657

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    寒くなってきたのにわざわざ主の部屋まできて布団に潜り込んできた大倶利伽羅
    秋から冬へ、熱を求めて


    ひとりで布団にくるまっていると誰かが部屋へと入ってくる。こんな時間に来るのなんて決まってる。寝たふりをしているとすぐ近くまで来た気配が止まってしまう。ここまできたんなら入ってくれば良いのに、仕方なく布団を持ちあげると潜り込んできて冷えた足をすり寄せてくる。いつも熱いくらいの足を挟んでて温めてやると、ゆっくりと身体の力が抜けていくのがわかる。じわりと同じ温度になっていく足をすり合わせながら抱きしめた。
    「……おやすみ、大倶利伽羅」
    返事は腰に回った腕だった。

    ふ、と意識が浮上する。まだ暗い。しかしからりとした喉が水を欲していた。乾燥してきたからかなと起き上がると大倶利伽羅がうっすらと目蓋を持ち上げる。戦場に身を置くからか隣で動き出すとどうしても起こしてしまう。
    「まだ暗いから寝とけ」
    「……ん、だが」
    頭を撫でれば寝ぼけ半分だったのがあっさりと夢に落ちていった。寝付きの良さにちょっと笑ってから隣の部屋へと移動して簡易的な流しの蛇口を捻る。水を適当なコップに溜めて飲むとするりと落ちていくのがわかった。
    「つめた」
    乾きはなくなったが水の冷たさに目がさえてしまっ 1160