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    いなばリチウム

    @inaba_hondego

    小説メイン
    刀:主へし、主刀、刀さに♂
    mhyk:フィガ晶♂
    文アル:はるだざ、菊芥、司♂秋
    文スト:織太

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    いなばリチウム

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    大好きなむむむさんへの誕生日祝SS
    むむむさんのところのハロワ炎上主へしが大好きすぎるので第三者モブ視点を勝手に書きました!

    ハロワ炎上無職の朝は遅い。もう、無職だという時点で気分は重いし、起きなくちゃ、出かけなくちゃ、職を探しに行かなくちゃと頭では思うものの基本的に働きたくないのでまじで布団から出られない。とはいえ、貯金は普通に減っていくばかりなので今日も求職の実績を作って、明日はハローワークへ行かなくちゃならない。あーあ、宝くじで3億当たるか、誰か養ってくれるかしないかなあ、と思いながら。


    朝が遅かったとはいえ、3社程面接をはしごし、気付けば昼を食べないまま夕方になっていた。もう今日は自炊する元気もないのでチェーン店で牛丼食べて帰って寝てもいいこととする!そんな気持ちで1番安いセットを選んで適当な席に座ると、ほとんど同時くらいにカウンター席に着いた男と肩がぶつかった。
    「あ」
    「あ、すみません」
    混み合う時間なので他に席は無いし、狭い店だから仕方ない。軽く頭を下げると、向こうも申し訳なさそうに眉尻を下げて会釈した。カウンターに置いたセットは同じものだったので、何となく親近感が湧く。見れば向こうは2人連れで、同じセットが横に3つ並ぶことになった。盗み聞きするつもりはなかったものの、何せ肩がぶつかるくらいの距離なので向こうの会話は筒抜けだった。
    「ごめんな、記念日なのに俺がパチスロで負けすぎちゃったからこんな食事で……」
    「いえ、俺は主と一緒ならどこでもなんでも嬉しいです」
    紅しょうが喉に詰まるかと思った。なんか聞かなかった方が良かったキーワードが3つくらい出てきた気がする。今すぐTwitterに書き込みたい。隣にクズがいる件について。書かないけど。
    何食わぬ顔で、食べるのに夢中で何も聞こえてません!という顔で牛丼をかきこんだ。しかし、無慈悲にも隣の穏やかな声の男と、その向こうに座っているやけに姿勢の良い男の会話は引き続きしっかり耳に入ってくる。
    「俺さ……もうパチスロやめるよ」
    「えっ」
    「長谷部にばっかり稼がせてさ、今日もお金全部使っちゃって……」
    「そんな、俺がもっと多めにお渡しすればよかったんです。俺のせいです」
    「そんなことないよ」
    本当にそんなことない感じだな。隣の男、のむこうにいる長谷部、という男の顔はよく見えないしまじまじと見るわけにはいかないが、涼やかな声が「でも」と戸惑っている。
    「急に、やめるだなんて、そんな……」
    「パチ代のことだけじゃなくてさ……生活費も家事とかも全部頼りっきりだし、そういうのやめたいなと思って」
    「全部俺が好きでやっていることです」
    顔が見えないけど長谷部くん、そんな男やめておけって!数秒しか話聞いてないオレでもやばいのがわかるぞ!でもヒモってこと……?それはちょっと、だいぶ羨ましいな……
    セットの味噌汁をずずず、とわざと音を立てて啜るものの、男の真摯な声は引き続き筒抜けだった。
    「俺も、長谷部のことが好きだからちゃんとしたいんだよ。今度こそ心を入れ替えてさ、お前のために」
    「主……」
    長谷部くんの声が上擦って、男がその背中をそっと摩った。いちゃついてる……牛丼屋で……牛丼絶対冷めてる……
    オレがご自由にどうぞコーナーからお茶を汲んできたあたりで、2人はやっと牛丼に手を付け始めた。
    「とりあえず、明日ハローワークに行ってみるよ。隣駅にあるみたいだからさ」
    「ハローワーク……」
    「そんな顔するなって、心配しなくても、きっと、ちゃんと自立して見せるからさ……」
    と、そのあたりでオレは席を立ち上がり、そそくさと食器を下げて牛丼屋を後にした。Twitterに書いたら絶対信じて貰えないレベルでいい感じに話がまとまってたな……しかも、タイミングによっては明日ヒモの方の男と再会しそうだし。

    なんて思った日の翌朝。
    やはり無職のオレの朝は遅く、昼過ぎになんとか起きてハローワークに向かったものの、結論から言うと、男と再会することはなかった。
    駅に着いた時点で消防車やらパトカーやらが何台もそのへんに止まっており、ハローワークの建物がある方向から煙があがっているのが見える。全焼、原因不明、そんな言葉を野次馬たちから拾った。朝が遅くなかったら巻き込まれていたかも、と思うとぞっとする。同時に、昨日隣にいた2人連れの片方は大丈夫だったろうか、と少しだけ、思いを馳せたのだった。

    おしまい
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    いなばリチウム

    TRAININGhttps://poipiku.com/594323/10668650.html
    これの続き。騙されやすい審神者と近侍の長谷部の話。
    だまされやすい審神者の話2 疎遠になっても連絡をとりやすい、というタイプの人間がいる。

     それがいいことなのか、はたまたその逆であるなのかはさておき、長谷部の主がそうだった。学校を卒業し、現世を離れてから長いが、それでも時折同窓会やちょっとした食事会の誘いがあるという。ほとんどは審神者業の方が忙しく、都合がつかないことが多いけれど。今回はどうにか参加できそうだ、と長谷部に嬉しそうに話した。
     もちろん審神者一人で外出する許可は下りないので、長谷部が護衛として同行することになる。道すがら、審神者は饒舌に昔話をした。学生の頃は内気であまり友人がいなかったこと、大人しい自分に声をかけてくれたクラスメイトが数人いて、なんとなく共に行動するようになったこと。卒業する時に連絡先を交換したものの、忙しさもありお互いにあまり連絡はしていなかったこと。それでも年に一度は同窓会や、軽く食事でもしないかという誘いがあること。世話になっている上司を紹介したいと何度か打診され、気恥ずかしさはあったものの、紹介したいと思ってもらえることは嬉しかったこと。今回やっと予定が合い、旧友とその上司に会えること。
    1820

    recommended works

    Norskskogkatta

    PAST主こりゅ(男審神者×小竜)
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀

    小竜視点で自分の代わりだと言われてずっと考えてくれるのは嬉しいけどやっぱり自分がいい小竜
    「ね、みてこれ! 小竜のが出たんだよー」
    「へーえ……」
    我ながら冷めきった声だった。
    遠征帰りの俺に主が見せてきたのは俺の髪の色と同じ毛皮のうさぎのぬいぐるみだった。マントを羽織って足裏には刀紋まで入ってるから見れば小竜景光をイメージしてるってのはよくわかる。
    「小竜の代わりにしてたんだ」
    「そんなのより俺を呼びなよ」
    「んー、でも出かけてていない時とかこれ見て小竜のこと考えてるんだ」
    不覚にも悪い気はしないけどやっぱり自分がそばにいたい。そのくらいにはこの主のことをいいなと感じているというのに本人はまだにこにことうさぎを構ってる。
    今は遠征から帰ってきて実物が目の前にいるってのに。ましてやうさぎに頬ずりを始めた。面白くない。
    「ねぇそれ浮気だよ」
    「へ、んっ、ンンッ?!」
    顎を掴んで口を塞いだ。主の手からうさぎが落ちたのを横目で見ながらちゅっと音をさせてはなれるとキスに固まってた主がハッとしてキラキラした目で見上げてくる。……ちょっとうさぎが気に入らないからって焦りすぎた。厄介な雰囲気かも。
    「は……初めて小竜からしてくれた!」
    「そうだっけ?」
    「そうだよ! うわーびっくりした! 619

    Norskskogkatta

    PAST主くり
    リクエスト企画で書いたもの
    ちいさい主に気に入られてなんだかんだいいながら面倒を見てたら、成長後押せ押せでくる主にたじたじになる大倶利伽羅
    とたとたとた、と軽い足音に微睡んでいた意識が浮上する。これから来るであろう小さな嵐を思って知らずため息が出た。
    枕がわりにしていた座布団から頭を持ち上げたのと勢いよく部屋の障子が開け放たれたのはほぼ同時で逃げ遅れたと悟ったときには腹部に衝撃が加わっていた。
    「から! りゅうみせて!」
    腹に乗り上げながらまあるい瞳を輝かせる男の子どもがこの本丸の審神者だ。
    「まず降りろ」
    「はーい」
    咎めるように低い声を出しても軽く調子で返事が返ってきた。
    狛犬のように行儀よく座った審神者に耳と尻尾の幻覚を見ながら身体を起こす。
    「勉強は終わったのか」
    「おわった! くにがからのところ行っていいっていった!」
    くにと言うのは初期刀の山姥切で、主の教育もしている。午前中は勉強の時間で午後からが審神者の仕事をするというのがこの本丸のあり方だった。
    この本丸に顕現してから何故だか懐かれ、暇があれば雛のように後を追われ、馴れ合うつもりはないと突き離してもうん!と元気よく返事をするだけでどこまでもついて来る。
    最初は隠れたりもしてみたが短刀かと言いたくなるほどの偵察であっさり見つかるのでただの徒労だった。
    大人し 1811

    Norskskogkatta

    PASTさに(→)←ちょも
    山鳥毛のピアスに目が行く審神者
    最近どうも気になることがある。気になることは突き詰めておきたい性分故か、見入ってしまっていた。
    「どうした、小鳥」
     一文字一家の長であるというこの刀は、顕現したばかりだが近侍としての能力全般に長けており気づけば持ち回りだった近侍の任が固定になった。
     一日の大半を一緒に過ごすようになって、つい目を引かれてしまうようになったのはいつからだったか。特に隠すことでもないので、問いかけに応えることにした。
    「ピアスが気になって」
    「この巣には装飾品を身につけているものは少なくないと思うが」
     言われてみれば確かにと気づく。80振りを越えた本丸内では趣向を凝らした戦装束をまとって顕現される。その中には当然のように現代の装飾品を身につけている刀もいて、大分親しみやすい形でいるのだなと妙に感心した記憶がある。たまにやれ片方落としただの金具が壊れただのというちょっとした騒動が起こることがあるのだが、それはまあおいておく。
     さて、ではなぜ山鳥毛にかぎってやたらと気になるのかと首を傾げていると、ずいと身を乗り出し耳元でささやかれた。
    「小鳥は私のことが気になっているのかな?」
    「あー……?」
    ちょっと 1374

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    花火景趣出たときにハイになってかいた。
    花火見ながら軽装姿の嫁といちゃつくだけ
    いつもの執務室とは違う、高い場所から夜空を見上げる。
    遠くでひゅるる、と音がしたあと心臓を叩かれたような衝撃とともに豪快な花が咲く。
    真っ暗だった部屋が花の明かりで色とりどりに輝く。それはとても一瞬でまた暗闇に戻るがまたひゅるる、と花の芽が音をなし、どんと花開く。
    「おお、綺麗だな」
    「悪くない」
    隣で一緒に胡座をかく大倶利伽羅は軽装だ。特に指定はしていなかったのだが、今夜一緒にどうだと言ったら渡したとき以来見ていなかったそれを着て来てくれた。
    普段の穏やかな表情がことさら緩んでいるようにも見える。
    横顔を眺めているとまたひゅる、どんと花の咲く音ときらきらと色があたりを染めては消える。
    大倶利伽羅の金色がそれを反射して瞳の中にも咲いたように見える。ああ。
    「綺麗だな」
    「そうだな、見事だ」
    夜空に視線を向けたままの大倶利伽羅がゆるりと口角を上げた。それもあるんだが、俺の心の中を占めたのは花火ではないんだけどな。
    「大倶利伽羅」
    「なんだ」
    呼び掛ければすっとこちらを見てくれる。
    ぶっきらぼうに聞こえる言葉よりも瞳のほうが雄弁だと気づいたのは付き合い始めてからだったかなと懐かしみながら、 843

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    冬至の日に書いた
    いっしょにゆず湯に入るだけの話
    冬至の柚子湯


    一年で一番日が短い日、普段は刀剣男士たちが使っている大浴場に来た。仕事を片付けてからきたから誰もいない。
    服を脱いで適当に畳んでから、旅館のような脱衣籠に置いておく。磨りガラスのはめ込んである木枠の戸を横にひけばふわりと柔らかい湯気があたり、それにつられて奥を見てみれば大きな檜風呂には黄色くて丸いものが浮かんでいた。
    普段は審神者の部屋に備えてある個人用の風呂を使っているのだが、近侍から今日の大浴場は柚子湯にするから是非入ってくれと言われたのだ。冬至に柚子湯という刀剣男士たちが心を砕いてくれた証に彼らの思いに応えられるような審神者になろうと気が引き締まる。
    「柚子湯なんて本丸くるまでしたことなかったな」
    檜に近寄って掛け湯をするだけでもゆずの香りが心を安らげてくれる。
    さて洗おうかと鏡の前へ椅子を置いて腰掛けた時、脱衣所への戸が音を立てた。
    「ここにいたのか」
    「なんだ、まだだったのか」
    素っ裸の大倶利伽羅が前を隠しもせずはいってくる。まあ男湯だし当然なのだが。
    探していたのかと聞けばまた遅くまで仕事をしているのかと思ってなと返されてしまう。日頃の行いを振り返っている 1909