宇宙の果てでも愛してる深津さんの呼吸を確認して、自身を引き抜いた。
その感触にすら感じた深津さんは、「んぅ…」と感じ入った声を出して耐えている。その顔すらエロティックで愛おしい。
「見て深津さん、すごい出た」
スキンに溜まった自分の精液を見せると、深津さんは「ん」とだけ答えて背を向けた。その、無防備な背中に噛みつきながら抱き寄せた。息を整えるため、深津さんは深呼吸をする。オレは深津さんの体に手を回して、ぺたんこの腹筋を撫でた。
「すごかったね」
耳元で囁くと、深津さんは一瞬ビクッと震えて目だけでオレを見た。
深津さんは、今日は大学の飲み会だったみたいで、酔っ払いながら帰ってきた。帰国中のオレは、日中に実家に帰ってゆったりしてから、深津さんの部屋で深津さんの帰りを待っていたのだが、24時をまわってから帰ってきた深津さんは、ベロベロに酔っ払って機嫌が良かった。
「酔ってない?もしかして合コン?」
違うピョン、と言った深津さんは、Tシャツを半分くらい脱いで頭に引っかかったまま「えいじ〜」とオレを呼んだ。下の名前でオレを呼ぶのは、甘えている証拠だ。
ハイハイ、と言いつつ口元を緩ませながら、オレは深津さんの体からTシャツを外してあげて、ふうと息を吐いた深津さんの唇にキスをした。
「今日何の飲み会だったの」
唇同士を合わせながら、至近距離で囁いた。
「祝賀会。優勝したから」
深津さんは大学でも1年からスタメンだ。大学リーグの東京都予選で優勝したらしいから、それの祝賀会として開かれた飲み会だそう。女子はマネージャーのみで、オレが心配していた合コンではない。良かった。
「たのしかった?」
「んーん」
とろんとした目でオレを見つめるから、オレも耐えきれなくなってしまう。
「お前に会いたくなっって、早く終わらないかなあって思ってたピョン」
こんな可愛いことを言われたら堪えられるはずもなくて、そのまま押し倒した。
酔っ払うと深津さんは素直になる。
秋田出身だからお酒には強いはずだが、飲み会から帰ってきた深津さんはいつもこんな感じでふにゃふにゃだ。
嬉々としてオレはそんな深津さんに欲情して、結果お互いにドロドロになる。
乳首を舐めて、風呂に入ってない深津さんの首筋を舐めて、深津さんの匂いを堪能して、勃起したちんこを触って、たくさん喘ぐ深津さんを見ながらイカせた。酔いが回った深津さんは、「中までして」と積極的だった。
オレは自分のイキリたったちんこを深津さんにあてがって、泣きながら感じ入る深津さんに「愛してるよ」と告げて、深津さんはそのお返しにキスをくれた。
他のやつと飲んで、色っぽくなった深津さんを他人に見せるのは嫌だけど、こうやって素直になる深津さんは好きだった。
「何が良かった?今日」
「何って…」
「どの体位がよかったの」
「……」
深津さんは考える素振りをして、腹のあたりで組んだオレの手に手を重ねた。
「後ろから、押さえつけるやつ」
「はは、あれが良かったんだ。ちょっと強引かなと思ったけど」
深津さんは頭を振った。
「強くされるの、好きみたいピョン」
ちょっと遠慮がちにオレを見上げる顔が可愛かった。深津さんにマゾっ気があるのは、何度かセックスしてから分かっってはいたけど、本人から言われるのは初めてだった。
「また今度強くしてあげる」
「ん」
またそれだけいって、深津さんはオレに向き直って足を絡めた。お互い、裸の体温が混ざり合うのが心地いい。
「そろそろいけると思うんだけど、ナカイキ」
「ナカイキ?」
「そう。触らないで、中だけでイクの」
「…どうなっちゃうピョン?」
そんなの、オレの方が聞きたいくらいだったけど、深津さんの純粋な好奇心が浮かぶ瞳に、やさしく笑いかける。
「多分、他の惑星にいっちゃうかも」
「惑星?」
「そう。地球じゃないどこか」
不思議な言い回しをしてしまうのは、オレも若干眠いからだった。
地球以外の惑星まで飛んでっちゃうような、快楽に呑まれて放心する深津さんが見てみたくなった。
「いつ行けるピョン」
「ん?」
「他の惑星」
オレは思わず、吹き出した、
そういえば、深津さんは高校の時は地学選択だった。宇宙には、地球と同じような水を持つ惑星があるらしいピョン、と語っていたのを思い出す。
深津くんって宇宙人みたい、と同じクラスの女子生徒に言われて凹んでいたのも覚えている。
「さあねえ」
オレは言いながら、深津さんの頬を撫でた。
オレも射精したばかりだから頭がぼーっとして、やけに冷静だ。
「深津さんが光速で移動しないと無理かも」
ム、と深津さんの眉毛が寄せられた。その皺さえ愛おしいと思ってしまうのは、オレが深津さんを好きすぎるからだ。
「アンドロメダ銀河まで、250万光年だピョン」
オレの顔を見ながら、深津さんはそう言った。
「俺たちが見てる光は、ずっと昔の光だピョン」
「そうなの?」
「うん。1番近い星でさえ、俺たちはリアルタイムで見れないんだピョン」
「へえ」
あんまり興味がなかった。深津さんの動く唇が可愛かったから。
「ん」と吐息を漏らして深津さんにまた口付けた。何度目かわからない柔らかさを堪能する。
「聞いてるピョン?」
「聞いてる。地球ってちっぽけだって」
「…まあ、そんなもんだピョン」
深津さんの唇が少しだけ尖って、オレの上唇を吸った。可愛い。
宇宙の話とか、大学の話とか、そんなものはどうだって良い。今、深津さんを独占しているのはオレだけで、深津さんが好きなのもオレだけで、2人は愛し合っているという事実だけで良かった。
「お前は光速並みにオレのところに来たピョン」
もう宇宙の話なんでどうでもいいのに、深津さんの唇は止まらない。
「なによりも速い速度で、オレの心臓を突き刺した」
「そう?」
「うん。お前はずっと眩しいピョン」
ふふ、と思わず笑みが溢れた。深津さんがこんな風に自分の気持ちを言葉にするのは珍しい。
普段言わないからこそ、嬉しくなってしまう言葉をくれる。
「オレにも、深津さんがずっと輝いて見えるよ」
思ったままを言ったら、深津さんが切なそうに笑った。左頬にだけできるえくぼが可愛かった。
「ずっと、太陽みたいだピョン、お前」
眉尻を下げて笑う深津さんに、オレは堪えられなくってまたキスをした。どうして、ちょっと悲しそうなんだろう。
「深津さん、愛してる。深津さんだけだよ」
言葉にしないといけない気がして、声に出した。深津さんはその言葉を聞いて、柔らかく笑った。
「ずっと、お前を見てるピョン」
唇を重ねたら、深津さんの方から舌を入れてきた。積極的な仕草に、オレはまた下半身が熱くなるのを自覚しながら、深津さんの厚い舌を追った。
2年後も、5年後も、100年後だって、オレを見ていてほしい。
その気持ちで、深津さんに再び覆い被さった。
「愛してる」
深津さんが、泣きそうな顔でオレを見上げて言ってくれた。
宇宙の果てまで?
「ずっと遠くの、宇宙の果てまでオレが飛ばされちゃっても、深津さんはオレのこと、愛してくれるの?」
うん、と答える声で、またオレは深津さんの中に入る。
宇宙だとか、地球だとか、そんなのどうでも良くなるくらいあたたかくて、湿ってて、たくさん締め付けてくれる。
出し入れするたびに、深津さんの悩ましい声が上がって、その声にオレはもっと興奮した。
抜き差しを繰り返して、何度もキスして、でも深津さんのは触らないまま、オレは果てた。
深津さんも、切ない喘ぎ声をあげて絶頂していた。
「イっちゃったの?」
触っってないのに。
こくりと頷く深津さんに、オレは堪らなくなって抱きしめた。
宇宙の果てでも愛してる。