雨がろうろうと降っている。
昼間の晴天は遠い昔のことのように消え去り、電柱に引っ提げた街灯が地面に伸びる線を映す。
菅原は帰ろうか、と迷う。昼間は晴れだったのだから傘など持っていない。もちろん帰る時に降ると知っていれば折り畳み傘くらいは鞄に入れていたはずである。
帰宅するはずだった時間もゆうに過ぎ、手土産を持ってはいるものの家主が起きているかどうかわからない。
弾むような足取りで、酔いの勢いに任せて行ってしまおうなんて普段の菅原なら余程のことがない限りやらないことだ。それが旧知の仲であってもだ。親しき仲にも礼儀ありっていうだろ。と菅原は理性とは反対に歩き続ける自らの足を嗜める。
「はー」
ぴたっと止まった足と頭の中が一つの糸で結ばれていく。
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