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    きゅう

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    きゅう

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    ミスルチ、ラスクロ、ヒスシノの同軸糸電話のお話。ほのぼのラブコメです。

    #ミスルチ
    mischief
    #ラスクロ
    rascro
    #ヒスシノ
    hissino

    糸の先には1.ルチル

    コンコン、と小気味良いノックの音が一階の廊下へと響いていく。
    「ミスラさん、ルチルです」
    声を掛けても、扉の向こう側から返事が返ってくる様子はない。
    (うーん、何処かへ行ってるのかな……)
    静まり返る扉を前に、自然と小首は斜めに傾いた。この間の授業で上手く魔法を使えたこと、中庭の花壇の花が開きはじめたこと、小さな出来事から大きな出来事まで、話したいことは山程あった。しかし、待てど暮らせど待ち人が来る気配はない。きっと、何処かでお昼寝でもしてるのかな。そんなことをぼんやりと思いながら、ルチルはミスラの部屋を後にした。

    廊下を歩いていると、正午の談話室は今日も賑やかな声が響いている。
    (声色から賢者様にクロエ、シノもいそうだな……。)
    盛り上がる三人の姿が脳裏に浮かび、思わず口角が上がる。談話室が目と鼻の先まで近づいたその時、一際大きな声がルチルの耳へと入ってくる。

    「賢者!オレもこの『糸電話』ってやつをやってみたい」

    (糸電話……?)
    聞きなれない言葉が頭の中に浮かび上がり、ルチルの足は自然と談話室に向かっていた。
    ひょこっと顔を覗かせると、ルチルの予想通り、賢者にクロエ、シノがなにやらテーブルを囲んでいる。

    「わっ、ルチル! こんにちわ」
    「こんにちわ、賢者様。皆さんで何をしていたんですか?」

    ルチルの姿に気がついた賢者が、にこやかに声を掛ける。賢者の両手には、何やら紐で繋がれた白いカップが収まっている。初めて見るその物体に、意識せずとも小首に角度がついてしまう。
    (うーん、これは何だろう?)

    ルチルの胸の中で生まれた疑問は、そのまま口を伝って声になっていた。

    「賢者様、その手に持っているカップのようなものは何ですか?」
    「これは俺の世界にある『糸電話』と言う遊びなんです」

    ルチルはシノの一際弾んだ声と共に、頭の中で浮いていた言葉と糸電話が一致する。
    (これが噂の『糸電話』……!)
    一本の糸で繋がれた二つのカップをまじまじと見つめる。話を聞いていくと、どうやら二人で遊ぶものらしい。片方は耳に、片方は口に当てて、ピンと糸を伸ばす。そのままお喋りをすると糸に声の振動が伝わり、少し距離が離れたところでも相手の声が聞こえる、といったものらしい。

    「すごい! 面白そうですね」
    「ふふん、そうだろ」

    シノはまるで宝物を見つけたかのように、自信たっぷりに糸電話を手にしている。早くヒースに見せてあげたい、という気持ちが全身から溢れ出している。

    「楽しそうだよね! この糸電話、カラフルな布で覆ったらもっと可愛いかも!」
    「わぁ、素敵! ビーズやレースをあしらっても可愛くなりそうだよね」

    クロエはどんな装飾をしようか、と胸を躍らせているようだ。そうしてシノもクロエも、思い思いに糸電話、という異界の遊びに心を躍らせていた。もちろん、ルチルも。相変わらず賑やかな声が響く談話室に、風のように軽やかな声が空気を変えた。

    「ちょうど三つ分作ったので、皆さんでどうぞ使ってください」

    「えっ、いいんですか?」
    「いいのか!?賢者!?」
    「やった〜嬉しいな!」

    三人の声が同時に重なり、賑やかさは勢いを増していく。

    「はい、俺は元の世界で遊んだことありますから。是非、皆さんで」

    賢者は机の上に置かれた糸電話を手に取り、順番に渡していく。受け取った糸電話をよく見ると、紙のコップに小さな穴が開けられ、その穴から糸が張られている簡易的な作りだった。これで本当に声が聞こえるのかな、とルチルがじっくり凝視していると、風船のように丸く弾んだ声が耳へと飛び込んでくる。

    「よし、さっそくヒースに見せてくる」
    「ヒース、こういうの好きそうだよね。俺は装飾をしてからラスティカと一緒に遊ぼうかな」

    シノはひときわ目を輝かせ、颯爽と談話室を飛び出していく。クロエはどんな装飾をしようかな、と頭の中でアイデアを考えているようだ。

    ルチルは手渡された糸電話をじっくりと見つめ、一人の魔法使いのことを思い浮かべていた。
    (もしかしたら、中庭の花壇で昼寝をしてるかも……)

    ルチルはまだ見えぬ糸電話の相手に思いを馳せながら、談話室を後にした。


    2.クロエ

    「よしっ!出来た」

    糸電話を受け取り自室へと戻ったクロエは、さっそく装飾に没頭していた。そうして出来上がったデザインは、赤チェックを基調とした可愛らしいもので、一目見ただけでは糸電話とは分からないくらいの出来栄えだ。

    (ラスティカには事前に声をかけていたから、そろそろ来てくれるかな?)

    クロエの胸中を察するかのように、タイミング良く扉をノックする音が響く。

    「クロエ、入っても良いかな」
    「ラスティカ〜! 待ってたよ」

    紳士、と言う言葉がぴったりと当てはまる。そんな穏やかな声でラスティカがクロエの部屋へと入ってくる。クロエはさっそく出来上がった糸電話を持ち、小走りでラスティカの元へと向かう。

    「見てみてラスティカ!これが糸電話だよ。周りの装飾は、俺が付けたものなんだけどね」
    「素晴らしい! さすがクロエだね。とっても素敵だよ」

    リボンやレース、チェック柄など、クロエの好きなものがたくさん詰まった小さなカップ。ラスティカの言葉にクロエの頬は紅く染まり、はにかむように微笑んだ。

    「賢者様から遊び方は聞いたんだ」
    「それじゃあ、さっそく遊んでみよう」
    「よし、ラスティカはこっちを持って。俺は反対側を持つね」
    「……こう、でいいのかな?」
    「うん、大丈夫。そのまま俺に向かって何か話してみて」

    少しずつ距離を取るにつれて、ピンと糸が張られていく。糸がたるまなくなったところで、クロエはチェック柄のカップへと耳を当てる。

    「クロエ〜聞こえるかい?」

    ピンと張られた糸に振動が伝わり、ラスティカの声がクロエの鼓膜を震わせる。

    (少し離れた場所だけど、賢者様の言っていた通りだ)

    クロエの口角は自然と上がり、それを見るラスティカの表情もまた穏やかだ。そのままクロエは聞こえたことを知らせる為に、片手で半円を描く。それを見たラスティカが続けてカップに向かってゆっくりと口を開く。

    「クロエ。この糸電話の装飾、クロエらしいデザインでとっても素敵だね。さすが、世界一の仕立て屋さんになる僕の弟子だ。せっかくだから、このままクロエの素敵なところを話そうかな。クロエは頑張り屋さんで、しっかり者で、優しくて。僕はそんなクロエが大好きなんだ。クロエも、僕と同じ気持ちでいてくれたら嬉しいな。うーん、やっぱりこれだとちょっと距離が遠いかな。クロエの良いところは、顔を見て話さないと。もっと君の近くに行ってもいいか」
    「わーーっ!ちょっと待ってラスティカ」

    耳まで真っ赤に染めたクロエは思わずコップから耳を離す。思いの他大きな声が出たことに、自分でも驚いた。距離は離れているのに、まるでラスティカがすぐそばにいるような。甘く溶けてしまいそうな声に、更に顔の火照りは増していく。

    「……?クロエの素敵なところはもっとたくさんあるのに」
    「……あんたの声がどんどん甘くなっていくから、つい……」

    恥ずかしさと共に、クロエの顔は下へ下へと角度をつけていく。

    「クロエ」

    まるで紅茶に甘い砂糖が溶けていくような、そんなラスティカの声に、クロエが咄嗟に顔を上げる。目の前には、空のように青い瞳が視界に入る。

    「わっ! ラスティカ、ち、近いよ……」
    「可愛いクロエ、ほら、耳貸して。もっと近くで君の素敵なところを話そうか」

    思わずたじろぐクロエのことはお構いなし、と言った表情で、ラスティカはクロエを抱きしめた。そうして耳元で愛の言葉をささやくのであった。


    2.シノ

    颯爽と談話室を飛び出し、シノが向かった先はもちろん、ヒースクリフの部屋だ。

    「ヒース、入るぞ! これ見てくれ」

    ノックもしないで開いた扉が勢いよく音を立てる。きっと、時計の解体でもしていたのだろう。静けさが漂う部屋とは正反対な大きな音に、ヒースクリフはびくりと肩を震わせた。

    「ちょっとシノ!部屋入る時はノックして」
    「あ、悪い。それよりもこれ見てくれ! 賢者から『糸電話』ってやつ貰ったんだ」

    ヒースクリフの顔には苛立ちの色が浮かんでいるが、その表情すら綺麗で、美しくて、思わず見惚れてしまう。シノの手の中には白いコップが二つ、糸で繋がれていた。手の中のものに気が付いたヒースクリフは、おもむろに口を開く。

    「白いコップに糸がついてる……これ、どうやって使うやつなの?」
    「オレとヒースでコップを持って、片方が耳に、片方が口に当てて喋るらしい」
    「こういうこと?」
    「そうだ。糸を張らないと声は聞こえないらしい」

    お互いにコップを手に持ち、ピンと糸を張る。
    ヒースクリフが耳元、シノは口元へとコップを運ぶ。

    「ヒース! 聞こえるか!」

    シノは鼓膜が破れてしまうくらいの大音量で、ヒースクリフの耳元へと呼びかけた。どれくらいの声量が正解なのか、シノにはまるで分からなかった。

    「ば……か、シノ! そんなに大きな声を出さなくても聞こえるよ」
    「悪い。もう少し小さい方がいいのか?」

    少し小さくなったシノの声が、糸を伝って音になっていく。先の談話室での出来事や昨日の授業での活躍。そんなささいなことを糸電話越しに話していく。話のキリがついた時、ヒースクリフがゆっくりと耳からコップを外す。そして、ぼそりと何かを呟いた。

    「これもいいけど、やっぱりシノの目を見て話したいな……」

    そんな、ほんのささいな一言を、シノは聞き逃さなかった。

    「ヒース!!!」
    「わっ、シノ!?」

    シノは糸電話を放り投げ、ヒースクリフの元へと一直線に向かう。ヒースクリフはごめん忘れて、と両手で耳まで真っ赤になった顔を覆い、シノはそんなヒースクリフを見つめていた。分かりやすく表情に出るところが本当に可愛いな、なんて思いながら。指の隙間から除くヒースクリフの蒼い瞳と、燃えるように赤みを帯びた頬のコントラストに、思わず目が眩みそうになる。

    「ヒース、顔が真っ赤だぞ。可愛いな」
    「……そういうシノこそ、顔……ものすごい赤くなってる……よ?」

    シノはヒースクリフの言葉で自身の頬に手を添える。手のひらに熱が移ったことで自覚が増し、更に頬の赤みは強くなる。思っていた以上に距離が近い。あと数センチで唇が触れてしまいそうな、そんな距離感に心臓の音がうるさくこだまする。

    「シノの方が可愛いよ」

    言葉と同時に、シノの唇には柔らかい感触が伝う。一瞬何が起きたのか分からなかったが、ヒースに口付けをされていることに気が付くと、頬の温度は意識せずとも急上昇してしまう。シノはまるで茹蛸のように真っ赤になった顔で口を開閉している。そんなシノの姿に、「シノはやっぱり可愛い」という、熱を帯びたヒースの声だけが、部屋へと溶けていった。


    3.ルチル

    談話室を後にしたルチルは、中庭の花壇まで足を運ぶ。何かを探すようにして、萌黄色の瞳はせわしなく左右に動いている。そうしてルチルは花壇の前でピタリと足を止めた。

    (あれ?ここにもいないや)

    花壇には人影ひとつなく、色とりどりの花が咲き乱れているばかり。

    「うーん、入れ違いになっちゃったかな……」

    心の中のひとりごとがおもむろに口から飛び出し、自分でも驚いてしまう。他に思い当たるところを頭の中で考えていると、突然けたたましい爆発音がなだれこんでくる。音のする方向へ目を向けると、どうやら魔法舎内から聞こえたもののようだ。爆発音の発端を心配すると共に、ルチルの頭の中では一人の魔法使いが浮かんでいた。

    (もしかして、またオズ様と喧嘩しているのかな……)

    ルチルは不安が募る心を落ち着かせ、魔法舎へと目を向ける。その後、二度目の爆発音が聞こえてくることはなかったが、意識せずとも表情には憂色が浮かんでしまう。そうして振り出しに戻ってしまった探し人と、音の発端を見つける為、ルチルはもう一度、魔法舎の中へと戻るのであった。

    ***

    大きな音とは裏腹に、魔法舎内はいつもと変わらない様子に見えた。

    (あの大きな音は気のせいだったのかな?)

    繋がらないパズルのような出来事に、ルチルは思わず頭を捻りながら歩みを進めていく。そうして気が付くと、ルチルはミスラの部屋の前へと辿り着いていた。

    「ミスラさん、いませんか?」

    ノックの音と共に、ルチルの声が廊下へと響く。案の定、中から返事は聞こえてこない。

    (ミスラさん、無事でいればいいんだけど……)

    すっかり本来の目的を忘れ、ミスラの心配ばかりをするルチルの前に、隣の部屋のドアが勢いよく開く。開いた先へ目を向けると、そこには所々黒く焦げたブラッドリーが、苛立ちを抱えたまま頭を掻いている。

    「……ミスラの野郎、ぶっ殺してやる」
    「……え?ブラッドリーさん、どうしたんですか……?」
    「あ?てめえには関係ねえよ」
    「…………」

    苛立ちが前面に立ち込める姿に、ルチルは思わず言葉に詰まる。そうしてブラッドリーはその場に留まることもなく、大股開きで何処かへと行ってしまった。

    (ブラッドリーさん、大丈夫かな?それに何で私の部屋から……?)

    思うことはうんとあるが、ルチルは確認も兼ねて自身の部屋のドアノブへと手をかける。開いた先の光景に、驚きのあまり目が丸くなる。

    ——壁に、大きな穴が空いているのだ。

    その大きな穴はミスラの部屋と繋がり、そこからベッドへ寝転ぶミスラの姿が見えた。

    「ミスラさん!?!?」
    「……ルチル?」

    ルチルが思わず声をかけると、ミスラはゆっくりとベッドから起き上がる。

    「も〜、探してたんですよ、お部屋にいるんだったらお返事して下さい」
    「はぁ……寝てたんですよ」

    頭にはアイマスク、手には三日月の抱き枕を抱え、ミスラは大きく空いた壁の穴からルチルの部屋を覗き込む。

    「さっき、中庭で大きな音が聞こえて、私の部屋から黒焦げになったブラッドリーさんが出てきたんです。その、何か……ありましたか?」

    パッと見たところ、ミスラに外傷は見られない。それでもルチルは心配の色が浮かぶ瞳を、一直線へミスラへと向ける。

    「いえ、別に何も。俺が寝ようとしているところに、ブラッドリーが勝手に勝負を仕掛けてきたので、返り討ちにしただけです」
    「返り討ちにしちゃってるじゃないですか……」

    ルチルは斜めに眉を下げて当惑する。ブラッドリーの様子を心配しながらも、崩壊したのが壁だけで済んでよかったな、とひとまず胸を撫で下ろした。そのまま真下を向くと、ルチルは手にしていた糸電話が目に入り、本来の目的を思い出す。

    「お二人とも無事でよかったです。壁に穴空いちゃいましたけど……」
    「はぁ……いいんじゃないですか、そのままで。ブラッドリーに邪魔されてムラムラしてるんで、今からあなたの部屋に行きますね」
    「え? ちょっと待ってミスラさん!」

    唐突すぎる訪問に、ルチルは思わず大きな声が出る。穴が空いた壁だって、正直そのままにされると困ってしまう。

    「何ですか、セックスしないんですか?」
    「うーん、まだお日様も出ていますし……それは夜のお楽しみにしましょう!」
    「はぁ……」

    ミスラはまるで餌をお預けをされた猫のように、面白くない表情を浮かべている。続けてルチルは待ちに待った糸電話の話を切り出した。

    「ミスラさん、これ見て下さい! 『糸電話』っていう賢者様の世界の遊びなんです。一緒にやりませんか?」
    「何です? それ、食えるんですか?」
    「……ミスラさん、食べ物じゃないですよ、片方が口に、片方が耳に当てて糸を通して離れたところでも声が聞こえる遊びだそうです」

    ミスラは面倒そうに瞳を動かしたが、ルチルの期待に胸を膨らませた笑顔に観念したのか、壁の穴を通してコップを受け取った。ルチルが口元に、ミスラが耳へとコップを当てていく。ピンと糸が張ったタイミングで、ルチルの言葉が糸を伝って音になる。

    「ミスラさーん、聞こえますか?ちょうど壁に穴が開いてるので、こうやってそれぞれのお部屋にいてもお話ししやすいですね! 今日は私、ずっとミスラさんのこと探してたんですよ。お話ししたいことがあったんですけど、途中で談話室に寄って、賢者様に糸電話を頂いたんです。それでミスラさんと一緒にやろうって思ったのに、中庭の花壇にもいないし、魔法舎から大きな音が聞こえるしでびっくりしちゃいました。それに」

    話の途中で、張られていた糸がみるみるうちに弛んでいく。ミスラの瞳は縫い付けられたかのようにルチルを見つめ、すでにコップから手は離されていた。

    「……飽きました」
    「も〜ミスラさんったら早いですよ。じゃあ、次はミスラさんがお話しする番です」
    「いや、俺はこっちがいいので」

    そう言って、自らが空けた大きな穴からルチルの部屋へと、長い足が部屋をまたいでいく。
    あっという間にミスラの熱の篭った瞳は、ルチルの目と鼻の先につく。

    「ミ、ミスラさん?」
    「こんなものより、俺はあなたがいいです」

    糸電話はことりと床に置かれ、そのまま吸い寄せられるかのように唇が重なる。

    「夜まで待てないので、このまま抱きます」

    ミスラに抱き抱えられ、ルチルはそのままベッドへと押し倒される。ルチルの顔の温度は急上昇し、胸は激しく波打っている。ルチルは危うくこのまま流されてしまいそうになるが、まだ壁に穴が空いたままの状態になっていることを思い出す。

    (ここで言わないと、きっとミスラさんは壁を直さないだろうな)

    感情が天秤にかけられ、ぐらぐらと揺れながらもなんとか善意に天秤が傾いた。

    「ミスラさん! ちゃんと壁修理しないとえっちしませんからね!!!」

    耳まで真っ赤に沸騰した顔で、ルチルの一際大きな声が一階へと響き渡った。
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