無題(階段) 階段を降りきれずに腰掛けて息を整えていると、エーベンホルツがバインダーを数冊抱えて登ってくるところに出会った。
「……貴殿の体の弱さは聞き及んでいるが、まさかそれほどまでに軟弱とは」
「ちが、違うよ。今日はちょっと調子が悪いだけだ」
何せ足が少し悪いので、段を降りるのでもよろよろとしかおりられない。それならエレベーターを使えばいいのだけれど定期的なリハビリをするのも課せられているのだ。
「それならせめて誰かオペレーターを供につけるなりしては? 万が一があっては困るだろう」
「普段から私の周りにそんなに人を割くわけにいかないよ。ロドスはただでさえ人材不足なんだから」
エーベンホルツはその言葉に少し考えこむように顎に指先を当てていたが、数段降りて手を伸ばした。
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