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    totorotomoro

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    totorotomoro

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    階段で話す二人というのをお題で書いてみた話。
    どうにもエベは…こう…あまり…欲というものを出しにくい。

    #鍵博
    keybo
    #黑键博
    blackKeybo
    #エベ博
    dr.Ebehler.

    無題(階段) 階段を降りきれずに腰掛けて息を整えていると、エーベンホルツがバインダーを数冊抱えて登ってくるところに出会った。
    「……貴殿の体の弱さは聞き及んでいるが、まさかそれほどまでに軟弱とは」
    「ちが、違うよ。今日はちょっと調子が悪いだけだ」
     何せ足が少し悪いので、段を降りるのでもよろよろとしかおりられない。それならエレベーターを使えばいいのだけれど定期的なリハビリをするのも課せられているのだ。
    「それならせめて誰かオペレーターを供につけるなりしては? 万が一があっては困るだろう」
    「普段から私の周りにそんなに人を割くわけにいかないよ。ロドスはただでさえ人材不足なんだから」
     エーベンホルツはその言葉に少し考えこむように顎に指先を当てていたが、数段降りて手を伸ばした。
    「そらドクター。せめて下のフロアまで頑張ってからエレベーターを使うといい。そこまでは私がエスコートしよう」
    「……抱えてくれるわけではなく?」
     しゃがんだまま、首を伸ばしてエーベンホルツを見下ろすと彼は嫌そうに首を傾げた。
    「嵐のような爆風を起こして吹き飛ばされ、下にいる私が受け止めるのをお望みか?」
    「潰れそう。あとみんなに怒られそう」
    「わかったなら自力で頑張れ」
     伸ばした手をつかみとられて引き寄せられる。
     力をこめれば安定して支えてくれて、崩れそうになるとその体を押し戻される。
    「……自力で頑張れと言ったと思うのだが」
     疲れ切った体はエーベンホルツにもたれかかりたくて、体重をそちらに預けようとする。
    「少しだけ、少しだけ支えて、お願い」
    「願いの範疇を超えていると思うが、おい、本当に体重を乗せようとするな、危ない」
     上品な彼は舌打ちをこらえて、バインダーを押し付けると私を抱えあげた。ただし、俵担ぎで。
    「ええっ、すごいけど、ちょっと、これはないよ」
    「足元が見えないと落とす。角に触れても落とすぞ」
    「ハイ……」
     普段楽器を操るくらいの彼に大丈夫かとちらりと掠めたが、彼は危なげなく階段を降りきり、さっさと通路に下ろした。
    「力あるんだね」
    「貴殿が軽すぎるのだと思う。つかんでみたら骨じゃないか」
    「これでもまだマシになったほうなんだよ」
     そうエーベンホルツに言い返したが彼はバインダーを受け取ると降りた階段をまた登っていく。
    「ありがとう、エーベンホルツ」
    「……どういたしまして、ドクター」
     すいすいと進んでいくエーベンホルツに手を振って、私はまた見えない位置で腰掛けて休憩をとった。

    ◇◆◇

    「───何を考えている?」
     白衣を目の前でゆったりと脱ぎシャツを脱いでいる最中に思い出した言葉に瞬きをして目の前の彼をみた。
    「もうずいぶんと前だけど、階段で助けてもらった時のことを思い出してた」
    「……ああ、貴殿が階段で行き倒れそうになっていた時のか」
     スラックスから足を抜き、横倒しになる。もつれたスラックスをやれやれと引き抜き、足を追ってかぶさってくるエーベンホルツの腕に触れると細身ながらも色白い肌にはっきりとわかるしなやかな筋肉が手に触れた。外勤で定期的に外へと赴き、日々他のオペレーターとわずかずつでも鍛えている証なのだろう。たまにひどい頭痛に苛まれているが、それ以外は安定しているという報告が閲覧権限のある書類で見たことがあった。
     エーベンホルツが私の肋骨のあたりに触れる。
     脂肪があまりつかない、筋肉もそれほどではない薄っぺらな腹を撫で下ろし、バスタオルを放ってよこす。
    「着替えの途中で全裸になる必要はないだろう」
    「え、今そういう空気じゃないの?」
     穏やかで清潔な空気をまとうエーベンホルツはシャツとスラックスというラフな格好にはなっているが、服は着ている。
     対して私は兆してこそいないが、全身で彼を受け止めようと大の字になっていたところだ。
    「空気とはなんだ。部屋に引き摺り込んできたのは貴殿だが、応える理由はないだろう」
     備え付けのベッドが二人分の重みでギシッと音を立てる。バスタオルを腰にかけて起き上がると、エーベンホルツはじろじろと腹の辺りを見下ろしてくる。
    「塔にいて食事をしていた私の方がまだマシな健康体だと思うが、貴殿はどうやって生きてるんだ」
    「人は水分と各種ビタミン剤で生きられるよ」
    「……製薬会社のトップはみんなそんななのか?」
    「どうだろう。アーミヤにはきちんと食事をとってもらうように努めている……っ、へくちっ」
     くしゃみをしたのをエーベンホルツは呆れたように見下ろすと、脱いだばかりの白衣を被せてくる。そのままぎゅっと服越しに抱きしめられて暖かみを共有し合った。
    「……しないの?」
    「貴殿がとりあえずもう少し丈夫になるまでは控えることにした方がいいと理解した」
     ため息をつくエーベンホルツの腕の中で、頬をぺったりとつけながら何それ、と笑った。誇張でもなんでもなくて、その日からぱったりと手を出さなくなったエーベンホルツに跨って愛を希うのはまた別の話。

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    totorotomoro

    DOODLEたらいにお湯張ってドクターに洗われるエベが見てみたかったのに、なんか……あれっ?なんか、まあこれはこれで私好きなんだけど、たまに書く真っ黒ドクターがうっすら出てしまった。
    どうしても書いてみたくて出力するうちに、オチがなんかこれでいいのかな感。
    黑键博と言い張ります。
    バスタイム「お互い傷を持つ身だろう。違うかい?」
     ドクターの言葉に、エーベンホルツは聞こえないように紳士的でない舌打ちをした。

    ■□■

     ハイビスカスが困ったようにエーベンホルツが風呂に入らないと伝えに来た。
    「はい?」
    「ですから、エーベンホルツさんが───」
     書類の山に囲まれてペンを動かしていたドクターは手を止め、ハイビスカスの言葉を手を挙げて制した。
    「すまない、言葉は聞こえていた。……それを私に伝えに来る意味を聞いてもいいだろうか」
    「エーベンホルツさんはドクターの言うことなら聞いてくれると思ったので」
     ハイビスカスは柔らかく優しい微笑みを向けた。慈愛あふれる笑顔だ。ドクターもつられて微笑む。
    「それはどうかは知らないけれど、注意はしよう。曲がりなりにも製薬会社だからね。彼は外交を対応してもらうオペレーターだったはずだから、清潔にすることも大事なことだ」
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