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    totorotomoro

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    POIPOI 39

    totorotomoro

    ☆quiet follow

    鍵博。

    #黑键博
    blackKeybo
    #鍵博
    keybo
    #エベ博
    dr.Ebehler.

    それはおだやかな 朝はドクターよりもエーベンホルツのほうが起きるのが早い。共に横たわるドクターを跨いで床に降り、昨夜の情事で散らかした服を集めて洗濯カゴに放り込む。
     冷たい水で顔を濯ぎ、着替えを済ませてドクターの服を取り出して寝室の机に置く。
     そしてドクターから教わったようにパンをトースターに放り込み、電子ケトルで湯を沸かすスイッチをオンにしてドクターを揺り起こした。ふかふかとした羽布団から顔がのぞき、エーベンホルツはその頬にキスをした。
    「起きろドクター。朝食の時間だ」
    「───いやだ、ねむい」
     おはようと唇にキスを返すくせにそのまま布団に沈もうとするドクターをエーベンホルツは布団を剥ぎ取ることで強制的に目を覚まさせる。
    「っ〜、鬼、悪魔ァ……」
    「なんとでも。そら、さっさと起きろ。今日のトーストはいつもよりも焼き加減に自信がある。冷めてしまうぞ」
    「それ昨日も言ってたと思う」
     半身を起こし、盛大にあくびをするドクターの体には引き攣ったような火傷がある。本人は気にした様子もなく肩を掻き、裸身を晒したままで「服は?」とエーベンホルツに問いかける。
    「いつも通り机に。コーヒーに砂糖は入れるか?」
    「今日はやめとく。ジャムをもらったんだ。冷蔵庫の三段目にあるから出しておいて」
    「わかった」
     くるりときびすを返すエーベンホルツを見送り、ドクターはのろのろとした手つきで服を取り出して下から服を身につけていく。なんとかシャツを全て留め終わった辺りでエーベンホルツが再び顔を出した。
    「これか?」
    「それ」
     赤いルビーようなキラキラした果物が入った瓶をかかげ、ドクターが頷いた。頭が引っ込んだのを追いかけるようにドクターも立ちあがろうとして。腰がミシッと昨日の激しさを思い出させるような軋みを上げる。
     そろりそろりと壁伝いに歩くと、エーベンホルツがそれを見て眉根を寄せた。
    「そのような姿勢で歩けるのか?」
    「誰のせいだと」
     伸ばされた手を取り、椅子へ導かれる時に恨み節を呟けば、「そうだな、私のせいだな」とあっけらかんとエーベンホルツは答えた。
     一度開けたらしい蓋を閉めた瓶を手渡され、脇にスプーンを置いてエーベンホルツは向かいに腰掛ける。
     ドクターの指は昔の怪我が元で動きがやや遅い。ボタンがけや瓶の蓋を開けるような動きはリハビリによいということで、ケルシーから積極的に薦められていて、エーベンホルツはケルシーから直接その言葉を賜ったのだとか。
    「なぜ私に直接言ったのかはわからないが」
     エーベンホルツは先に塗ったバターとジャムが乗ったパンをさくりとかじる。彼の言う通り、黄金色でとてもよく焼けている。ドクターはぺとぺととパンにジャムを塗りつけてエーベンホルツを見た。
    「ほんとにわからない?」
    「道化を演じているとでも?」
     肩をすくめてうそぶくエーベンホルツに、ドクターもパンを口にしながら「そういうとこだよ」と呟いた。
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    totorotomoro

    DOODLEたらいにお湯張ってドクターに洗われるエベが見てみたかったのに、なんか……あれっ?なんか、まあこれはこれで私好きなんだけど、たまに書く真っ黒ドクターがうっすら出てしまった。
    どうしても書いてみたくて出力するうちに、オチがなんかこれでいいのかな感。
    黑键博と言い張ります。
    バスタイム「お互い傷を持つ身だろう。違うかい?」
     ドクターの言葉に、エーベンホルツは聞こえないように紳士的でない舌打ちをした。

    ■□■

     ハイビスカスが困ったようにエーベンホルツが風呂に入らないと伝えに来た。
    「はい?」
    「ですから、エーベンホルツさんが───」
     書類の山に囲まれてペンを動かしていたドクターは手を止め、ハイビスカスの言葉を手を挙げて制した。
    「すまない、言葉は聞こえていた。……それを私に伝えに来る意味を聞いてもいいだろうか」
    「エーベンホルツさんはドクターの言うことなら聞いてくれると思ったので」
     ハイビスカスは柔らかく優しい微笑みを向けた。慈愛あふれる笑顔だ。ドクターもつられて微笑む。
    「それはどうかは知らないけれど、注意はしよう。曲がりなりにも製薬会社だからね。彼は外交を対応してもらうオペレーターだったはずだから、清潔にすることも大事なことだ」
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    はるち

    DONEやり方は三つしかない。正しいやり方。間違ったやり方。俺のやり方だ。――引用 カジノ
    健康で文化的な最低限度の退廃「抱いてくれないか」

     その人が、ソファに座る自分の膝の上に跨る。スプリングの軋む音は、二人きりの静寂の中では雷鳴のように鮮烈だった。こうしていると、この人の方が自分よりも視線が上にある。天井からぶら下がる白熱灯のせいで逆光となり、この人の表情を見失う。
     どうしてか、この世界の生物は良いものだけを、光の差す方だけを目指して生きていくことができない。酒がもたらす酩酊で理性を溶かし、紫煙が血液に乗せる毒で緩やかに自死するように、自らを損なうことには危険な快楽があった。例えばこの人が、自らの身体をただの物質として、肉の塊として扱われることを望むように。この人が自分に初めてそれを求めた日のことを、今でも良く覚えている。酔いの覚めぬドクターを、自室まで送り届けた時のこと。あの時に、ベッドに仰向けに横たわり、そうすることを自分に求めたのだ。まるで奈落の底から手招くようだった。嫌だと言って手を離せば、その人は冗談だと言って、きっともう自分の手を引くことはないのだろう。そうして奈落の底へと引き込まれた人間が自分の他にどれほどいるのかはわからない。知りたくもない。自分がロドスにいない間に、この人がどうしているのかも。
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    はるち

    DONEリー先生の尾ひれを見るたびにドキドキするドクターのお話。
    その鮮やかさを覚えている 覚えているのは、黒と金。
     石棺で眠りについていた二年。あの漂白の期間に、自分はかつての記憶のほとんどを失った。それを取り戻すために、主治医であるケルシーとは幾度となくカウンセリングを行ったが、その殆どは徒労に終わった。医学的には、記憶喪失になってから一年が経過すると、記憶が戻るのはほぼ絶望的とされる。だからこれで一区切りをする、と。ケルシーは診察の前にそう前置きをし、そうして大した進展もなく、最後の診察も終わった。言ってみればこれは届かないものがあることを確認するための手続きだ。現実を諦めて受け入れるための。失われたものはもう二度と戻って来ないのだ、ということを確認するための。
     ドクターは書棚からファイルを取り出した。ケルシーとの診察の中で、自分に渡された資料の一部だ。何でもいいから思いつくものを、思い出せるものを書いてみろと言われて、白紙の上に書いた内面の投影。他者からすれば意味不明の落書きにしか見えないだろう。しかしケルシーにとっては現在の精神状態を推量するための材料であり、ドクターにとっては現在の自分を構成する断片だ。
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