Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    totorotomoro

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💴 🍵 🐉 🍙
    POIPOI 39

    totorotomoro

    ☆quiet follow

    #黑键博
    blackKeybo
    #鍵博
    keybo
    #エベ博
    dr.Ebehler.

    目覚ましには向かない「───い、───おい、ドクター」
     遠くから聞こえる少し苛立たしげな、それでいてとろけるような声、ふわふわと甘くて霞がかるわたあめのようなしゅわりと溶ける気持ちよさ。しかし強めに揺すぶられているのに不快を感じて目を開けば、眩しさに目を細める。
    「起きたか、いや起きろ」
    「……んぅ、ねむい」
     頭を振り、あのわたあめのような気持ちよさを思い出そうとするけれど、それは溶けてなくなってしまったようで。掠める不愉快感に包まれていた人物の服で顔をこする。
    「ひどい、いいここちだったのに」
     そう呟けば強めのため息があって、頬にかかった髪が揺れた。フェイスシールドを外していたらしい。顔がこすれたのだからフェイスシールドは外しているはずなのだが、私はそれをいつ外したのかも思い出せない。
    「なら私を目覚ましがわりにするな。この時間に私に起こせと頼んだのは貴殿だろう」
    「ねむい、やだ、ねる」
     ぎゅっと腕を伸ばして揺すぶる腕を押さえて体を再びベッドに沈める。相手は私を起こそうとつかみかけて私の拒絶にとうとう根負けしたように力を緩めた。
    「私は起こした。貴殿はそれを拒絶した。───あとで文句を言うなよ? 絶対に」
    「……んー…」
     私は腕の中の人にすがりついて再び眠りの世界へと誘われた。

    ■□■

    「なんで起こしてくれなかったのさ! 会議遅刻しちゃうよ!」
     慌てて支度をして走り回る私をエーベンホルツはコーヒーを飲みながら無視している。苦い味の香草を間違えて噛んだ時のような眉根のより方に、私がそういえばと思い出した時にはエーベンホルツは一人だけ焼いたトーストにバターとジャムを塗ってかじりつこうとしていた。
     唇にジャムがついて、ぺろりとそれをなめとる唇。
     私はそれに近寄り、ちゅうと吸い付いた。甘いジャムを味わうように口の端をぺろりと舐める。
    「……貴殿の分はないぞ」
    「食べてる時間ない。……あの、ごめんね?」
     やっとエーベンホルツはこちらを見て、手を振ってしっしっと私を払う。
    「わかったからもう行け。私が貴殿をベッドに縫い止めないうちに」
    「ありがとう、じゃあまた夜に」
     私は全力で足を交互に動かして慌ただしく部屋を出ていった。


    ■□■


     エーベンホルツは二人分いれたコーヒーを見て、はあっとため息をついて自分のカップにおかわりを追加する。ドクターの部屋の隅に転がされた時計を見て、それを棚に戻して視界から消した。
     目覚ましの無粋な音で起こされるのはごめん被るし、何よりドクターを起こすのは共寝しているものの特権だとエーベンホルツは思っている。
     出て行ったドアの方向を見て、弓形になる唇と知らず知らずのうちに溢れた鼻歌のフレーズ。エーベンホルツはもう一度繰り返し、チェロで弾いてみるかと食卓を片付けはじめた。

    (おしまい)
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    totorotomoro

    DOODLEたらいにお湯張ってドクターに洗われるエベが見てみたかったのに、なんか……あれっ?なんか、まあこれはこれで私好きなんだけど、たまに書く真っ黒ドクターがうっすら出てしまった。
    どうしても書いてみたくて出力するうちに、オチがなんかこれでいいのかな感。
    黑键博と言い張ります。
    バスタイム「お互い傷を持つ身だろう。違うかい?」
     ドクターの言葉に、エーベンホルツは聞こえないように紳士的でない舌打ちをした。

    ■□■

     ハイビスカスが困ったようにエーベンホルツが風呂に入らないと伝えに来た。
    「はい?」
    「ですから、エーベンホルツさんが───」
     書類の山に囲まれてペンを動かしていたドクターは手を止め、ハイビスカスの言葉を手を挙げて制した。
    「すまない、言葉は聞こえていた。……それを私に伝えに来る意味を聞いてもいいだろうか」
    「エーベンホルツさんはドクターの言うことなら聞いてくれると思ったので」
     ハイビスカスは柔らかく優しい微笑みを向けた。慈愛あふれる笑顔だ。ドクターもつられて微笑む。
    「それはどうかは知らないけれど、注意はしよう。曲がりなりにも製薬会社だからね。彼は外交を対応してもらうオペレーターだったはずだから、清潔にすることも大事なことだ」
    3438

    落書き

    DOODLE黑键博♂
    初歩的なコミュニケーション エーベンホルツの背は針金を通されたかのように座面に対して垂直に伸びていた。唇は固く引き結ばれ、よせばいいのに瞼を閉じるから、耳の裏を擽る癖毛の柔らかな感触と、それを梳く指の温度を殊更に意識する羽目になる。肩には必要以上に力が入り、物音一つにさえ神経が過敏になり、やがて疲労から呼吸すら弱々しくなっていくのだろうと思われた。端的に言って緊張している。それはもう、筆舌に尽くしがたいほどに。
     背凭れに自重を預ければ多少は楽になるのだろうが、それはただの板切れと化して用を成さぬ。「取って食いやしないよ」二本の角に絡まる髪を解いてやると、いっそ可哀想なぐらいに青年の煩悶が伝わってくるので、ドクターは哀れに思って一言断りを入れた。「嫌なら言ってくれ」強要するつもりは端から無く、用意した油の封を切らないままにこの青年に押し付けてしまうつもりだった。けれどもそうはならないことを薄々予感している。彼はただ、緊張しているだけだ。恐怖から身体を引き攣らせているわけではない。髪を梳くことを止めれば、事が終わるまで閉じたままかと思われた唇が僅かに開き、空気を吸い込んだ。
    4111

    recommended works