Down trip, showdown「紅茶はいかがですか?それとも腹が減りましたか、クッキーでも?」
「……いや、やめておくよ。せっかくの空腹を台無しにしたくない」
そりゃ残念、とテーブルを挟んで自分の正面に座る男は肩をすくめた。どうにも芝居がかった動作だ。嘘の気配しかしない。あれを芝居だとするのなら、この状況も悪夢めいている、と霞みがかった意識の中で思考する。
前後の文脈が抜け落ちたように記憶が曖昧だ。ロドスで仕事をしていた。それは覚えている。近日中に艦内で開かれる、witch feastに向けた演劇、そのリハーサルに呼ばれていたことを。おれも出るから来てくださいよ、と彼に言われていたことも。だから仕事を途中で切り上げて、呼ばれた場所へと向かった、はずだ。少なくとも、日差しもうららかな屋外で茶をしばくために執務室を出た訳ではない。
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