恋の予感と贈り物すっかり季節は冬。
朝からとても冷え込んでいる。
「あ~、さっむいな~」
小さく呟いて手を擦り合わせてから、浴場の戸を引いた。
清掃前なので、昨夜の残り湯があるはずだ。
夜警の人間が仕事終わりに使っているだろうから、きっとまだ温かいに違いない。
冷たい水で顔を洗うよりましだろうと、ちょっといただきにきたわけだ。
「あ!門倉さん!おはようご…」
開けた戸を、素早く戻す。
しかし無情にも戸はすぐに開いて、中にいた男に話しかけられた。
「おはようございます!門倉さん!」
「お…おはよう、宇佐美」
早朝から元気のいい挨拶だこと。
「も~、なに閉めてるんですか。お湯貰いにきたんでしょ?」
「そうだけどさぁ…」
なんで先回りされてるんだろう…そう思いつつも、あまり深く考えるのはやめた。
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