QTそれについて気になりだしたのは、実はつい最近のことである。
前々からそれが紛れもなくそいつの持ち物であることはよくよく心得ていたつもりだったが、思いがけずごく間近で目の当たりにしてしまったことでたちまちに興味が出てしまった。そもそもこんな堅物のお手本みたいな奴があんなものを持っている方が悪いというのは勝手だろうが、それにしたってどうにもちぐはぐで一度気になってしまうとそればかり目についてしまう。
なので、そいつがドンシクなんぞの髪を触ってみたいなどと言い出した時、これはチャンスだと思ってしまった。
内心ではしめしめとほくそ笑みつつ、完璧にとぼけた顔をしてみせながらもったいぶって、なんで?と返した。二人掛けのソファの隣に並んでテレビを見ていたそいつは、まめまめしく画面を消してから改めてドンシクに向き直った。こいつは本当にいつでも真面目そのものの顔をしている。
3857