熾火それを聞いた時はじめに湧き上がったのは、「お前に何がわかる」という怒りだった。
人生の大半を共に過ごしてきたし、家族のように肩を寄せ合い、友人として時にはぶつかり合って歩いてきた。なんでも話せるから言わないでいることもあるし、他の誰にも言えないことをお互いにだけは笑って話せることもある。なんでも知っているなどとは思わないが、何を知らないかはわかっている。それで良いと思っていた。
ジファは、携帯をデスクに放り投げた。何人かの部下の肩が跳ねたのが見えた。
「……どうかしたんですか」
「手が滑っただけ、気にしないで」
優秀な部下たちは、それでもうすべてを察してパーテーションの向こうに縮こまると、二度とこちらを見なかった。萎縮させている自覚はあるが、頭の中に発生した小さな竜巻が思考を巻き上げて蹴散らしていく。
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