タビコに髪を切ってくれと頼まれた。いつもは自分で切っているが今はこの通り不自由だからと、タビコは数日前に折った右腕を三角巾ごと掲げてみせる。
「いつもは自分で切っている??」
「そうだ。意外と簡単だぞ」
新聞紙を床に広げてその上に食卓の椅子を持ち出したタビコはなんでもないように言う。
「側面は耳がでる長さで、前髪と襟足は眉と項が隠れる程度。あとは任す」
「任すって…髪は女の命だろう」
はぁ?と顔だけで言ってくるタビコに黙らせられる。
「髪で仕事をしている訳でもなし、邪魔にならなければなんでもいい」
穴の空いたゴミ袋をがさがさと被ったタビコは玄関から姿見を持ってきて椅子の前に置いた。
「怪我が治ってから自分で切るなり、理髪してもらうなりできんのか?」
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