天高く馬肥ゆる秋。
「空は澄み渡り高く見え、馬の食欲も増してたくましく肥える」という意味で、現代では爽やかな秋を表現する時候の挨拶として使われる言葉である。
「元は『秋になると、冬の備えの為に夷狄が騎兵隊を組んで略奪に来るので警戒せよ』の意味だったな」
見晴らしの良い丘に立ち、誰に聞かせるともなく独りごつ。
まさに秋を感じさせるうろこ雲を見上げ、本日の相棒である花柑子の首筋を撫で付けた。相棒は気持ち良さそうに、長く毛並みの良い尻尾をゆるく揺らし、よく鍛え上げられた体躯で水心子へと擦り寄る。
ここまでの信頼関係を築くまで、すったもんだの大騒動があったのだが、ここで話すには長くなりすぎるので残念ながら割愛させていただこう。
1524